バレーボール国内トップリーグである2014/15V・プレミアリーグが11月15日に開幕。3連覇を狙う久光製薬が、木村沙織の復帰した東レをフルセットで破るなど熱戦が繰り広げられた。今季の見どころについて、元全日本代表、杉山祥子さんにお話をうかがった。

 一番の注目チームはやはり久光製薬ですね。(新鍋理沙・石井優希・長岡望悠など)あれだけ全日本の選手がそろっているという意味で、個々の力が飛び抜けていますし、昨季はリーグ優勝したあとに参加したアジアクラブ選手権でも優勝していますよね。そういう意味で、チームとしての経験値も高い。今季も必ず優勝争いに絡んでくる一番手となるでしょう。

 個人的には、ミドルブロッカーの岩坂名奈に期待しています。全日本の戦術が変わって、ミドルブロッカーというポジションにこだわらない選手選考になったため、今年度は全日本に呼ばれていません。その悔しさをどれだけプレイで表現できるか。やはりあれだけの長身(187cm)選手ですから、なんとか成長してほしいと思っています。

 久光の長身選手と言えば、セッターの狩野舞子にも注目しています。サイドアタッカーから転向して3季目。昨季は点差の離れたセット後半での二枚替えでの出場がほとんどでしたが、そろそろ正セッターの座を確保したいところです。何と言ってもあの(中田)久美(※)さんが指導されていますから、どんなセッターになっていくのか楽しみです。
※中田久美 1965年生まれ。15歳で全日本に選ばれ、セッターとして活躍。五輪にも3回(1984年、1988年、1992年)出場。2012年、久光製薬の監督に就任し、V・プレミアリーグ2連覇を達成。

 そんな久光の対抗馬の一番手としては、3季ぶりに木村沙織が復帰した東レでしょう。東レもやはり全日本メンバーが多い(木村・迫田さおり・中道瞳)ですし、久光が2連覇する前は、東レが3連覇しています。その時は沙織が中心となって3連覇し、彼女が海外に移籍していなくなって、久光が連覇した。だから、沙織が帰ってきてどうなるか、本当に見ものです。

 開幕戦で早くも対決して、フルセットまでもつれていますし、それぞれに、これまでリーグを制したチームとしての意地があると思いますから、特に直接対決は、ぜひ、みなさんにも見ていただきたいですね。

 沙織は、私も全日本でも長く一緒にやってきましたが、味方にすると頼もしく、敵に回すとやっかいな相手でした。勝負強さ、うまさを兼ね備えていて、本当に素晴らしい選手です。私が現役の時も、「沙織が(集中力が)切れてくれたらラッキー!」と思ってやっていましたね。逆に、こちらがリードしていても、沙織のサーブが回ってきて追いつかれたりすると胃が痛かったです。

 そして、今季リーグのダークホースはスバリ! 上尾です。プレミアに初めて昇格して、第1戦で見事に勝利を収めました。このチームの注目選手は、産休から現役復帰した、元全日本主将の荒木絵里香と、助っ人外国人選手のケリー・マーフィ。

 絵里香は、絶対にリオ五輪に間に合わせてくると思っていたので、この復帰後初勝利は大きかったですね。ともにミドルブロッカーの岩坂(久光製薬)と絵里香がきちんとこのリーグで活躍することができれば、全日本の戦術もまた変わってくるんじゃないでしょうか。

 また、マーフィー選手は、9月にイタリアで行なわれた世界選手権で優勝したアメリカ代表のオポジット。ワールドクラスのこの二人の活躍は、私も楽しみにしています。

 全日本で一緒に長くやっていたといえば、リョウ(佐野優子)ですが、彼女が昨季途中から加入したデンソーにも頑張ってほしいですね。2部落ちして、必死になって、また昇格して戻ってきたその勢いを、どこまでプレミアでも生かせるか。リョウは私の同期なんです。彼女は本当に守備範囲が広くて、数字に出ない貢献をものすごくしてくれる人。「任せられる」という安心感がある。隣にいてくれたらとても心強いと思います。

 昨季準優勝の岡山ですが、このチームは、常に「岡山らしさ」を持ち続けていますね。対戦チームから見ると、すごくやりにくい相手なんです。いつも淡々としたプレイで、離していたはずなのに、いつの間にか追いつかれて......ということが何度もありました。私が入社したときから引退まで、ずっとその印象は変わりません。選手が入れ替わっても、チームの色がはっきりしているんです。そういう意味ですごく安定したチームです。

