南極のペンギン

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高倉健さん、菅原文太さんが亡くなった。テレビで出演映画が再放映されたり、追悼番組が組まれたりしている。大手書店では追悼コーナーが設けられ、書籍や雑誌が平積みになっている。映画の原作本や写真集なども多い。BOOKウォッチ特集では、二人を偲んで関連書籍をピックアップした。映画スターとしてスクリーンから受ける印象とは別の側面を紹介しよう。

J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(http://www.j-cast.com/bookwatch/)でも特集記事を公開中。

図書館協会選定、長く読み続けられる健さんの絵本

高倉健さんが著した絵本があった。『南極のペンギン』(画・ 唐仁教久 1512円、集英社)だ。

気づかれないように隠していたアカギレの手を、映画ポスターでいち早く発見した、ふるさとのおかあさんの話など10 のショートストーリーで構成されている。アフリカの少年、ハワイのベトナム料理人、オーストラリアのホースメン、奄美の画家と少女など、本書に登場するのは、彼が旅先やロケ先、あるいは読んだ本で出会った人たち。それぞれが事情を抱えていて、ときにはおかしく、哀しく、厳しく、そして切ない...。無名の人々の人生が一人の男の目を通して切り取られ、紹介されていく。ここでは高倉健さんは主役ではなく、脇役、もしくは語り部だ。

「ぼくの仕事は俳優だから、よく人から拍手される。でも、されるより、拍手するほうが、ずっと心がゆたかになる」

そんな思いを秘めながら見学した沖縄の運動会で、子どもや大人たちに手を叩き続けた健さん。全編に人への愛が溢れ、大人が読んでも静かに胸が熱くなる一冊だ。日本図書館協会選定本。

今の日本に喝を入れる、菅原文太のいわば遺言

小学館のPR誌『本の窓』の連載をまとめた『ほとんど人力』(著・菅原文太 1620円 小学館)には、台本ではない、菅原文太さん自身から生み出された、シビれる言葉が飛び出す。

「人力をないがしろにしたら人間力は衰える。今の日本に必要なのはカネや権力におもねらない型破りの人間だ!」と、憲法、エネルギー政策、食の安全、TPP、沖縄の基地問題、アベノミクス...など、テーマごとにゲストに招き、学びながら自分の想いを熱くぶつける。

対談のお相手は金子兜太さん(俳人)、樋口陽一さん(憲法学者)、堀田力さん(弁護士)、相場英雄さん(作家)、中村哲さん(ペシャワール会現地代表)、大田昌秀さん(元沖縄県知事)、古賀茂明さん(元経産省)、西部邁さん(評論家)、黒田征太郎さん(イラストレーター)、鳥越俊太郎さん(ニュースの職人)ら総勢17人。

「二日酔いを醒ます程度の反省ではいまの状況は打破できない」
「頭だけで構築したものは自然の力には抗しえない」
「ここで引き下がっては男がすたるという気概をもて」

こんなセリフが随所にポンポン飛び出し、菅原文太さんが最期まで熱く、筋を通す男であったことがよくわかる。

高倉健や菅原文太のかなりアブないエピソードあり!?

晩年は毒舌を交えた軽妙な語り口を武器に、テレビのバラエティー番組で活躍していた俳優の山城新伍さんの著書『おこりんぼ さびしんぼ』(669円、廣済堂出版)からは、昭和の映画スターたちの息づかいが生々しく聞こえてくる。

ここでいう「おこりんぼ、さびしんぼ」は高倉健さんや菅原文太さんのことではなく、その上の世代、同じく東映のスターとして活躍した若山富三郎さんのこと。弟の勝新太郎さんの豪放磊落(ごうほうらいらく)ぶりは有名だが、自分のことを日記に「先生」と記した兄貴のほうの、変人ぶり、スケールの大きさも並大抵のものではなかった。この若山富三郎・勝新太郎兄弟を誰よりも近くで見てきた山城さんが、ハチャメチャなエピソードを縦軸に、俳優、女優、監督、脚本家の人間模様を絡めて描いた痛快エッセイだ。

健康オタクだった高倉健さんが若山富三郎さんに贈ったものが大変な事態を引き起こした話や、移籍してすぐに売れた菅原文太さんを東映生えぬき組が妬んで、あわや一触即発だった、リアルな「仁義なき戦い?」など、知られざる逸話が満載だ。