11月特集 フィギュアスケート新時代 (5)

 ジュニアの日本女王を決定する全日本ジュニア選手権が11月22〜24日、新潟アサヒアレックス・アイスアリーナで開かれた。計11人が「3回転+3回転」の連続ジャンプを成功させるというシニア顔負けの大会となり、13歳の樋口新葉(ひぐち・わかば)が187.95点の高得点で初優勝を遂げた。

 樋口は昨年の全日本ノービス選手権(※)女王で、力強いジャンプとスピード感あふれる滑りが持ち味。東京と横浜を拠点に練習する中学2年生だ。ショートは「3回転フリップ+3回転トウループ」を成功させると勢いにのり、キレ味の良い演技で観客を魅了。63.98点の自己ベストで首位の折り返しとなった。
※ノービスクラス(ジュニアの下の年齢)の全国大会。参加資格は、ノービスAが11〜12歳、バッジテスト男子4級以上、女子6級以上。年齢はスケートシーズンが始まる7月1日の前日までの満年齢で区分

「練習よりもずっと良い演技ができた。自分に集中出来ていたのが良かったです」と笑顔。フリーは「3回転ルッツ+3回転トーループ」「ダブルアクセル+3回転トーループ」などを含む安定した演技で、ダントツの首位をキープ。演技を終えた瞬間、思わずガッツポーズを2度繰り出し、点数を見ると嬉し涙を浮かべた。

「ショートもフリーも合わせてノーミスで演技したことが無かったので、込み上げるものがありました」

 夏場は、腹筋、側筋、背筋などの筋肉トレーニングで体幹を鍛え、「体幹ができてからジャンプも滑りも安定しました」という。昨季までよりも筋肉質になった身体で、猛スピードの助走から、女子とは思えないほどパワフルなジャンプをポンポンと決める。ジャンプを決める度に観客からも歓声が上がった。

 次なる試合は、12月にスペインで行われるグランプリ・ジュニア・ファイナルだ。「ロシアの選手は、気持ちが強いところが私と違う。この優勝を自信にもっと自分に集中して演技したい」と誓った。

 一方、ショート4位からの逆転2位に輝いたのは、14歳の坂本花織だ。ショート、フリーともに「3回転フリップ+3回転トーループ」の大技を成功させ、総合168.82点をマークした。

 ショートの『黒い瞳』では、テンポ良い曲に乗って軽やかな舞いを披露し、ジャンプもミスがなく、57.35点で4位発進。「先生から『目ヂカラを意識して』と言われていたので、ジャッジを魅了できるように演技しました。まずはノーミスで出来たことが嬉しい」という。フリーでは「ロミオとジュリエット」で、ジャンプを次々と正確に決めて3位、総合2位を引き寄せた。

「ショートもフリーもミスなくまとめることが出来て嬉しいです。今は、手を上げて3回転を跳ぶというジャンプを練習し始めているので、全日本選手権までの1か月で練習していきたい」と話し、口元を引き締めた。

 また12月のジュニア・グランプリ・ファイナルの出場が確定しており、「ジュニアの2トップ」と目されていた永井優香は、ショート2位につけながらもフリーではミスがあり、168.74点で、悔しさと嬉しさの入り交じる3位となった。

 ショートでは、ダイナミックな「3回転+3回転」を成功させ、61.49点での2位。ここ2、3年は身長が一気に伸びたためジャンプの修正に追われていたが、成長が安定した今季、ジュニアのトップグループへと躍進した。身長160センチを越えるダイナミックな演技と、ジャンプの高さが魅力の15歳。ショートは『エデンの東』を情感たっぷりに舞い、フリーは『ロンドカプリチョーソ』を力強く奏でた。

「3位は嬉しいけれど、最高の演技ではないので複雑な気持ち。悔しさはファイナルと全日本選手権にぶつけます」と話した。

 大会の台風の目となったのは、13歳の本田真凜(ほんだ・まりん)全日本ノービス2位となり、今大会に特別出場。ショートは愛らしい演技で53.09点をマークして7位発進。さらにフリーは「ダブルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループ」「3回転サルコウ+3回転トーループ」などを成功させて2位。会場の全員からスタンディングオーベーションを受け、総合点167.92点で4位となった。