 現在の岡山の中心は、もちろん全日本の司令塔の宮下遙と山口舞です。この二人のラインは見ていて安心できます。宮下は、全日本での活動を見ていても、昨年より今年の方がずっと上手くなりました。

 昨年は全日本の眞鍋(政義)監督の「ネットから離したトス」をなかなか受け入れられなかったそうですが、今年はそれを受け入れてみたとのこと。このことを見ても、技術だけでなく、精神的にも成長したことがうかがえます。「よいプレイ」というのは、正解が1つであるとは限らない。そのことがわかったのだと思います。

 岡山には、7月に廃部になったパイオニアから浅津ゆうこ選手が加入していますが、この選手も、現役時代に対戦するのがいやな選手でした。岡山でもきっと光るものを見せてくれるはずです。

 このチームは、昨季はチーム史上初の準優勝でしたが、久光と東レの優勝争いに、マイペースで絡んでいくのではないでしょうか。

 私の古巣、NECについて。注目して欲しいのはミドルブロッカーの大野果奈です。全日本にも選出されて、活躍しましたね。NECはこの大野と島村春世の二人のセンター線が私の推しです。幅の広い、パワフルなスパイクを打てるミドルブロッカー達です。このセンター線に、サイドアタッカーの近江あかりが加わって、相手チームのブロックをかき回してくれると思います。また、今季、JTからセッターの山口かなめ選手が移籍してきました。NECには秋山美幸といういい司令塔がいるのですが、ケガが多く、シーズン通してトスを上げることが難しい状況なんですね。ここに山口選手が入ってきたのは大きいです。

 今季はパイオニアの廃部、強豪の1つだったJTの降格があったために、移籍が非常に多かった年でもありますが、栗原恵選手も岡山から日立に移りました。日立はエースの江畑幸子がフランスのカンヌに、もう一人の点取り屋の高橋沙織がトヨタ車体に移籍し、監督もバルセロナ五輪代表の松田明彦氏になって、チームががらっと変わりました。

 松田さんはずっと男子畑の方だったので、女子バレー独特の雰囲気に驚かれたかも知れませんね。そんな中でメグはプレイだけでなく、精神的な支えとして大きな存在になってくれると思います。

 2014/15シーズンは、リーグのルールが大きく変わりました。これまでは勝敗数・セット率・得点率でレギュラーラウンド上位4チームがファイナルラウンドに進んで、優勝を争う方式でしたが、今季からは国際大会のルールと同じ「勝ち点制」が導入され、3−0、3−1で勝ったときは3点、フルセットで勝ったときは2点、フルセットで負けたときは1点獲得するシステムとなりました。

 勝ち点で上位6つのチームがファイナル6に進み、総当たりをして上位3チームがファイナル3へ、最後にファイナルで優勝が決まります。これまでは4強に残りさえすればファイナルでの条件は変わらなかったのですが、新ルールではレギュラーラウンドの順位ごとに勝ち点が与えられ、ファイナルラウンドにも影響が及ぶことになりました。

 このルールの採用により、リーグの終盤までずっと1セットを大切に戦い続けなければならなくなり、勝ち点1の差で笑ったり、泣いたりということが起こるかもしれません。プレイする側としては大変ですが、見ている方にはおもしろいシステムになったと思います。

 11月から始まり、来年4月まで戦うリーグは、チームの総合力が問われます。長いシーズン、チームの調子が上がらない時もあるし、ケガ人が出たりすることはある程度織り込み済みでいなければなりません。また、チームもその間にどんどん完成度を上げていき、シーズン終盤には、開幕当初とは別のチームのように成長することもあります。そういう意味でも、やはり短期決戦のトーナメント大会とは違った重みがあり、おもしろいところです。

 今季は動画サイト「ニコニコ動画」で、なんと男女全試合を放映するんです。地上波では、なかなか試合の中継がないので、これはとてもありがたいことです。全日本の活躍でバレーに興味を持ってもらった方などに、ぜひ、Vプレミアリーグの映像を見て楽しんでいただけたらと思います。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari