「勝ちに行く」の言葉通り、日本を勝利に導いたアギーレ監督。アジアカップ連覇に向けて、あとはしっかりディテールを突き詰めたい。 (C) SOCCER DIGEST

写真拡大 (全2枚)

 試合前に配られたメンバー表を見た時、頭の中にすり込まれていた「日本対オーストラリア」のイメージと異なる事実が、そこにはあった。先発11人の平均身長は、日本が179.3センチでオーストラリアが178.6センチ。「高さを活かす」イメージが強かったライバル国を、意外にも日本が上回っていたのだ。
 
 そしてキックオフ後にピッチ上で繰り広げられたサッカーも、想像していたものとは異なるものだった。ショートパスをつないで支配率を高めるオーストラリアと、ボールを奪ってからシンプルに前線へ放り込んでいく日本。2006年のドイツ・ワールドカップで対戦して以降、ワールドカップ最終予選やアジアカップ本大会で激闘を繰り広げてきた両国だが、こんな試合の入り方は記憶にない。
 
 もっとも、ハビエル・アギーレ監督はこうした展開になることは織り込み済みだったという表情で、試合後にこう振り返っている。
「前半は相手がかなり強いプレッシャーを掛けてきたので、あまりつなぐことができなかった。しかし我々は、それが90分間続かないと予測してプレーし、実際にそのとおりになった」
 
 この試合のハイライトは、前半の35分過ぎ。ベンチ前に出たアギーレ監督が、ピッチ上の選手たちにシステム変更を指示した場面だ。4-3-3の左インサイドハーフに入っていた遠藤保仁を下げて長谷部誠との2ボランチにし、右インサイドハーフの香川真司をトップ下に上げた4-2-3-1へ。
 
 序盤、オーストラリアの4-3-3と対峙した日本は、相手のアンカーを務めたジェディナクに圧力を掛けられずにポゼッションを許し、長谷部の両脇に広がるスペースを何度も突かれて、「快適にプレーできていなかった」(アギーレ監督)。
 
 このシステム変更によって、日本が劇的に良くなったとは思わない。だが、相手の陣形に対してすべての局面でマッチアップするようになったことで、守備が“ハマる”ようになり、流れが次第に日本へ傾いたのは確かだ。
 
 オーストラリアが積極的にプレスを掛けてきた序盤の時間帯は、マイボールにしてもシンプルに縦へ蹴って失点のリスクを抑え、システム変更後にリズムを掴んだら日本らしい連動性ある攻撃を増やしていく。
 
 前日会見でアギーレ監督は「明日の試合は勝ちに行く。テストではない」と語っていたが、その言葉どおり、ゲームプランに沿って勝負に徹した采配を振るった印象で、「リアリスト」の面目躍如といったところだろう。
 
 最後に“天敵”ケイヒルに1点を叩き込まれたのは余計だったが(本大会でもし対戦することになれば、日本はこの4番の姿にまた怯えることになる……)、ホスト国に勝って来年1月のアジアカップに臨める意味は大きい。
 もっとも、敵将のポステゴグルー監督が、会見で何度も「ディテール」という言葉を使って敗戦を悔やんでいたが、日本もまだまだ細部を詰め切れていないのが現状だ。アジアカップでは、この2試合のスタメンが中心になるはずだが、中盤3枚の最適な組み合わせはいまだ見出せていない。
 
 特に香川の能力が攻撃面であまり活かされていないのが気掛かりで、本大会では主導権を握る試合が多くなることが予想される以上、そのあたりを12月末からの直前合宿でどこまで修正できるかが、連覇へのひとつの鍵と言えそうだ。
 
 アジアカップがワールドカップのわずか7か月後に開催されるのは、前回に続いてこれが2回目。4年前のカタール大会も優勝したとはいえ、開幕時点では戦術面でのベースが完成しておらず、戦いながらメンバーを入れ替え、僅差の戦いを制して頂点に立っている。
 
 今大会も厳しい戦いになるのは間違いないが、経験豊富なメンバーが指揮官の求める勝負に徹する姿勢や、戦況に応じた柔軟性をピッチ上で示せているため、大崩れはしないはず。
 
 アジアにおける日本の立ち位置を考えれば、真価はベスト4以降の戦いでこそ問われる。そこを勝ち抜くためのプラスアルファを、残りの時間のなかで手に入れたいところだ。
 
取材・文:谷沢直也(週刊サッカーダイジェスト編集長)