「素晴らしい高得点で驚きました。全然緊張せずに、ショートもフリーも楽しんで演技できました」と満面の笑みを見せる。5人兄弟の3番目で、兄の太一も有望なジュニアスケーター、妹の望結(みゆ)は芸能界で活躍し、さらに下の妹もスケートを習い始めている。この日は人気もさることながら、実力も本物であることを証明して見せた。

「兄妹が一番のライバル。妹たちには、姉として良い形で大きな大会での活躍を見せる事が出来たし、ケガでこの試合に出られなかった兄の励みになればいいな。目標は18年の平昌五輪での金メダル。出られれば16歳なので、チャンスはあると思う」と力強く語った。

 一方、もう一人のノービス選手も活躍した。ノービス女王の12歳、中学1年生の青木祐奈(あおき・ゆな)が、ショートで60.37点をマークし3位発進となったのだ。フリーは「3回転ルッツ+3回転ループ」のループが回転不足になるなど小さなミスが重なり、総合163.68点で5位となった。

 羽生結弦を中学生時代に指導していた都築章一郎コーチに習っており、基礎に忠実なスケートをたたき込まれてきた。「3回転ルッツ+3回転ループ」という「3回転+3回転」の連続ジャンプのなかでも最も高得点の組み合わせを跳ぶことが出来て、ジャンプ能力はピカイチだ。

「憧れは羽生選手のジャンプ。同じ先生に習っているので跳び方も少し似ている部分があるので、イメージトレーニングしています。夏休みにはトリプルアクセルと4回転サルコウを練習し、アクセルが良い感じになってきました」という。荒川静香のトリノ五輪での活躍を見て5歳からスケートを始めて、ここ数年で大成長を遂げた。

「このままの勢いで成長し続けて、18年の平昌五輪では金メダルを狙いたい」と意欲を燃やした。

 6位になった松田悠良(まつだ・ゆら/16歳)は表現力と美しさで、他と一線を画す演技を見せた。今年4月、浅田真央と同じ中京大中京高校に入学し、コーチを長久保祐から山田満知子へ変更。氷に吸い付くようなしっとりとした滑りが新たな持ち味として加わり、色気と美しさのある選手へと成長しつつある。ショートは美しいピアノ曲を、艶やかに演じて5位。フリーはノリの良いボーカル曲で軽快なステップを踏み、見事に2曲を演じ分けた。

「中学まではジャンプのフォームなどをたくさん教えていただいて、とても感謝しています。今は振付の樋口美穂子先生がいつも踊って下さるので、それを見ながら一生懸命演技力を吸収しています。表現面が変わってきたと感じています」といい、今後が楽しみな選手へと成長した。

 昨季同大会で2位に輝いた15歳の三原舞依は、「3回転+3回転」の後半が回転不足となるミスがあり、ショート6位、総合7位となった。フットワークのキレ味は昨年よりも成長し、ステップを見せ場にした大人びた表現力が冴えた。「ステップはレベル4になるように振付をしてもらい滑り込んできました。夏にスケーティングを重点的にやってきた成果だと思います」とほほえんだ。

 終わってみれば、11人が「3回転+3回転」を成功させ、得点もショートで60点超えが3人、総合160点超えが5人という内容。シニアのグランプリシリーズと同レベル、いや、大会によっては優勝さえ出来るというハイレベルな内容だった。

 特筆すべきは、ジュニアの選手でありながら、ダイナミックなジャンプを跳ぶ選手が揃っていること。一般的に、ジュニア時代に小柄な身体を生かして小さいジャンプを跳んでいると、成長するにつれてスランプを迎える。しかし樋口、永井の2人は、スピードと筋力を上手に使ったダイナミックなジャンプを習得しており、シニアでも十分に通用する。坂本、本田、青木、松田らも、体格の割には高さのあるジャンプを跳んでおり将来有望だ。また本田、青木の2人は、18年平昌五輪の時に、スケート年齢換算で15歳となり、ギリギリで出場年齢を満たすというラッキーも持ち合わせている。

 本来、全日本ジュニア選手権は18歳まで出場できるが、1〜7位までを15歳以下が占めた。浅田真央、安藤美姫へと続く才児の息吹を感じさせる、まさに世代交代の瞬間を迎えた大会となった。

 また上位選手の中から、樋口、坂口、永井、松田、三原、新田谷凜(にたや・りん)の6人がシニアの全日本選手権(12月26〜29日、長野)への出場権を獲得。全日本選手権では、シニアの選手以上に、ジュニア組の活躍から目が離せない。

野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie