アベノミクスの次なるステージとは

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 急転直下の如く決まった衆議院の解散総選挙。11月17日に7-9月期のGDP成長率が年率換算でマイナス1.6%となったことが判明し、株式相場は“GDPショック”によって一時急落したものの、すぐに反発に向かうなど好調をキープしている。それだけに、総選挙がどう相場に影響を与えるのか気になるところだ。

 11月上旬には一部で解散総選挙の可能性が報じられていたことを考えると、総選挙が行われること自体は株式相場にとってさほど影響を与えていないように見える。今回の総選挙を2005年8月に当時の小泉政権が行った「郵政の民営化に関して国民に信を問う選挙」、いわゆる“郵政解散”になぞらえる向きもあるが、当時は自民党が衆議院の議席の過半数を単独で確保できていなかったうえ、自民党内からも数多くの造反者が出るなど、現在とは全く情勢が異なる。

 「郵政解散」時は、自民党が圧勝したことによって小泉首相の持論である構造改革が急速に進むとの見方が広まり、それが外国人投資家の日本株買いを呼んだ。一方、今回の選挙の争点は、消費税の再増税を含めた「アベノミクスの継続」だという。

今後の外国人投資家の動向は

 もっとも、肝心のアベノミクスの「三本目の矢」である成長戦略は、これまで全くと言っていいほど進んでいないのが現状。外国人投資家も、選挙で自民党が勝ったからといって、すぐに成長戦略が加速するとは考えないだろう。今回は自民党の勝利が確実視されていることもあり、郵政解散の時と同じように選挙の結果によって外国人投資家が大挙して日本市場に押し寄せるとは考えにくい。

「そもそも、外国人投資家が見ている日本経済というのはかなり断片的で、日本国民のような生活実感をともなっていません。今回のGDPのマイナス成長によって、国内では日本経済の先行きに対してかなり不透明感が浮上していますが、外国人投資家の間ではアベノミクスによって円安が進み、日本企業の収益は上向くという認識がまだまだ残っています。もし、選挙で自民党が議席を減らすなど国内でアベノミクスの信認が薄れていることに外交人投資家が気付けば、彼らが売りに回る可能性はあります」(金融アナリスト)

 今回の総選挙で自民党が議席を減らした場合、外国人投資家のアベノミクスに対する信認が薄れ、特にアベノミクスの第三の矢である「成長戦略」を材料に買われてきた銘柄は売られることを覚悟した方がよさそうだ。

まずはリーマンショック前の高値が第一目標か

 ただ、外国人投資家が一方的に売りに回るかといえば、その可能性は低い。というのも、外国人投資家が日本株買いの材料にしているのは成長戦略ではないからである。

 東証発表の「投資主体別売買動向」をみると、11月第1週に外国人投資家は日本株を約7700億円も買い越し、週間ベースでは今年最大の買い越し額を記録した。この週(あるいは直前)にいったい何があったか。「GPIFの運用比率見直し発表」と、「日銀の追加緩和」である。つまり、外国人投資家がこの2つを材料に日本株を買っているということだ。いずれも、総選挙の動向には関係なく継続する材料であるため、前出の金融アナリストによれば、「この2つに絡む外国人投資家の買いは選挙後も継続する可能性が高い」とのことだ。

 2005年8月の郵政解散の際、日経平均株価は1万2000円割れの水準から約8カ月間で1万7500円超まで5割程度上昇した。もし、現在の株価水準から同じ上昇となれば、日経平均は2万5000円を超える計算になるが、これはさすがに皮算用。まずはリーマンショック前の高値1万8300円が第一目標、数字的に大きな節目となる2万円は、その先の目標となりそうだ。

 万一、自民・公明両党で過半数を割り込むなど、政局が深刻化した場合このシナリオは大きく崩れるが、現状ではその心配は杞憂といったところか。とはいえ、相場が高値圏にあることは確かなので、“GDPショック”のような急落に対する備えだけはしておく必要があるだろう。

新井奈央(あらいなお)マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株-1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。

(Photo by kenn 剣 via flickr)