ギリギリの滑り込み!王者・羽生結弦氏が薄氷踏む脳内パズルを完成させ、GPファイナル出場権確保の巻。
ギリギリでいつも生きていたいから!

耐えた。粘った。滑り込んだ。日本の王者が、生命の危機を乗り越えて、グランプリファイナルの舞台にたどり着きました。29日に行なわれたフィギュアスケートGPシリーズ・NHK杯。日本の羽生結弦氏はフリーの演技を行ない、SPの5位からひとつ順位を上げての4位となりました。

怪我による演技構成の変更。そこにジャンプ失敗が生じたことによる、演技中の構成再変更。さらにジャンプ失敗が重なったことによる変更やーめた。ライバルの低調な演技による入れ替わりなど、何やかんやいろいろが10分ほどの間にバタバタと起きる急展開。まさに薄氷を踏むような思いをしながら、バタバタの中での粘りがグランプリファイナルへと道をつなぎました。

ジャンプが跳べないというのは、怪我もあって仕方ない面ですが、傷をそれだけに留めることができた粘り。そこにはやはり、この一連の流れを乗り越えてきた強さというものが生きていたように思います。ジャンプ失敗で無用に混乱し、得点をロスすることがなかった精神力。スピンやステップでは高いレベルの演技をこなし、全体的に技術点の底上げを図ってきた日々の努力。

できることをちゃんとやった結果が、ギリギリでの滑り込みを生んだ。この大会で負けたことを本人が「実力です」と表現するのと同様に、ギリギリでグランプリファイナルに滑り込んだこともまた「実力」と言うべきもの。さすが五輪の金メダリスト。グランプリファイナルでは、怪我が回復した状態での「実力」で、粘った甲斐のある演技を見せてほしいものですね。

ということで、クッキリとガックリが激しく明暗分かれた日本勢の様子など、29日のNHK中継による「フィギュアスケートGPシリーズ NHK杯」からチェックしていきましょう。


◆羽生氏は殿の後継者にはならず!計算ができるところを示した!


ルールというのは毎年のようにチョコチョコ変更になるもの。今季もいくつのかのルールが変更となり、演技にも影響を与えています。演技開始までの時間短縮を図る「30秒ルール」。より多彩な表現を可能とした「ボーカル曲解禁」。このあたりは選手たちも上手く対応をしている部分です。

しかし、やはり慣れというのが必要な部分もあります。それはジャンプの回数制限、いわゆるザヤックルールと称される部分への変更。例えば今季は、コンボをつけ損ねて同じジャンプを二度跳んでしまった場合、二度目のほうを「+REP(繰り返しジャンプ)」として、基礎点を70%に減ずることになりました。

昨年までなら同様の失敗については「+SEQ」として、コンビネーション扱いとし、基礎点を80%に減じていました。一見すると10%ぶん損なようですが、「+REP」はコンビネーションジャンプとしてみなされないので、ほかでリカバーすれば総合的には十分に取り返せるようになっていますし、ヘンにリカバーしたことで丸ごとコンボを消される懸念も減ります。演技構成を落とす変更を強いるのではなく、リカバーする努力を促すという意味で、よい変更だと思います。もし殿の現役時代にこのルールがあれば、ひとつくらい世界のメダルが獲れていたのではないかと、わずかに無念でもありますが。

そして、忘れてしまいそうなのが2回転ジャンプの制限。これまでは自由に跳んでいた2回転のジャンプが、フリー演技では「各種類2回まで」と制限されたのです。何でもかんでもダブルトゥループをつけてきた選手は大いに苦労させられる変更。場合によっては「1回転を跳んだほうがトク」という歪な状況も生むルールですが、セカンドループの練習もさせるという意味で、将来を見据えたよい変更でしょう。ただ、長年染みついてきたものを変えるのは、なかなかに大変なわけで…。

↓女子シングルの村上佳菜子ちゃんは、「ダブルループ跳びすぎ」によりコンビネーションジャンプを丸ごとひとつロスする結果に!


うーん、勿体ない!

トゥループ跳びすぎならともかく、ループ跳びすぎで引っ掛かるとは!

レベルが高いやらかしだ!

川島隆太教授の脳を鍛える大人の計算ドリル6 [ 川島隆太 ]

価格:1,080円
(2014/11/30 11:36時点)
感想(2件)



考えてみてください。放送席にいる日本のやらかし将軍のことを。殿がもし、今季のルールで滑っていたら。そして、もし冒頭に置いた4回転トゥループが抜けて2回転になっていたら。そこから始まるパニックの連鎖を。テトリスの最終局面のように、もう隙間をキッチリ埋めるような知恵は働かなくなり、グッチャングッチャンになっていきそうじゃないですか。

リカバーしようとして、さらにやらかしを重ね、余計な動きが次々のジャンプを「丸ごとゼロ」にしていく。それでも本人は「上手いことやった感」の笑顔でキス&クライに向かい、得点を見てから「何かやっちゃったみたいだけど、何をやったかわからない」という顔でバックヤードに引き上げるのです。容易かつリアルに想像されて、怖いくらいです。脳内リカバーからのグッチャングッチャン、今季は新たな罠が増えているのです。

そんな中、今回グッチャングッチャンの危機に直面したのが羽生氏。羽生氏はまず演技冒頭の4回転サルコウが抜けて2回転となります。まぁこれはそこまで大きな影響ではありませんが、問題は次。4回転トゥループが抜けて3回転となったのです。羽生氏はセカンドジャンプに3回転トゥループをつける予定の箇所があり、このまま行けば同じ種類のジャンプの回数制限に引っ掛かってきます。

しかし、羽生氏は見事に脳内パズルをやり遂げた。グッチャングッチャンにならずに、その後さらに起こった失敗を踏まえながら、首尾よくパズルを完成させたのです。もし、そのひとつでも失敗していればグランプリファイナルはなかったというパズルを。技術の高さはもちろんですが、羽生氏を支える脳力の高さ、垣間見た想いです。

↓失敗をリカバーしようとしたがさらに失敗したのでリカバーを止めた!羽生氏が脳内で完成させた難問パズル!


