鍋が空になり、完売したスープ。

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 ボールペン1本を500円で販売するにはどうすればいいか。あなたならどういう戦略を立てるであろうか? 販売するボールペンは、人気のあるフリクションボールではなく、普通の黒と赤の2色が出るタイプのものだとする。

 経営を実践的に学ぶために、昭和女子大学の授業「起業とベンチャービジネス」においては、受講生たちに模擬店を出店してもらい、疑似経営体験を積んでもらった。

 出した模擬店は、ベビーカステラ屋、スープ屋、洋菓子カフェ、文房具屋の4つである。

 ベビーカステラ屋とスープ屋は、材料を仕入れてきて、自分たちで加工し、商品化して販売するので、いわば製造業に近い。原価率も低く抑えることができる。

 一方の、洋菓子カフェと文房具屋は、共に完成品を業者から仕入れてくる形式のため物販だ。原価率は自ずと高くなる。特に文房具の場合は、個人で手作りがほぼ不可能な商品のため、どうしても原価は高めとなる。数千本単位で仕入れることが可能であれば少しは原価を下げることも可能であろうが、2日間の学祭で販売できる量はたかが知れているため、ボリュームディスカウントも効かない。

 今回は、事前にベビーカステラ屋、スープ屋、洋菓子カフェ、文房具屋の4つ決められていて、受講生らはくじ引きでどの店を担当するかを割り当てられた。学生らは、いわばお仕着せの商品で、いかにうまく商売をするかに知恵を絞ることとなる。

開店30分で「値引きしてもいいですか?」

 さて、2日間の学祭がスタートした。初日はコートが必要なぐらいの肌寒い曇り空であった。そして2日目の予報は雨であった。客の出足がやや心配される状況。

 そんな中、開店30分後に様子を見に行ったスープ屋では早速値引きをしたいと言う。なかなかお客が来なくて、売れる自信がありません、ということであった。すぐ隣には、毎年大人気を博している豚汁屋があり、そちらは順調に集客をしている。そんな姿にすっかり弱気になっていたわけだ。

 また、これには他にも伏線があった。

 実際の出店まで3回の授業を用いて、学生には販売計画の立案や収益シミュレーションなどを行ってもらったのであるが、毎回の授業にはボランティアの社会人にメンターとして参加してもらった。スープ屋は当初200円で販売する計画を立てていた。

 それに対し、社会人メンターは皆口をそろえて、「300円でも行ける」という反応であった。その理由は、学祭ビジネスはある意味で衝動買いを誘発する場であること、そして、ネット販売のように顧客は価格をくまなく調査して買うわけではないので、価格弾力性はさほど高くないことだった。

 実はどの店も値付けは非常に苦労した。学生たちは自分がお客さんになったと想像する。当然ながらお財布は小さく、高いと売れないと判断し、安い値段を付けたがる。

 出店費用はすべて学生の自己負担となるため(自らが株主となる)、もし売れ残りが発生すると損失はすべて自分たちがかぶることになる。もちろん、利益を出すことができればそれらもすべて自分たちが享受できるので、どうすれば儲かるかに知恵を絞ったほうがいいのだが、なけなしのお金を出資する立場としては、どうすれば損をしないかの方に目が行ってしまう。そこで当初は200円を提案していたわけだ。

 それを、半ば社会人たちに説得される形で値段を300円にした彼女たちにしてみると、「ほら見ろ、やっぱり300円だと高いんだよ。200円にすればよかったじゃんよ〜」という思いが頭をもたげてきても不思議ではない。

 「まだ開店30分なんだし、まともな販売活動も集客活動もしていないでしょ、値引きはもっと後で考えよう」と説得し、その場を離れた。売るために値引きをしたがる営業、それに対してダメだという本部。どこの企業でもある日常光景がそこには存在した。

 結局、値引きができないと分かると、学生たちは積極的な営業活動を行うようになり、スープは2日目の途中で完売、ということになった。実は、スープ屋はもう1店存在し、競合店は200円で売っていた。競合店の方がサイズは小さかったのであるが、他店より高い値付けでも売れたということに対して、販促活動の重要性を体感できたようでまさにビジネスのエッセンスを学べた様子であった。

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