自動走行だけでは完成しない、未来のモビリティ・建築・都市:AUDI AGが語るAUFIの意義

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モビリティの未来を考えることは都市の未来を考えることでもある。Audi Urban Future Initiative(AUFI)の意義を、AUDI AGのLisa Futingとキュレーターを務めるデザインファームStyleparkのChristian Gartnerが語る。

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Audi Urban Future Initiativeとはなにか

AUDI AGが2010年より開始したこのシンクタンクは、クルマの未来を考える足がかりとして、それがいかなる都市環境のもとで存在しうるのかを考察することに焦点を絞る。モビリティ、アーバンプランニング、建築、デザインなど多分野の先端的識者たちを招いてのアワード「Audi Urban Future Award」、コンペ、ワークショップ、リサーチなどを行う。

都市をテクノロジー化するのではない、テクノロジーを都市化するのだ

──Audi Urban Future Initiative(AUFI)は勇敢な取り組みだと思います。モビリティの未来を考えることは、ときには自動車メーカーにとって不利な議論をも呼び込むことになりませんか?

Lisa Futing(以下LF) おっしゃる通りです。AUFIの狙いは都市の変化と、それを突き動かしているニーズや欲望を明らかにするという点にあります。それは自動車メーカーがこれから生き残っていくうえで欠かすことのできない重要なものです。それをしていくなかで「自動車フレンドリー」ではない議論に直面することもわかってはいました。しかし、だからこそ、それをあえてすることが大事だったのです。耳の痛い話に耳を塞いでしまってはいけないのです。けれども結果から見ると、2014年で3回目となる「Audi Urban Future Award(AUFA)」の多くの参加者は、未来の都市における「インディヴィジュアル・モビリティ」の役割の重要性を指摘しています。自動車メーカーが、そこにおいて貢献できることは間違いなくたくさんあるのです。

──2010年の1回目のアワード受賞作は非常に抽象的なものでした。それが回数を重ねるに従って、徐々に現実的なものへとシフトしてきています。

Christian Gartner(以下CG) 1回目のアワードの意義は、最も先鋭的な未来の姿を指し示すところにありました。同時に1回目においては具体的な都市を主題にはせず、概念としての都市をテーマとしましたので、結果提案されたプランもコンセプチュアルなものでした。その知見をもとに2回目では具体的な都市を主題とし、3回目となる今回もかなり具体的な地域、例えばボストンの隣町のサマーヴィルなどを舞台としたリサーチ・発表を行ってもらいました。

──舞台となる都市は、誰がどのように選ぶのでしょう?

CG わたしたちとAUDI AGのメンバーで選びます。ここが、わたしたちの最も重要な仕事となります。未来のゲームチェンジャーとなりうる都市、変革の先端を走るポテンシャルをもつ都市がどこなのかを、綿密に調査して決定します。



Howeler + Yoon Architectureが、AUFIのキュレーターStyleparkとともに取りまとめた調書「City Dossier Boston」。

──前回の受賞者の設計ファーム、ハウェラー&ユーンは、アワードのあとも継続してプロジェクトを行っています。

LF ボストンとワシントンの間の地域を舞台に人々の移動をめぐる動態を調べる「City Dossier Boston」というものです。詳細なリサーチのなかから、どこに交通・移動手段の欠落があるのかが明らかになりました。さらに、都市における移動する人々を3つの類型に分けることができました。結果、AUDI AG社内の開発チームに、未来のクルマにどんなキャラクターが必要か、大きな示唆をもたらしてくれました。

──リサーチが実際の開発にも役立っているんですね。

LF AUFIのひとつの大きな役割はまさにそこにあります。今回のアワードではAUDI AGの内部のチームがデータ活用においてメキシコシティのチームと共同していますし、ベルリンのチームは、AUDI AGのデザインチームとコラボレーションしています。

CG 加えて、ボストンでは、行政や開発業者など、さまざまなステークホルダーも参加しています。

LF 今回のアワードでは、とくに、できるだけ多くの分野の方々の参加を促しています。情報やアイデアを共有し、そこにAUDI AGがどういった貢献をすることが可能か考えるためです。わたしたちだけでなく、行政や開発業者などもより大きな課題を解決するためのパートナーを求めているのです。自動走行や自動駐車といった最新のテクノロジーは自動車のイノヴェイションだけでは成立しません。そこにはインタラクトする相手としての都市インフラが必要なのです。

CG 社会学者のサスキア・サッセンはうまいことを言っています。「21世紀はテクノロジーを都市化していく時代になる」。都市をテクノロジー化するのではなく、その逆なのです。自動車というテクノロジーをいかに都市化するのか。AUFIのミッションは、端的に、そこにあるのです。



エリック・ハウェラー | ERIC HOWELER
Howeler + Yoon Architecture主宰
コーネル大学建築学科出身。2004年にH?weler + Yoon Architectureを設立。建築のみならずインテリア、家具、服飾、インタラクティヴなど領域横断的な活動を手がける。Audi Urban Future Award 2012受賞。

建築家はトータル・デザイナーである
AUFA2012受賞者エリック・ハウェラーに訊く

この数年、AUDI AGとの共同によるプロジェクトに携わり、モビリティのリサーチ、デザインの第一線を走るボストンの建築家が考える、未来のモビリティ、未来の建築家の姿。

2012年の「Audi Urban Future Award」が終わったあとも、AUDI AGに誘われてモビリティに関するリサーチを一緒に続けています。モビリティは、今後わたしたちの未来にとって極めて重要なトピックではありますが、ひとつの業界やブランドだけで解決することはできません。クルマだけでなく自転車などをも含めた「モビリティ・エコロジー」を考えることが重要なのです。

AUDI AGの援助のもと、そうした観点から、行政府の交通局などとも手を組んで、現在さまざまなリサーチを行っていますが、当初アイデア・コンペとしてはじまったかかわりが、徐々に現実化しているのは実に興味深いことです。実際にわたしがいまある開発業者と行っているプロジェクトは「パーキング」に関するものですが、彼らは、わたしたちが2012年にアワードで提案したプランに大きな興味を示してくれています。そこでこちらからは、ライド・シェアリング・プログラムを導入することで、駐車スペースを効率化する提案をしています。

こうしたプロジェクトにおける建築家の仕事は、リサーチとデザインの双方です。建築家の存在は環境やモビリティといった大きな社会的課題に取り組む「パブリック・インテレクチャル(公共の知性)」だと思っています。そして、集積された、さまざまな情報・アイデアを物理化するのです。建物をつくるだけではなく、光、匂い、動き、あらゆるものをデザインする仕事になってきています。

「ビルディングからビヘイヴィアへ」という言い方をわたしはよくしていますが、それを体験のデザインと呼ぶこともできるでしょう。AUDI AGもまた、その領域において興味深いリサーチをたくさん行っていますので、双方の知見のオープンな交換はとても意義のあることなのです。