<脳内パズルの動き>
4Sの予定が2Sになる

4Tの予定が3Tになる(コンボで3Tをつけている箇所があり、3Lz、3Aと合わせて3種類目の複数回ジャンプになる可能性あり。得点だけを考慮すればコンボのジャンプを2Tにするのが一番得だが…)

3Fを跳ぶ

3Lz+2Tを跳ぶ

3A+3Tを跳ぶ(ここで3Tのカブリは確定。3Aか3Lz、どちらかのジャンプを止めることが必要)

3Aから1Lo、3Sとつなぐ3連続ジャンプで最初の3Aが抜けて1回転になる(ここをワザと抜いて2Aにする手もあるにはあるが、普通に3Aからのコンボを跳んで最後の3Lzで処理するのが得点を考えても得。しかし、結果として抜けてしまったため3Aのカブリは消えた。ということで最後の3Lzを変更する必要もなくなり、もともとの演技構成で続行)

3Loを跳ぶ

3Lzを跳ぶ(変更を再変更して予定通りに跳ぶ。脳内パズル完成!)

失敗×失敗で上手く成功にしたな!

殿なら気持ちよく3A跳んで、最後のルッツも気持ちよく跳んで、6点くらいを消してるわ!

暗算の達人 [ アーサー・ベンジャミン ]

価格:1,620円
(2014/11/30 11:37時点)
感想(11件)



まぁ人がやっているのを見れば簡単ですが、これを本番中に、動きながらやるのは大変なもの。試しに応用問題として「もし冒頭の2つの4回転がどちらも抜けて、今回とは逆に3S、2Tとなってしまった」あるいは「4Tが抜けて2Tになってしまった」というシチュエーションを想像してみてください。これは4回転の難度を考えれば、十分にありがちなシチュエーションですが、羽生氏のような詰め込み演技構成では、このありがちな状況からパズドラみたいな玉突きが始まるのです。

4Tが2Tになった場合は「3A+3T」のセカンドジャンプは2回転になることが許されない緊張のジャンプになり、また、適当にどこかに2Tをつけることも許されなくなります。4Sが3Sになった場合は「3A+1Lo+3S」で3Sカブリが発生し、調整が必要になります。パッと頭で理解するのは、ノンビリとスマホをいじっている状態でも難しいでしょう。普段から「失敗時のリカバー手順」を準備し、そうした状況に備えているからこそ、本番でのパズルもロスなく完成させられるのです。失敗したこともリカバーしたことも「実力」。悪いなりにいい演技だったのではないでしょうか。

この演技で羽生氏は最終順位で4位となります。中国杯の2位と合わせてGPシリーズのポイントは22となり、何とか上位6人に残ることができました。ちなみに今大会で5位のアボットさんとの差は、SP・フリーのトータルでわずか0.15点。加点ひとつほどの差しかありませんでした。もし、この0.15点を失っていれば羽生氏はNHK杯5位となり、GPシリーズのポイントは20となっていました。

その場合は、同じポイント、同じ最高順位で並ぶアメリカのブラウンさんとの競り合いになったわけですが、総得点ではブラウンさんのほうが上となるため、羽生氏はグランプリファイナル出場権は獲れませんでした。まさにギリギリのギリギリの滑り込みでした。スケートだけに!

さて、金メダリストが苦しむ中、この大きなチャンスをつかんだのは日本の村上大介さん。金曜日のSPではNHKが地上波で映さなかったグループでの演技だった村上さんは、SPにつづく会心の演技。2度の4回転を余裕たっぷりに決めただけでなく、セカンドジャンプで2Tが2つカブッたところを冷静に把握し、「2Tをつける予定のコンビネーションジャンプをひとつ減らす」という脳内パズルもクリアー。訪れたチャンスをガッチリつかむ勝負強さで、歓喜のGPシリーズ初優勝を遂げました。

最終得点246.07点は、今季のGPシリーズで言えば町田樹(269.09点)、ハビエル・アンドウ・フェルナンデス(265.01点)、無良崇人(255.81点)、セルゲイ・ボロノフ(252.00点)に次ぐもの。これは全日本、世界選手権へ向けて、新たな強豪が誕生したと言ってもよいところ。わずか3枠を巡って雌雄を決する全日本の戦い、早くもヒリヒリしてきますね。羽生氏が普通に3枠からキックアウトされてもおかしくないくらい、激しい戦いとなりそうですね。

↓全日本の熾烈な戦いに新たなダイスケが颯爽と参戦!


勝負強いな!

日本中が見る日に勝つってのは、大したもの!

↓表彰台で男泣きのダイスケ!

世界選手権は誰が出ても、もはや不思議はない!

金メダリストと言えど、約束された切符はないな!

女子が世代交代に時間を要するぶんまで男子が引っ張る、男の時代!

ますます今後の戦いが楽しみです!

フィギュアスケート日本男子ファンブック Quadruple(2015)

価格:1,950円
(2014/11/30 11:40時点)
感想(0件)



ギリギリの中で勝ってこそ盛り上がるというもの!激しい戦い大歓迎です!