日本翻訳大賞。選考委員は、金原瑞人、岸本佐知子、柴田元幸、西崎憲、松永美穂。

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最初は翻訳家の西崎憲さんのツイートだった。


そこにゲームデザイナーの米光が「やりましょうやりましょう」的な気軽なツイートをしてしまい動きはじめてしまう。
まあ、そこからおよそ9カ月。
スポンサーなどはつけずに、“知りあいに声をかけて全員手弁当で”というスピリッツで「ともかくやってみますか!」ということになり、
「誰かやって欲しい」とつぶやいていた西崎憲さんが発起、「日本翻訳大賞」がスタートすることになった。

第一回日本翻訳大賞は、2014年に出版された翻訳小説を対象に大賞を決める。
選考委員は、金原瑞人、岸本佐知子、柴田元幸、西崎憲、松永美穂。

審査方法は、以下の通り。
前年に刊行された翻訳書のなかから一般から出版社関係まで広く候補作を推薦、そのうちの上位10作および選考委員が選んだ5作の計15作が二次候補作になります。そこから選考委員が手分けして6作ずつ検討し、最終候補作5作を選びます。そして選考会を開き、大賞1作を決定します。

その年の翻訳小説すべてが対象(言語も限定せず、小説、詩、児童文学などを広くカバー)、出版社や地方自治体が主催ではなく、翻訳家が選ぶ賞は、いままでになかったのではないか。
運営に関わる費用を集めるクラウドファンディングもスタートした。

選考委員のプロフィールとコメントを紹介しよう。
金原瑞人(かねはら・みずひと)
法政大学教授、翻訳家。訳書にウェストール『かかし』(徳間書店)、オクリ『満たされぬ道』(平凡社)、ペック『豚の死なない日』(白水社)、マコックラン『不思議を売る男』(偕成社)、シアラー『青空のむこう』(求龍堂)、リオーダン『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(ほるぷ出版)、グリーン『さよならを待つふたりのために』(岩波)、『月と六ペンス』(新潮文庫)、『わたしはマララ』(学研)など。著書・エッセイ集に『雨月物語』(岩崎出版)、『翻訳のさじかげん』(ポプラ出版)など。
「発見につながるのか、確認に終わるのか。もちろん前者であってほしい。だが、発見されても広く認められなければ、つまらない。がんばれ。出版界を軽く(もちろん、大きく、でもいいけど)ゆさぶるような賞であってほしい……などと、まるで自分が選考委員でないかのような書き方をしてしまうのだった」

岸本佐知子(きしもと・さちこ)
翻訳家。訳書にリディア・デイヴィス『話の終わり』(作品社)、ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』(新潮社)、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』(以上白水Uブックス)、ショーン・タン『遠い町から来た話』(河出書房新社)など。編訳書に『変愛小説集』(講談社文庫)、『居心地の悪い部屋』(角川書店)など。著書に『気になる部分』(白水Uブックス)、『ねにもつタイプ』(ちくま文庫、第23回講談社エッセイ賞受賞)など。
「どんな翻訳がいい翻訳なのか、説明は難しいけれど、それでもいい翻訳はある、と思います。訳業がすばらしくて、原作も面白くて、なにより読んで楽しい、そんな本をおすすめする場になるといいなと思います」

柴田元幸(しばた・もとゆき)
翻訳家、雑誌『Monkey』責任編集。訳書にオースター『幻影の書』(新潮文庫)、ダイベック『シカゴ育ち』、ミルハウザー『ナイフ投げ師』(以上、白水Uブックス)、ロンドン『火を熾す』(スイッチ・パブリッシング)など。編訳書に『どこにもない国』(松柏社)、『紙の空から』(晶文社)など。著書に『死んでいるかしら』(日経文芸文庫)、『つまみ食い文学食堂』(角川文庫)、『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会、2005年サントリー学芸賞受賞)など。ほかに、英語文芸誌_Monkey Business_責任編集。
「半分は(いちおう)専門家の視点から、半分は面白さを求める野次馬の視点から、意義があって共感できて、読んで楽しい訳業に光を当てることができたらと思っています」

西崎憲(にしざき・けん)
翻訳家、アンソロジスト、作家。訳書に『郵便局と蛇』コッパード、『ヴァージニア・ウルフ短篇集』『ヘミングウェイ短篇集』『エドガー・アラン・ポー短篇集』(ちくま文庫)、『第二の銃声』バークリー(創元推理文庫)など。共訳書に『ピース』ウルフ(国書刊行会)など、編訳書に〈ドイル傑作集全五巻〉(創元推理文庫)など。アンソロジーに『短篇小説日和』『怪奇小説日和』(ちくま文庫)など。著書に『世界の果ての庭』(第十四回ファンタジーノベル大賞受賞作、創元推理文庫)、『蕃東国年代記』(新潮社)、『ゆみに町ガイドブック』(河出書房新社)、『飛行士と東京の雨の森』(筑摩書房)。ほかに音楽レーベル〈dog and me records〉主宰。
「この賞が作者と読者と訳者に歓びをもたらしてくれることを願っています。そして同時に読書人としてどんな本が候補にあがってくるか楽しみでなりません」

松永美穂(まつなが・みほ)
翻訳家、早稲田大学文学学術院教授。訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』(新潮社)(2000年毎日出版文化賞特別賞)、ラフィク・シャミ『夜の語り部』(西村書店)、ミリヤム・プレスラー『マルカの長い旅』(徳間書店)、エヴァ・バロンスキー『マグノリアの眠り』(岩波書店)、マーレーネ・シュトレールヴィッツ『誘惑。』(鳥影社)、セース・ノーテボーム『木犀!/日本紀行』(論創社)、著書に『誤解でございます』(清流出版)、『ドイツ北方紀行』(NTT出版)など。
「なかなか光が当たらない翻訳の仕事について、いろいろな方と話ができる場がつくられて、すごくうれしいです。この賞が、関心を持って下さるみなさんの力によって、どんどん育っていってくれるといいなと思います」

第一回日本翻訳大賞の発表は2015年4月を予定している。(米光一成)