規模拡大に意欲的な東京都民銀

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 11月に相次いで経営統合が報じられた地銀は、頭取の経歴に共通点があった。横浜銀行と東日本銀行(東京都)の頭取は、東大法学部を卒業後、大蔵省に入省し、国税庁長官を務めた。肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行の頭取は、いずれも慶大商学部を1975年に卒業し、卒業後に今の勤務先に就職した。

 『日本経済新聞』が11月26日から連載する「迫真地銀再編」は、横浜銀・東日本銀の「手掛かりとなったのは旧大蔵省人脈だった」、肥後銀と鹿児島銀の頭取は「慶大商学部の同期同窓で統合の必要性について率直に話し合える仲」と記す。「二人は4月の全国地方銀行協会の会合後に都内で会食し統合方針を確認」したという。

 次の地銀統合を予想するには「頭取の経歴」を調べるのが早い。前回の記事「」(11月15日配信)では、九州と中国地方を中心に、卒業年次が同じか近い慶大OB、東大法学部出身の大蔵官僚OBが頭取を務める地銀について探った。

 他の地方を検討する前に、地銀106行が公表した開示資料などを基に調べた全頭取の出身大学に触れておこう。大学別順位は1位=慶大20人▽2位=東大と早大10人▽4位=明大5人▽5位=中大、日大、一橋大各4人――の順だった(大学院は除く)。

 慶大、東大、早大の3大学出身者は、地銀トップの4割を占める計算になる。ちなみにトップのうち女性や外国大学出身者はゼロ、最終学歴が高卒は1人だけ。いかに同質的な業界か想像できる。

 慶大OBのトップを地方別に並べると、気になる組み合わせがいくつも見つかる。卒業年が同じか1年違いで、本店所在地が近い組み合わせを抽出すると、七十七銀行(仙台市)と東邦銀行(福島県)▽足利銀行(栃木県)と千葉興業銀行と東京都民銀行▽静岡銀行と中京銀行(名古屋市)――が該当する。

関東の経営統合も学歴がカギ

 七十七銀の氏家照彦頭取は69年、慶大経済学部を卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て入行した。「仙台三田会」サイトには、副会長として名を連ねている。一方、東邦銀の北村清士頭取は70年、慶大商学部卒の生え抜きだ。

 東北地方は地銀の経営統合が盛んな地方だ。北都銀行(秋田県)と荘内銀行(山形県)は経営統合に合意して09年、フィデアホールディングス(HD)の傘下に入った。また、仙台銀行ときらやか銀行(山形県)は同じく、じもとHDを設立。両HDは仙台市に本社を置く。七十七銀の地盤が侵食される構図がある。

 ただし、七十七銀は保守的な気質で知られる。東北最大手行で14年3月期の自己資本比率は12.33%。全国地方銀行協会(地銀協)加盟行の平均を上回る優良行だ。震災後の仙台市は人口増や復興需要にわいている。東北北部の地銀より条件は良く、経営統合を進める意欲が低いかもしれない。

 次は足利銀、千葉興業銀、東京都民銀に移ろう。足利銀の松下正直頭取は79年、慶大商卒。千葉興業銀の青柳俊一頭取は80年、慶大経済卒。東京都民銀の柿粼昭裕頭取は79年、慶大経済卒。同行は八千代銀行(東京都)と経営統合に合意して、10月に発足した東京TYフィナンシャルグループ(FG)の傘下入りしたばかりだ。

 前述の「迫真地銀再編」によれば、横浜銀と経営統合を決めた東日本銀は、今年1月頃まで足利銀を傘下に持つ足利HDと経営統合をめぐって交渉していたという。

 東日本銀の石井道遠頭取(東大法学部74年)は、「八千代銀行と東京都民銀行の経営統合に参加する案」を検討したが、「3行統合でも預金量は10兆円にすら届かない」と断念、足利との統合交渉に入ったという。しかし、「持ち株会社方式か合併かで両行は鋭く対立」し、交渉は暗礁に乗り上げた。結局、東大法学部と大蔵省で3年先輩の寺澤辰麿頭取が率いる横浜銀と経営統合を決めた。

 つまり、足利銀と東京都民銀は規模拡大に意欲的なのだ。両行のテリトリーは隣接しないが、千葉興業銀が加われば距離はぐっと縮まる。栃木県南東部の野木町と千葉県北西部の野田市は直線距離で15キロほどしか離れていないのだ。

 そう考えれば3行の統合、または3行の一部が横浜・東日本グループかTY FGに加わる構想は成り立つのではないか。

 これまで千葉県の地銀は再編に加わっていない。しかし、関東地銀1位の横浜銀が動いたことで、同2位の千葉銀行は気が気ではないはずだ。千葉銀の佐久間英利頭取は76年、早大政治経済学部卒。13年6月まで地銀協会長を務めた。

 実は現会長の常陽銀行(茨城県)の寺門一義頭取は74年、早大法学部卒だ。千葉銀と常陽銀は三菱UFJ FGの親密行である点も一致する。卒業後の結束が固い慶大OBのような狒畭腑灰優ション瓩枠揮されるか。隣県同士だけに気になるところだ。

 さて、慶大OB人脈に戻ると、静岡銀の中西勝則頭取は76年、慶大商卒。中京銀の深町正和頭取は75年、慶大法卒。同行はもともと東海銀行の親密行だったため、現在は三菱UFJ FGに近い。静岡銀も三菱UFJ FGの親密行だ。

 静岡銀は1月、七十七銀、千葉銀、広島銀行、福岡銀行など有力地銀8行と地域連携構想を発表した。奇しくもこれら地銀トップはいずれも慶大OBだ。4月にはオンライン証券大手のマネックスグループの筆頭株主になっている。現状打破の意欲はあるようだが、統合の相手として第2地銀の中京銀が魅力的に映るかは不透明だ。

 “次の再編”が電撃報道される時、慶大閥がカギになる可能性は低くない。ここで挙げた地銀は今後、地銀再編の有力候補と言えるだろう。

(取材・文/谷道健太)