独りのクリスマスで何が悪い?そんな夜は“歌のないクリスマスソング”を
 今年も早いものでもう12月。そろそろあちこちからクリスマスソングが聞こえてくる季節。ふと浮かんだだけでも、マライア・キャリー、山下達郎、ジョン・レノン、ワム!、稲垣潤一、辛島美登里。そしてエボラ出血熱に苦しむ西アフリカ支援に乗り出した現代版バンドエイドの「Do They Know It’s Christmas ?」といった曲など、枚挙にいとまがありません。

 それでも思いつく曲のほとんどがボーカルメイン。人の歌声のぬくもりがこの季節をさらに盛り上げる反面、「ひとりで寂しく過ごすわアホ」という人たちにとっては少しうとましく聞こえてしまうなんてこともあるかもしれません。そんなときこそ“歌のないクリスマスソング”。あのおなじみのメロディはそのまま、じんわりと時の流れを感じつつ、静かに気持ちがたかぶる名演の数々です。

 まずはジングルベル3連発。主に60年代のソウルミュージックを支えた屈指のリズム&ブルースバンド、ブッカーT&ザ・MG’sによる演奏はどことなくシュープリームスの「恋はあせらず」を思わせるゴスペルテイスト。ハモンドオルガンでメロディが奏でられると、少しだけ不良っぽく感じるのはなぜでしょう。1966年発表のアルバム「In The Christmas Spirit」収録。

⇒【YouTube】Booker T & the MG’s Jingle Bells http://youtu.be/wr2gwjfdZdM

 そして問答無用のベンチャーズバージョンは、イントロにレイ・チャールズの「What’d I Say ?」のリフ(ザ・スパイダースの「バン・バン・バン」みたいなやつですね)の引用から始まるグルーヴが圧巻。いまでもロックバンドの基礎としたい堅実な迫力を感じます。1965年発表の「The Christmas Album」収録。他の曲でもビートルズの「I Feel Fine」や「Ticket To Ride」のギターリフが引用されていて、思わずクリスマスも忘れてしまう楽しさです。

⇒【YouTube】The Ventures‐Jingle Bells http://youtu.be/UhG_JV9lteM

 そしておしまいのジングルベルは、「Take Five」があまりにも有名なジャズピアニスト、デイブ・ブルーベックによる演奏。「“Farewell” Jingle Bells」と題されたバージョンが白眉。メロディに添えられる和音のめまぐるしい変化が“さよなら”に込められた幾重もの余韻を引き立てています。

 ライナーノーツに記されたこの曲についてのブルーベック本人による言葉がまた味わい深い。

<疲れ切った両親と寝ぼけ眼の子供たち。そしてクリスマスのお祝いが終わって夜のしじまに消えていく客人たちを描いたものだ>

 クリスマスの喧噪が過ぎ去った安堵感とさびしさとがないまぜになったままぐずっている。そんな年の瀬の甘さが、このピアノのヴォイシングから感じられるような気がします。1996年発表のアルバム「A Dave Brubeck Christmas」収録。

⇒【YouTube】Dave Brubeck‐“Farewell”Jingle Bells http://youtu.be/cGX__dlTBpQ

⇒【後編】「アコースティックギターのクリスマス名曲選」に続く http://joshi-spa.jp/162233

<TEXT/音楽批評・石黒隆之  PHOTO/Stanislav Kahuda>