シアタークリエ 
ロンドン版 ショーシャンクの空に
12月11日〜29日
演出 白井晃
原作 スティーブン・キング(「刑務所のリタ・ヘイワース」)
翻訳 小川絵梨子
出演 佐々木蔵之介 國村隼 ほか

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佐々木蔵之介が主演する舞台「ロンドン版 ショーシャンクの空に」が本日12月11日から日比谷シアタークリエで上演される。
初日前日の10日、囲み取材と舞台稽古が行われた。

囲み取材は、佐々木のほか、國村隼、板尾創路、三浦涼介が登場し、ユーモアを交えつつ、作品をアピール。
その中で、あ、やっぱり、そこいきますか、という質問が登場した。
主演の佐々木蔵之介に、独身の最後の砦である四天王(竹野内豊、福山雅治、佐々木蔵之介、戸次重幸と言われているようですね)のひとりとしての思いを訊くものである。
佐々木は「男だらけの作品ばかりに出ているので・・・」と上手に交わしていたが(さすが京男?)、男ばかり総勢18人による濃密な舞台「ロンドン版 ショーシャンクの空に」では、佐々木蔵之介の結婚時期を占うことよりも断然ショッキングな場面が用意されている。

原作は、スティーブン・キングの小説「刑務所のリタ・ヘイワース」。これは、かつて、ティム・ロビンス、モーガン・フリーマンの出演で映画化され、大ヒットしたので、ストーリーを知っている人も多いだろう。
映画で言うと、佐々木はティム・ロビンス、國村がモーガン・フリーマンに当たる。

國村が「舞台を見たら、もう一度映画に戻っていただけるものができたと思います」と語る、そのストーリーはこうだ。
主人公アンディ・デュフレーン(佐々木蔵之介)は、銀行家として若くから成功を収めながらも、妻とその浮気相手であるゴルフ選手を殺した罪で、終身刑を言い渡され、ショーシャンク刑務所に入る。
アンディは「自分は無実だ」と、刑務所で知り合った「調達屋」(外から集めてきた物資を囚人に斡旋する仕事)のレッド(國村隼)に語るが、無実を証明できる決定的なものはなく、アンディは刑務所で辛い日々を送る。
服役者たちには荒くれ者も多く、アンディは、ボグス(谷田歩)率いる刑務所内を支配するグループから凄絶な暴行を受けてしまう。
屈辱ばかりの毎日、それでもアンディはなんとかこの地獄を回避しょうと策を練る。冷酷非情な刑務所長スタマス(板尾創路)が打ち砕いていくものの、その一方で、レッドをはじめ、老囚人ブルックシー(小林勝也)や若い新入り囚人トミー(三浦涼介)などがアンディの行動に感化され、ショーシャンクに希望の光が見えてくる・・・。かに見えたもつかの間、囚人として長く服役した影は容易く消えることはなく、彼らにとりついて苦しみを与えていく。

アンディたちは、果たして、解放と希望を得ることができるのか・・・。
舞台は無彩色で、鉄格子が幾重にも重なり配置されている(美術・松井るみ)。
鉄格子をガンガン叩く轟音が狂気を引きずりだす。
こんな異様な空間で、佐々木は、ほぼほぼ生まれたままの裸にされた挙げ句、男たちに後ろから陵辱されてしまうのだ。
佐々木は、囲み取材で「とりあえず毎日(の稽古で)、ああ、今日殴られるか、今日もまたレイプか・・・と思うと、とても心臓が弱いんで、苦しかったですね。いまだに悩んでいます」と苦笑するほどの辛いシーンだが、佐々木ファンや腐女子としては、楽しみなシーン?
だが、これはあくまでつかみであって、「ショーシャンクの空に」は別にそういう話ではない。

「ショーシャンクの空に」は、刑務所の中で、人間の尊厳をふみにじられるような苛烈な屈辱を味あわされてもなお、主人公が、

闘ってやられるか
ただやられるか

そのふたつの選択肢の中で闘うことを選ぶ不屈の物語だ。

どのみち「やられる」しかない状況(切ない!)でも、佐々木演じるアンディは知恵を駆使して、地獄の刑務所生活を少しずつ変えていく。彼のアイデアによって、囚人たちがひとときのオアシスを感じる場面は、前半のハイライト。

囚人の生活はひたすら鬱屈するもので、佐々木は「ほんまにぼく・・・収容されたことないんで、しかも20年近くなんで、なかなか大変ですけど、」と語る。想像を絶する刑務所暮らしの話である上、遠い外国の話ではあるが、
囚人を監視している側である看守すらが「国ってのはなんなんだ、搾り取るだけ搾りとりやがって」とぼやく時、ああ、これは、自分たちの世界と違わないのだという気持ちになる。

また、老囚人が、ようやく仮出所できることになったにもかかわらず、浮かない顔をしている場面も、刑務所の果てしない闇を浮き彫りに。
司書である彼は、刑務所で図書館をつくることが生き甲斐で、外に出たら、元囚人は図書館で本を借りられないのだと嘆く。
一度服役すると外での生活の可能性が絶たれてしまうことについては、日本の、生活できないから刑務所に入ったほうがいいという考えで罪を犯してしまう人がいることともまんざら無関係ではないのではないかなんてことも考えてしまった。

つまるところ、弱者が生きる場所がないのだ。
暗澹たる気持ちになってしまうが、アンディは最後の最後まで諦めない。その不断の歩みが、ついに風穴を開け、レッドの心も動かすラストシーンまで見ると、少し心が奮い立つ。
年の瀬、政治もよくならないし、暮らしが上向かないなあ・・・なんて憂いている人は、ぜひ見て希望をみつけてほしい。

佐々木蔵之介が、一見弱そうだが、圧政に耐え続ける芯の強さをもった男をしなやかに演じる。一瞬一瞬見せる表情が見逃せない。
国村隼は、含蓄ある長台詞を聴かせ、(演劇ファンだと「エレンディラ」(06)を思い出すかも)。板尾創路は、冷ややかだが粘っこいといういや〜な人間を端的に演じている。
三浦亮介は、今まで影のある役が多かったが、トッポい兄ちゃん役で新境地を拓いた。「根が暗すぎて、(演出の)白井晃さんに『上をむけ上を向け』とさんざん言われた」とのこと。
ほかに、老囚人の小林勝也や、アンディの適役を演じる、「SP」「家族狩り」などに出演している谷田歩(劇団AUN)にも注目したい。

男たちがみんな魅力的。
12月29日(月)まで。


(木俣冬)