『トランプゲーム大全』赤桐裕二/スモール出版 “日本における究極のトランプゲーム本 約250種のルールを掲載”

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人狼ブームも手伝って、アナログゲームブームである。
アナログゲームの祭典ゲームマーケットも年々規模が大きくなっている。
ぼくも、最近は「想像と言葉」というアナログゲームをつくっている(12/7に80人で遊ぶ大ゲーム大会を阿佐ヶ谷ロフトAでやります、来てね)。

で、アナログゲームの王様といえば、
あれやこれやわーわー喧喧諤諤囂囂侃侃した結果、
「トランプでしょう!」
ということになるのではないか。

その王様であるトランプの聖典が出た。
『トランプゲーム大全』!
「日本における究極のトランプゲーム本」という帯の言葉に偽りなし。
堂々の656ページ。分厚い。
約250種のルールを掲載。圧巻。

「第1章 トランプの遊び方」からはじまって、あとはひたすらトランプゲームのルールがずらーーーっと。
図やイラストは、ほぼなし。
文章だけでルールが、ずらーーーーーっと。
途中、息抜き的な「トランプの起源は?」みたいなコラムもなし。
トランプゲームだけをとことん追求、しかも、それで653ページ。むかしの電話帳的な分厚さ。
第2章が「トリックテイキングゲーム概要」。
トリックテイキングというのは、「各プレイヤーが1枚ずつカードを出して、一番強いカードを出したプレイヤーの勝ち」というスタイルのゲームのこと。
このトリックテイキングゲームの基本的な遊び方が4ページで語られ、そのあと様々なトリックテイキングゲームの紹介になる。
第3章は、“現代的なトリックテイキングゲームの”ナップのルール。さらにバリエーションとしてナップの変則ルールが解説される。
たった8ページで、バリエーションルールを含めて7種類ものゲームルールが紹介される。
体系的で濃縮された記述。
第36章 新作系の珍しいトリックテイキングゲーム
第39章 ジン・ラミーの仲間
第49章 ポーカーの祖先や兄弟のゲーム
といったふうに同スタイルのゲームをまとめて紹介する。
そのため、それぞれのルールの差異がくっきりとわかる。
たとえば、第44章の大貧民の系統のゲームの章で紹介されているゲームを遊ぶと、地域や時代でゲームが変異していったさまが実感できる。
ベトナムのシンプルな大貧民「ディエンソン」。
そこに階級でカードを交換する仕組みを追加してアレンジしたものが日本の大貧民。
日本の大貧民は、“日本起源説も十分あり得ます”が、“ベトナム戦争などを通じて、ベトナムから米軍を経由して伝わった可能性もあります”と書かれている。
大胆な組み合わせでカードを捨てることができる中国バージョン「ドウディージュー」。
ポーカーの役を使った「チューダーディー」。
ルールが少しずつアレンジされて、違うゲームになっていく。

こども向けのトランプゲームの本ではない。
ガチなんである。
たとえば、ナップの解説部分を引用してみる。
“【プレイ】
ビットが終わればプレイを行います。プレイの方法は、トリックテイキングゲームの遊び方に従います。このゲームで最初にリードを行うのはデクレアーで、最初にリードされたスートが切札になります。ただしミゼールのビッドの時は、切札はありません。”
前章「トリックテイキングの遊び方」を理解している前提で書いていある。
それどころかトリックテイキングは、この本の骨格をなすといってもよい。
“トリックテイキングのように、各プレイヤーに1度だけプレイの機会があるのではなく、”といったルール解説の軸になることも多い。
だからぱっと「ナップ」の項だけを読んでも理解するのはむずかしい。その前の「トリックテイキングの遊び方」の構造を理解していることが前提だ。
親切に手とり足とり(図解やイラストを添えたり、同じ解説を何度も繰り返したりして)説明はしてくれない。
読者に、ルールテキストを読み解くことを要請する。
ルールを読みながら、実際に遊んでみる。
あれ、これ、どういうことだろう?
考えながら、読んで、プレイする。
第55章のトランプ用語集や、第1章のトランプの遊び方、さくいんを参照しながら読む。
トランプゲームのルールを支える仕組みを理解していく。
挑む。そういう姿勢が必要だ。
そして、それが抜群におもしろい。

トランプゲームをガッツリ遊ぼうと思ってる人にオススメなのはもちろんだが、
ゲームデザイナーや、ルールや仕組みをつくろうとしている人にもオススメ。
本書を、頭から読んでいけ。
ルールを読み解く。
まずは脳内だけでプレイする。
ルールの構造を頭でまわしてみる。どこで面白さが生まれているのかを思考してみる。
さらに、仕組みがどうテキスト化されているのかを観察検討する(ルールを文章化にするのはとても難しいので、その方法を学ぶことは大切)。
そして実際にプレイしてみる。
遊んでみて「変だな」「ゲームになってないぞ」と思ったら、ルールを読み取り損ねている可能性大だ。
紹介されているゲームは歴史に耐えてきて、しっかりとルールとして成り立っているものだ。
もう一度、ていねいに読んでみる。どうゲームが構成されているか考えてみる。
バリアントルールがたくさん紹介されているので、それも遊んでいる。
ちょっとしたルールの変更で、ゲームの遊び心地がどのように変わるのかを実感する。
さらに、次のゲームルールを読む。
体系的に紹介されているので、その前のゲームとの差異を考えながら遊んでみる。
違うゲームではなく、時間や地域的な伝搬で変化していったものだと想像してみる。
ルールの進化系統図をイメージしてみる。
できれば、自分でバリアントルールを作ってみるといい。
ちょっとだけルールを変更してみる。
そして遊んでみる。おもしろくなるだろうか?
アナログゲームの良い点は、ルールの変更があっという間にできることだ。
何度でもルールを変更して遊んでみる。
これを繰り返すだけで、あなたの中にルールや仕組みの構成法がガッツリ身につく。
『トランプゲーム大全』は、重量級のゲームデザイナー養成ギプスだ。

12月4日に、NHK第一「すっぴん」の「新刊コンシェルジュ」のコーナーで『トランプゲーム大全』を紹介する。
この本すげぇ!って感動して、「これ紹介します」って勇んで言ったんだけど、映像なしでどう紹介すればいいんだろう?
悩むわー。
(米光一成)