WESTを初制覇したC大阪U-18。次はEAST王者・柏U-18とのチャンピオンシップに臨む。(C) Haruko Yoshimura

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 17節終了時点で首位の神戸U-18と4位の名古屋U18までの勝点差はわずか2。最終節まで4チームが優勝の可能性を残す大混戦を制したのは、C大阪U-18だった。最終節の東山戦を3-0とモノにし、同じく最終節で京都橘戦をスコアレスドローとした神戸を土壇場で逆転しての初制覇となった。
 
 WESTで唯一、連敗が無かったようにシーズンを通しての安定感が、栄冠の要因となったが、その根底には「勝ちにこだわるのも大事だけど、『精一杯やって勝てればいいな』くらい」という村田一弘ヘッドコーチの言葉に象徴されるブレない指針があった。
 
 最大目標は勝利ではなく、「世界基準で戦える選手を育てる」こと。大熊裕司監督の下、ボールを扱いながら絶えず動き続ける基礎技術はもちろん、持久力などフィジカルを含めた個の強化に、今年一年はより注力してきた。成果は開幕から着実に表われ、前線から果敢に奪いに行く守備をベースに、ショートカウンターや後方からの素早いパス回しで相手を崩すなど、状況に応じた的確な崩しが機能した。
 
「今年は最後まで走り切れているので、練習試合からいい結果が出ている」
 MF高田和弥が前期をそう振り返ったように、フィットネスの充実によってゲーム終盤まで的確なプレーを継続できたことで、前期を上位で折り返す結果につながった。
 
 7月にはMF阪本将基が天皇杯の2回戦でプロデビューと初ゴールを記録したのも偶然ではなく、これらの積み重ねの成果だったと言える。
 
 13節の名古屋U18戦以降は、大熊裕司監督がトップチームとの兼任監督となり、試合の指揮から外れたが、「やることは変わらない」とFW前川大河が言い切ったように後期からも“育成のセレッソ”にブレはなかった。
 
 らしさが良く出た一戦と言えるのが、負ければ優勝の可能性が無くなる17節の神戸U-18戦。ゲームキャプテンを務めてきたDF橋本侑紀や出場時間を伸ばしていた1年生MFの斧澤隼輝らを「プレミアもいい経験だけど、サブにいるより刺激になると思うし、彼らの代わりに入る選手にも刺激が生まれる」(村田ヘッドコーチ)と控えに置かず、同日に行なわれたサテライトの試合に送り出した。
 
 後半、1点を追う状況で投入した選手も村田ヘッドコーチが、「チャレンジさせたい選手たち。緊張感のあるゲームが選手を成長させるので、ずっと使うチャンスを伺っていた」と説明したように、MF上畑佑平士、松岡大智といった経験の少ない選手たちだった。
 
「トップに参加した選手に負けじと、練習からアグレッシブさを見せてくれる選手がいる。後期は多くの選手が成長した結果、オプションが増えて、嬉しい悩みが続いている」と村田ヘッドコーチが続けたように、選手層の広がりが84分に生まれた前川の同点弾につながった。
 
 あくまで、個の成長を優先させながら掴んだ神戸戦の勝点1は、最終節まで優勝の可能性を残す意味でも貴重なものとなった。WESTの制覇は個の成長が積み重なった結果だったと言えるだろう。残るはチャンピオンシップのみだが、これまでのスタイルに変わりはないはず。ブレないセレッソらしさの先に、さらなるタイトルが待っていても不思議ではない。

取材・文:森田将義(サッカーライター)