話題沸騰、ももクロと KISSのコラボ。そのKISSを全否定したミュージシャンがいた
 突然のニュースリリース以来、ももいろクローバーZとアメリカのロックバンド・KISSの共演が大変な話題となっています。年明けの1月28日には「ももいろクローバー VS KISS」としてシングルを発売。さらに3月3日に開催予定のKISSの東京ドーム公演へのももクロの参戦も決定しました。

 ところでKISSと言われても何のことやらという人もいるかもしれないので、少しご説明を。白黒の奇抜なメイクに火吹きパフォーマンスで1970年代半ばに大ブレイクし、全世界でのレコード総売り上げが1億枚を超えるほどのメガバンドなのです。メイキャップを施した子供たちが彼らの代表曲「I was made for loving you」を歌うキヤノンのCMも記憶に新しいところ。

⇒【YouTube】Kiss‐I Was Made For Lovin’You(Live From Inner Sanctum) http://youtu.be/pLdKDHn88Zg

 いずれにせよKISSはイングヴェイ・マルムスティーン以上のビッグネームとあってインパクト満点ですが、しかしかつてこのKISSを全否定したミュージシャンがいたことをご存知でしょうか。

◆「こんなもの、音楽じゃねえ」と一蹴

 リヴォン・ヘルム(1940〜2012)。伝説的なロックバンド、ザ・バンドのボーカリスト兼ドラマーで一昨年の4月に亡くなりました。その彼がある日取材を受けたときのこと。机にあったKISSが表紙の音楽雑誌を見て一言、「こんなもの、音楽じゃねえ」。

 絵に描いたようなアメリカ南部の頑固おやじキャラのリヴォンでしたが、同業者ならびに音楽を愛する人たちから大変に慕われる人物でもありました。彼が亡くなったときに追悼コメントを寄せた中には、映画監督のマーティン・スコセッシ、ボブ・ディラン、エルトン・ジョンといった錚々たる面々が揃っています。特にエルトン・ジョンは「Levon」と題した名曲を残すのみならず、パートナーのデイヴィッド・ファーニッシュとの間に授かった養子のミドルネームにリヴォンと名付けるほど、この魂のドラマーとボーカリストに心酔していたのです。

⇒【YouTube】Levon Helm Ramble At The Ryman“Ophelia” on PBS

 リヴォンの生前、映画「バスケットボール・ダイアリーズ」の原作者として知られるジム・キャロルは、そのドラム演奏を評して「人を泣かせることのできる唯一のドラマーだ」と語りました。彼が歌いながら叩くとき、声域の最もきついところが分かるように力いっぱいドラムを殴りつけました。そして自らを鼓舞するように、細かく速い連打を繰り出し、曲を前進させ続けました。

 リヴォン・ヘルムは音楽がレクリエーションではなく争いであり死活問題であることを鮮明に突きつけることのできるドラマーであり、ボーカリストだったのです。

 マーティン・スコセッシは追悼コメントの中で、自らがメガホンを取った映画「ザ・ラスト・ワルツ」での「The night they drove old dexie down」がどれほど感動的だったか語っています。古今東西の名曲のみならず、地元の人間ですら知らないようなパンクバンドまでチェックしているというスコセッシにそこまで言わしめるリヴォン・ヘルムとは、一体どれほど大きな器の持ち主だったのでしょうか。

◆「歳は違くても、思ってることは一緒!!」

 そんなリヴォンから全否定されたKISSですが、彼らもプロフェッショナルであることは間違いありません。音楽はともかく、他の追随を許さぬエンターテイメント性と妥協を許さぬステージング。

 そのスピリットは早くも、ももクロの赤に継承されている様子。共演の決定を受けて発表された百田夏菜子のコメントからもその興奮ぶりがうかがえます。

「KISSさんが歩いてきた道は、私達が目指してる道と重なる部分があり、今回は一緒にその先にあるものを作り上げることが出来て、すごく嬉しかったです!! 国は違くても!歳も違くても(笑)思ってることは一緒!!」(公式HPより)

 一発で変換できない「違くても」には参りますが、ともかく彼女たちの曲は知らなくても大観衆を前に力いっぱい飛び跳ねる姿ぐらいは見たことがあるという人は多いかと思います。きわめて好意的に見れば、KISSとももクロは音楽を超越した存在という点で共通している。そんな両者が共演することで、いったいどんな化学反応が起こるのか。日本のエンタメ界にとって久々ににぎやかな話題とあって、いまから楽しみですね!!

⇒【YouTube】泣いてもいいんだよ/ももいろクローバーZ(NAITEMO IINDAYO/MOMOIRO CLOVER Z) http://youtu.be/TC1Q7DuNKfw

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>