Engadget Fes: 将来のPepperはミスをする? トークセッション「Pepper新世界、描く未来が違う」 #egfes

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11月24日に開催されたEngadget Fes 秋葉原 2014 Winterから、トークセッション「Pepper新世界、描く未来が違う」の内容をお届けします。テーマはPepperによるサービス開発の行く末。すでにPepperを使って開発している三社の開発者とソフトバンクロボティクスの林 要氏が登壇しました。

 

まずは最近のPepper関連の動きから。ソフトバンク林氏によれば、すでに注文を受けた2000台のうち、200台ほどが出荷され「ぽつぽつ購入者に届き始めている」とのこと。最近では高齢の認知症患者向けに、施設にPepperを派遣してコミュニケーションを取る、といった使われ方も始まっており「新しい世界が広がっている」とアピールしました。

指輪型デバイス「Ring」を開発するログバーの神谷 亮平氏も、すでにPepperによるサービス開発を進めている1人。Ringは、指にはめてジェスチャーすることで、周辺の機器を無線操作できるようにするアイテムですが、これをPepperと連携させ、あらかじめ決めておいたジェスチャーでPepperに行動を指示できるシステムをデモしました。

神谷氏がRingをはめた手でジェスチャーすると、少しのタイムラグの後にPepperが手を挙げたり「神谷さん、会場のみなさん、こんにちは」としゃべる様子を実演。Ringとスマートフォンが通信し、そこからさらに壇上のWindowsサーバーを経由してPepperに命令を送るという普段とは少し異なる環境で行っており、「Windowsマシンのせい」(神谷氏)でレスポンスには間がありましたが、ジェスチャーでPepperが動く・しゃべる姿を目の当たりにした会場からは感嘆の声が上がっていました。

Ring自体はPepperに限らずさまざまな機器とつながるデバイスであり、神谷氏いわく「いろんなもののショートカットになるのを目指し」ているツール。将来的に各家庭に1台Pepperがいるような状況になった時、言葉で命令できるだけでなく、指を差すだけで指示できることも重要になるのではないか、と同氏は訴えます。

楽器・音響メーカーであるヤマハは、担当者の河合 良哉氏が、Pepperに歌を歌わせ踊らせるという、同社の ボカロデューサー を応用したシステムをデモ。Pepperの持つ画面に表示されるQRコードをスマートフォンで読み取ってWebにアクセスし、作った歌詞を入力した後、曲調を選択すれば自動で音楽を生成。それに合わせてPepperが歌い、同時に踊ります。

子供の喜びそうなサービスですが、実際に河合氏の子供も、事前にPepperの映像だけを見せても興味をもたなかったのに、実物を見せて歌わせてみると「Pepperから離れなくなった」とか。「Pepper+歌+踊り」のインパクトは強烈なものであると、開発者自ら実感しているようです。

ロボットベンチャーのユカイ工学 青木 俊介氏も登壇。最近世間で話題になりつつあるスマートハウスにおいて、大手ハウスメーカーが手がけている決してスマートとは言えないリビングルームのコントロールパネルの写真を示しました。

「UIとしてはかなりマズい状況。こんな家に住みたいと思う人はいないのではないか」と苦言を呈し、ユカイ工学が作っているコミュニケーションロボット「BOCCO」を通じて家電をコントロールできるようになれば、という目標を語りました。

同社は、「Pepperのマホウノツエ」と呼ばれるPepper装着用のステッキ型デバイスも開発しています。オープンソースの「IRKit」を用いて作ったもので、これをPepperの手に握らせ、独自開発したアプリとも連携することで、「Pepper、ライトつけて」としゃべれば「なるほどー。たしかに少し暗いですよね。ライトをつけます。ライトよ、光れー」とPepperがしゃべって杖を振りかざし、目の前のフロアライトのスイッチをオンするデモなどを行いました。

残念ながら「Pepperのマホウノツエ」を市販化する予定はないとのことですが、アプリについては公開するとしており、あとはIRKitさえ用意すれば誰でも家電操作が可能なPepperを実現できるようになるとのこと。

これらのデモを見たソフトバンクの林氏は、最近になってPepperに関する2つの大きなトピックがあると指摘。「フラグメントしているいろんなテクノロジーがPepperに集約されることで、Pepperに言っておけば何かできる(やってくれる)」という考え方に進んでいくことと、ITが高度化して無味乾燥なものになっていたがこれらの技術によって「Pepperがどーんと人間的になる」点を指摘しました。

人間的という言葉の裏には、全てを完璧にこなすのではなく、時々は失敗することもある、というような意味が含まれます。「たまに失敗することで、むしろファンができる」ことになるのではないかと林氏。「単に便利なものをめざすならスマホでいい。人とコミュニケーションして愛着がわくのがロボットで、その時には、失敗を含めたUIの完成度が大事になってくる」と話します。

ソフトウェアを開発する場合、仕様上必要な実装以外にも、安定動作には多数の例外処理を行わなければならないわけですが、林氏によれば「その例外処理が"かわいい"ところのエンジニアはぐんと評価が高まる」とコメントしました。

マホウノツエやRingのような性質のアイテムでは、Pepperに失敗してもらうのはメリットになりにくいと思われるものの、ユカイ工学の青木氏は、「今のWebサービスでもエラー画面をちょっと楽しくすることでユーザーに許してもらうみたいなアプローチがあるので、そういう方向がPepperではもっと大事になるのかな」と、前向きに捉えます。「その指示は今すべきじゃない」「こんな歌詞じゃ歌えない」といったワガママがPepperから発動される未来も、もしかしたらあるのかもしれません。