閉塞感漂う外食業界に切り込む!(画像はコロワイドのホームページ)

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居酒屋「甘太郎」「北海道」などを展開するコロワイドが回転ずし「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトホールディングス(HD)を買収する。2014年10月27日発表した。

両社の連結売上高を合算すると約2400億円と、外食業界4位に浮上する。居酒屋市場が縮小する中、レストラン事業を拡大して生き残りを図る。

居酒屋からレストラン重視へ

コロワイドは株主優待が充実した企業として、個人投資家の間では有名だが、一般にはあまり知られていない。社名は勇気(Courage)、愛(Love)、知恵(Wisdom)、決断(Decision)からとった造語だ。もともとは神奈川県逗子市の個人経営の飲食店で、1994年、現社名に変更した。

1990年代までは居酒屋が中心だったが、2000年代以降はレストランを積極的に展開。比較的小規模な企業の買収を重ね、2012年に「牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」などを展開するレックス・ホールディングス(現レインズインターナショナル)を買収し、業界にその名をとどろかせた。さらにカッパHDが加わると、売上高はワタミや吉野家HDを上回り、牛丼「すき家」を運営するゼンショーHD、すかいらーく、日本マクドナルドHDに次ぐ規模になる。

コロワイドの戦略の背景にあるのが居酒屋の先細りだ。市場規模で10倍以上大きいレストラン業態の拡大を目指す方針を掲げ、今回の買収で、目標としてきた売上高比率で「レストラン業態6割以上」を達成。焼き肉「牛角」など肉料理の比重が高かったが、回転ずしという魚中心の新たな業態を手に入れることで「食材比率が適切なバランスになり、一層の経営基盤の安定化に資する」と胸を張る。

居酒屋は市場が3割縮小

居酒屋はそんなにひどい状況なのか?数字を見ると、確かに厳しい。食の安全・安心財団によると、「居酒屋・ビヤホール」の2013年の市場規模は1兆96億円と、ピークだった1992年から約3割縮小しているのだ。

バブル崩壊による景気低迷に加え、若者のアルコール離れが響いたというのが理由と言う。また、近年は日高屋や餃子の王将など、料理もアルコールも手軽に楽しめる中華店が台頭。吉野家は手ごろな価格でアルコールとつまみを提供する「吉呑み」を展開して「ちょい飲み」需要を取り込む。スーパーやコンビニエンスストアも、総菜を充実させて「家飲み」需要の確保に躍起−―といった具合だ。

一方、「食」が主体の飲食店の市場規模は12兆8000億円で、1990年代以降ほぼ横ばい。人口減少社会に入り成長市場とはいえないが、居酒屋に比べれば、まだ伸びる余地はある。

コロワイドの野望は、国内だけにとどまらない。今後5年間で、東南アジアを中心に「牛角」「温野菜」など約450店舗を出店する計画だ。国内市場は行き詰まっても、海外に目を向ければ成長の可能性は広がる。日本食や日本式サービスは、海外でも人気が高い。日本よりはるかに成長率が高い新興国需要を取り込みたい考えだ。

ただ、カッパHDは「スシロー」「くら寿司」などとの競争激化に苦しみ、2014年2月期まで2期連続で純損失を計上している。まずはカッパの業績を回復させ、足もとを固めることができるかが問われそうだ。