『モンスターウーマン 「性」に翻弄される女たち』(大場真代/宝島社)

写真拡大

 女性のあいだで美容整形が一般化しつつある昨今。いまどき二重瞼の手術などは定番で、目頭切開に豊胸、リフトアップ、脂肪吸引......と多種多様な手術がおこなわれている。最近では元AKB48の板野友美の胸が「異常に膨らんでいる」ことが大きな話題となっているが、その成長ぶりはもはや人間の域を超えており、本人も疑惑になることは百も承知だと感じさせる。

 美人になりたい。女っぷりをあげたい。若々しくありたい──こうした女性の欲望は、いまに始まった話ではない。だからこそ、女性が望む美容整形の内容は見た目にわかるものばかりだった。だが、最近では、パッと見ただけではわからない"ある部位"を整形する女性が増えているのだという。それはなんと"性器"の整形である。

「セックスに翻弄され、闇を抱えている女性たち」の実態に迫ったルポルタージュ『モンスターウーマン 「性」に翻弄される女たち』(大場真代/宝島社)によると、増加中の性器美容整形にはいくつか種類がある。例をあげると、「小陰唇を縮小」する手術に、「クリトリスの包茎を治す」手術、「膣のゆるみを治す」「処女膜を再生する」「性器の黒ずみを除去する」手術などだ。

「どれも入院せず日帰り、それもわずか1時間程度で手術が可能」という手軽さで、値段も「だいたい10〜20万円ほど」だという性器美容整形。なかでも人気があるというのは、「Gスポットにヒアルロン酸を注入する施術」だという。

 ヒアルロン酸といえば、顔に注入することでほうれい線を目立たなくさせたり、鼻に入れて高くしたりといった方法がよく知られている。「なぜ見えないGスポットにヒアルロン酸を?」「そもそもGスポットって実在するの?」といろいろ疑問に思うが、この手術では、ヒアルロン酸を入れることでGスポットを膨張させ、膣道を狭くするのが狙いなのだとか。

 そして、もうひとつ人気なのが「小陰唇縮小術」。これは「いわゆるビラビラを小さくする」手術で、レーザーメスを使い、小陰唇の余分な箇所や黒ずみを切除。そうして大きさや形を整えるのだという。

 膣を狭め、見た目もソソる形に。......こうして見ると「女性の肉食化はここまで進んだのか」と思うかもしれない。だが、女性が性器整形を選択する背景には、悲しいトラウマがある。

 たとえば、性器の黒ずみを除去する手術を受けた33歳の女性は、彼氏に「前の子はこんなに黒くなかった」「お前ヤリマンなんだね」と言われたことがきっかけだった。彼氏とは早々に別れたというが、彼女にとってこの言葉は心に引っかかり続ける。そして、ネットにアップされているAVを見ては、AV女優と自分の性器の色を比較したり、男性と付き合うたびに「本当はこの人も私のアソコを見て『汚い』とか『本当はヤリマンなんだ』とか思ってるんじゃないか」と不安に駆られたりするように。当然、セックスに集中できるはずもない。

 また、もともと肌が色黒だという29歳女性の場合は、いつしか美白信仰が肌から性器にまで及ぶように。性器に美白クリームを使用することはもちろん、「下着の摩擦がよくない」と聞いてからはずっとノーパンで過ごし、化学的なナプキンではなくオーガニックの布ナプキンを使用。さらには、性器に重曹を叩き込んだり、オキシドールやイソジンを塗り込んだりと、涙ぐましいほどの努力を続けてきた。だが、性器の色は白くなるどころか「やればやるほど黒く汚くなっていく」気がしたという。

 性器の黒ずみ問題だけではない。前述したGスポットへのヒアルロン酸注入だって、「出産後に膣がゆるくなってしまった人」や「出産時の会陰切開で雑に縫われてしまった人」なども多い。子どもを産んで、夫から「ゆるくなった」と言われた女性や、ゆるいと思われているのでは?とひとり悩む女性たちだ。この現実から見え隠れするのは、女性たちの肉食化などではなく、むしろ「男性から愛されないのでは」という不安感の強さのほうだろう。

 こうした不安は、「女子力」という言葉からも伺える。女子力とは、「見た目もキレイで、中身も良い子で、たくさんの男性から言い寄られて、その中からよりどりみどり、一番条件のいい男性を選べる」こと。そんな女は、はっきり言って妄想の産物に過ぎない。しかし、「結婚=幸せ」という価値観が根強くこびりついている女たちは、「女子力向上」を謳うメディアの情報を実践し、メイクやダイエットで見た目をみがき、習い事で内面をみがき、「最後の武器」としてセックスをみがこうと躍起になる。

 だが、世間に氾濫する女子向けセックスマニュアルが書く「愛されるセックス」は、著者が指摘するように「本当にやらなければならないことが多すぎる」。たとえば、「an・an」(マガジンハウス)2014年8月6日号に掲載された恒例のセックス特集では、「命懸けます!イラマチオ」というハードな見出しが躍り、唾液を出せだの奥歯が当たらないようにしろだのと推奨。しかも、女性の場合は、テクニックを身につければいいという単純な話ではなく、「受け身になりすぎてもいけないし、積極的になりすぎてもいけない」という掟つき。イマラチオまでしておいて一方で恥じらえとは、どれだけ演技力が必要なんだよと言いたくもなる。

 本書ではほかにも、メディアが流布する"女磨き"としてのセックス情報に乗せられ、「精子を飲むと肌がキレイになる」という科学的根拠もない迷信を信じ「3回に1回くらいの割合で精子を飲む」女性なども登場。「メディアの情報を鵜呑みにする女が悪い」と非難するのは簡単ではあるが、それでは女性が抱える性の悩みの根深さは解消されない。著者も書いているように、「その悩みはバイアグラを飲めば解決、という単純なものではない」のだ。

 女が性をオープンに語れる時代になったとはいうものの、結局、ベースにあるのは男性本位のセックス観でしかない。問題の本質は、そこにあるのではないだろうか。
(水井多賀子)