あの頃の僕らはエヴァンゲリオンに狂っていた。庵野秀明が90年代の不安と、ガイナックスの歴史を語る『スキゾ・エヴァンゲリオン』『パラノ・エヴァンゲリオン』、Kindleでついに復刻です。

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庵野秀明のインタビュー集『スキゾ・エヴァンゲリオン』、『パラノ・エヴァンゲリオン』が、AmazonKindleでついに発売されました。

1996年に『クイックジャパン』でインタビューしたものが掲載され、97年に発売された本です。
ちょうど、『シト新生』(97年3月)『Air/まごころを、君に』(97年7月)が上映される前の話。

当時は、めちゃくちゃたくさんの「エヴァ分析本」が出ました。
死海文書を読み解く、ロンギヌスの槍の意味とは、なぜ軍艦の名前なのか、村上龍作品との関係は、カバラは、あれやこれや。
これらに、『スキゾ』『パラノ』は冷水をぶっかけました。

庵野秀明「そのまま理解しちゃっているんですね。コンニャク問答にはまっていって、僕がそう思ってないところまで深読みして、こうに違いないとか断定している人がいる。そうじゃないのにって僕は思ってるんですがね(笑)。どんどん作品がひとり歩きしていて、その感じが嫌だったんですね」

『スキゾ』『パラノ』は、エヴァファンなら持っていて当然、みたいな本でした。あとフィルムブック。
理由は、2つ。
一つはアニメファンの枠を超えて、文化的に分析され広がった足跡だから。
もう一つは、庵野秀明の解体本であり、読者が自分を押さえつける拘束具だったから。

これを読めば、エヴァの謎がわかるかもしれない!と当時のぼくは思って買いました。
しかし書かれていたのは「ないよ」「世間と自分が客観できてないでしょ」という庵野の言葉。
これを読んでからの劇場版。ぼくは「でもこんなに苦しい」と、エヴァという偶像にすがりつき、さらに自己嫌悪。今でもな。

話の切り出しが、大泉実成のオウム真理教の話。
世の中みんな不安でモヤモヤしていた。虚構より現実のほうが刺激的だった時代。
エヴァ終了後の話です。

庵野「ガイナックスの屋上の辺に立って、実際に飛び込めるかどうか試してみた。死にたい気分じゃなくって、本当に死にたいのか、それを試した。その時は死ぬのが怖くて痛そうだってことで、物理的な苦痛から退いたんです。その後、オイオイ一人で泣いて寝たんです」

『スキゾ』は庵野秀明が自分をさらけ出すパート。
当時もてはやされていた宮崎駿作品を、尊敬しつつも作品は嫌いだと言い放ちます。ラピュタ、嫌いなんだって。高畑勲は怖いらしい。
90年代日本全体のあいまいさ。それがいやで作った自分の心の壁、ATフィールド。
パソ通で見つけたファンの感想に失望したこと。人間への興味のなさ。

『パラノ』は庵野秀明の人生、ガイナックスの生い立ちと、エヴァンゲリオンについて語るパート。
ウルトラマンやヤマトで目覚め、ダイコンフィルムを作り、『オネアミスの翼(大名作!)』で商業的にこけた。
その後、大ヒットをガイナックスはつかむ。

庵野「当たるアニメなんてないですよ。当たったアニメがあるだけです。勝つは偶然、負けるは必然という言葉の通りだと思います」「自分自身には何もないので、無意識に社会を反映できるというのがあるかも知れない」

インタビューのほかに、「庵野秀明”欠席裁判”座談会」も収録されています。
新劇場版の監督鶴巻和哉・摩砂雪、キャラデザ貞本義行、広報佐藤裕紀、スタチャプロデューサー大月俊倫。
周囲から見た庵野秀明像がわかります。

鶴巻「庵野さんとか、もう、ドカッとロッカーを蹴りつけながら、怒鳴り散らしてましたね。怒ると、もう手が付けられないんですよね。誰も手をつけないといか」
佐藤「あんなの手つけたらねえ、当時はロッカー壊しちゃったからね(笑)」
摩砂雪「相手しちゃダメダメ」

あれからもう20年近く。
新劇場版で盛り上がり、コンビニでは笑顔のシンジくんたちがコラボをやっています。
この本を含め、あらゆる雑誌がエヴァを取り上げ、時代がアニメを受け入れ始めたから、できるようになったこと。アニメなんて見ていなかった人が、急にエヴァを見始めたのが、懐かしい。
狂ったようにエヴァを見ていた人への叱責。何もかも脱ぎ捨ててサービスサービスぅした庵野秀明の鬱。

庵野「あの作品を見た感想というのが、その人の本質的な部分なんですよ。その人が持っているいちばん強い部分が『エヴァ』の評価で出てくる。カッコよさだけが、っていう人は自分がそういう人間だってことなんです」

今新劇場版がある時代だからこそ、オススメです。

『スキゾ・エヴァンゲリオン』
『パラノ・エヴァンゲリオン』

(たまごまご)