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米東部標準時2014年12月5日7時5分(日本時間2014年12月5日21時5分)、米フロリダ州のケイプ・カナヴェラル空軍ステーションから、デルタIVヘヴィ・ロケットに搭載されたオライオン宇宙船の無人試験機(EFT-1)が打ち上げられた。オライオンEFT-1は約4時間半にわたって宇宙を飛行し、太平洋上に帰還した。

今回は、オライオン宇宙船の概要から、今回の初飛行ミッションの顛末、そして将来計画について、3回に分けて紹介したい。

○NASAの新宇宙船「オライオン」

オライオンは、NASAとロッキード・マーティン社で開発が進められている宇宙船だ。いわゆる「NASAの宇宙船」としては、スペースシャトルの後継機に当たる。ちなみに日本ではオリオンという表記が定着してしまっているが、NASAでは英語読みでオライオン(もしくはオライアン)と呼んでおり、オリオンというのは間違いである。したがって本稿ではオライオンと表記する。

スペースシャトルの後継機とはいえ、スペースシャトルとオライオンは見た目からして大きく異なる。大きさも違えば、オライオンには翼もなく、退化してしまったようにも見える。

しかし、地球低軌道までにしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、オライオンはより遠くの星へ飛べるように造られている。それも、アポロが行った月よりもさらに遠く、火星や小惑星への飛行を目指している。

外見はアポロ宇宙船に似ているが、一回りほど大きく、宇宙飛行士が乗るクルー・モジュールの最大直径は5m、高さは3.3mほどある。最大で4人までの宇宙飛行士が乗ることができる。オライオン単体での宇宙空間における運用可能期間は21日間とされる。もちろん宇宙ステーションなどにドッキングすれば、より長く運用できる。

オライオンはクルー・モジュールとサーヴィス・モジュールの、大きく2つの部分から構成されている。クルー・モジュールには宇宙飛行士が乗り、軌道上での生活や、大気圏への再突入、地上への帰還を担う。もう一方のサーヴィス・モジュールは、軌道を変えるための小型のロケット・エンジンや、電力を発生させる太陽電池パドル、バッテリーなどが搭載されている。サーヴィス・モジュールの開発は欧州宇宙機関(ESA)が担当しており、国際宇宙ステーション(ISS)への補給を担っていたATVの技術が活かされる。

オライオンの開発にはスペースシャトルで培われた技術も使われており、例えばクルー・モジュールとサーヴィス・モジュールは、スペースシャトルの外部燃料タンクなどで使われていたのと同じ、アルミニウム・リチウムの合金から造られている。またクルー・モジュールのうち、大気圏再突入時にあまり高温にならない部分は、スペースシャトルの貨物室のドア部分に使われていたノーメックス・フェルトを使った耐熱材でコーティングされている。帰還時に使用されるパラシュートは、アポロ宇宙船やスペースシャトルの固体ロケット・ブースターで使われていたパラシュートに基にしたものが用いられている。

また耐熱シールドを交換することで、10回程度の再使用が可能とされている。

○コンステレーション計画から唯一生き残ったオライオン

オライオンの開発が始まったのは今から10年前の2004年のことだ。この年の1月14日、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は「宇宙探査ビジョン(Vision for Space Exploration)」と題した宇宙政策を発表する。これはスペースシャトルを2010年に引退させ、新しいロケットと宇宙船を開発し、2020年までに月面着陸を実施、続いて火星やさらにその先へと行こうという壮大なものだった。

それを受けてNASAは、それら新しいロケットや宇宙船を開発するための計画として「コンステレーション計画」を立ち上げた。新しい有人ロケットにはエァリーズI(アレスI)、貨物専用の超大型ロケットにはエァリーズV(アレスV)、そして宇宙船にはオライオン、また月着陸船にはアルテア(アルタイル)という名前が与えられ、それぞれ開発が始まった。しかし、エァリーズIとエァリーズVの開発は難航し、何度も設計変更が繰り返され、計画は遅れに遅れた。またアルテアの開発も難航し、コンステレーション計画は破綻寸前に陥る。

そして2009年に就任したバラク・オバマ大統領は、外部の有識者委員会を組織して計画の見直しを始め、ついに2010年2月1日、コンステレーション計画の中止を命じる。同時に新しい宇宙政策が発表され、エァリーズIとエァリーズVの代わりに新しいロケットの開発を行うことが決まり、また月面着陸という目標がなくなったことでアルテアに代わる月着陸船の開発もなくなった。だが、その中でオライオンのみは生き残った。

もともとオライオンは、コンステレーション計画の中でも開発は順調に進んでおり、中止させる積極的な理由はなかった。そもそもスペースシャトルを引退させる以上、新しい宇宙船は必要であった。また、オバマ大統領は国際宇宙ステーションへの物資や宇宙飛行士の輸送を、民間企業に解放する動きをより加速させる方針を示していたが、民間が開発に失敗する可能性もあったため、その保険の意味でも、NASAが宇宙船を開発し続けることに意義はあった。

オライオンはまず、「国際宇宙ステーション(ISS)からの緊急帰還用の宇宙船」という名目で生き残り、さらに後に、ISSとの往復だけではなく、月や火星、小惑星へも飛行できる多目的な宇宙船を目指して開発が継続されることになった。オライオンという愛称自体は変わっていないが、計画名はブッシュ時代のCEV(Crew Exploration Vehicle)から、オバマ時代にはMPCV(Multi-Purpose Crew Vehicle)へと変わっている。

オライオン本体の開発が進められる一方で、打ち上げ時の緊急脱出システムの開発や、パラシュートの試験、またアポロ以来となる洋上への着水に備えて、米海軍と共同で回収の訓練も行われた。

(次回の記事は12月12日に掲載予定です)

【参考】・JSC_OrionEFT-1_PressKit_accessible.pdf・_33012.pdf・・・Orion_test_sets_stage_for_ESA_service_module

(鳥嶋真也)