スージー・ウエイリー、03年に撮影(Photo by Elsa/Getty Images)

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 男子の米ツアーや米ゴルフ界を一括りに「USPGA」と記している日本の印刷物を目にすることがある。「アメリカのPGAプロはすごい」と言う人も多い。だが、これらは「PGA」を間違えて使っていることになる。
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 米ゴルフ界で単に「PGA」と言ったら、それは「PGAオブ・アメリカ」を指す。石川遼や松山英樹が挑んでいる米ツアーを指すときは、「PGAツアー」という具合に必ず後ろに「ツアー」を付けて、「PGAオブ・アメリカ」とは明確に区別して使う。
 PGAツアーとPGAオブ・アメリカ。どっちが何で、どう違うのか。かいつまんで説明すると、ツアープロの統括団体がPGAツアー、全米各地のゴルフ場で働くクラブプロの統括団体がPGAオブ・アメリカだ。
 そして、「アメリカのPGAプロはすごい」というフレーズは、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンといった米ツアー選手がすごいという意味ではなく、PGAオブ・アメリカのクラブプロがすごいという意味になる。
 だが、それはそれで、その意味は正しい。そう、「PGAオブ・アメリカはすごい」。そう唸らされる出来事が起こり続けている。
 先日、PGAオブ・アメリカを率いてきたテッド・ビショップ会長が解雇される騒動が起こった。ツイッターでライダーカップのキャプテン批判をしていたイアン・ポールターのことを「女子学生みたいにピーチクパーチク……」と反撃したビショップ氏のツイートが、女性蔑視、女性差別と世間から批判され、瞬く間に会長職を解かれる運びになった。
 辞職ではなく解雇。それが厳しすぎるという同情意見も出ていたが、処分の妥当性はさておき、「すごい」と思ったのは、PGAオブ・アメリカのイメージを失墜させる騒動が起こったら、イメージ回復のための次の手に即座に出る彼らの行動力だ。
 次の手――企業で言えば役員のような要職に当たるPGAオフィサーに史上初の女性を選出したのだ。ビジネス界からエグゼクティブ・ウーマンを手っ取り早く連れてきて据えるのではなく、コネチカット州のゴルフ場でコツコツ働いてきた女性クラブプロをボードメンバーによる投票で選び出したのだから、これはPGAオブ・アメリカのメンバーたちの総意の反映。そして何より、対外的にウケが良く、イメージ回復には最善の策だ。
 初の女性オフィサーに選ばれたのはスージー・ウエイリー、48歳。どこかで聞いたことがある名前だと思った方もいるだろう。10数年前、ミシェル・ウィやアニカ・ソレンスタムが推薦出場や招待出場で男子の大会に挑んだ時期があったが、ウエイリーはコネチカット州の男子のクラブプロの大会で優勝したことで2003年のハートフォードオープン出場権を手に入れた。男子の米ツアー大会に女性が自力出場したのはベイブ・ザハリアス以来、58年ぶりの快挙として当時のウエイリーは大きな注目を集めた。
 地道なクラブプロ業務に従事しつつ、大胆な挑戦もする。家庭では主婦であり、2人の子供の母親でもある。あの当時、ウエイリーの自宅を取材で訪れたことがあるが、とても気さくで優しい人柄。そんな彼女がPGAオブ・アメリカでもゴルフ場でも人望が厚いことは想像に難くない。これから彼女は2年間のオフィサー経験を積んだ後、さらに承認されれば、2年間の副会長職、2年間の会長職、名誉会長職へと進んでいく。
 日本のゴルフ界にも存続のためにはドラスティックな改革が必要と言われて久しい。だが、斬新な改革はいまなお見られない。だからこそ、PGAオブ・アメリカの今回の対応を大いに参考にしてほしい。2016年に創設100周年を迎えるPGAオブ・アメリカは、長い歴史を塗り替える女性オフィサー起用という大改革を、前会長の失言騒動から1か月も経たないうちにやってのけた。女性起用そのものもドラスティックではあるが、PGAオブ・アメリカの決断力、行動力、実行力を総称して「ドラスティック」と呼ぶのであろう。そのドラスティック性を是非とも範としてほしい。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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