大正大で行われたフォーラムの様子

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2020年開催の東京五輪では、海外から大勢の人たちが日本を訪れることが予想される。各種インフラの一層の整備が課題となるが、トイレもそのひとつだ。

日本の「おもてなし」の精神を発揮して、誰もが使いやすいトイレを増やすにはどうすればよいか。東京都内で行われたフォーラムでは、普段の生活では気づきにくい「ニッポンのトイレ」の課題が浮かび上がってきた。

非常ボタンと洗浄用ボタンが区別しにくい

子どものトイレ・衛生教育や公衆トイレ環境の改善を推進するNPO法人、日本トイレ研究所は2014年11月15日、大正大学(東京・西巣鴨)で、東京五輪に向けて日本の公共トイレの現状や問題点を考えるフォーラムを開催。盲導犬や車椅子のユーザー、外国人、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)と異なる立場のパネリストが発言した。

盲導犬ユーザーの小山恵美子さんは、公衆トイレで床がぬれていると犬を待たせておく際に支障が出ると指摘。目が不自由な人にとっては、非常ボタンと洗浄用ボタンの区別がつきにくい場合があるとも述べた。車椅子アスリートの今野英樹さんは、車椅子から便座にスムーズに移動するには、トイレ内に車椅子が入るだけの広さが必要だと話した。小山さんと同じく、床が水浸しだと車椅子のタイヤがぬれ、その汚れが手に付着して衛生上問題とも言う。

柔道元フランス代表のフラマン・ピエールさんは外国人の視点から、「日本の公衆トイレは清潔」と評価。一方で、日本語での説明が読めずに困ることがあるそうだ。小山さんが示した「非常ボタンと洗浄用ボタンの違い」が、ピエールさんの場合は言語の面から分かりにくいとしつつ、「東京五輪に向けて、ひと目で分かるようなビジュアルでの説明があると望ましい」と提案した。

LGBTを支援するNPO法人「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀さんは、性的マイノリティーの立場でトイレ問題を論じた。通常、トイレは男女別になっているため「自分が使いたい方を安心して使いたいが、なかなか難しい」との悩みが寄せられるという。海外では、性別に関係なく使えるよう看板を工夫した例があると紹介。東京五輪に向けて「LGBTが当たり前に存在しているという前提に立ち、『性自認に基づいてトイレを使いましょう』とアナウンスをするようになれば、トラブルは起きなくなるのではないか」と強調した。

「トイレに対する声」集め都や五輪組織委に届ける

フォーラムでは、「誰もが外出しやすい社会の実現」を目指して東京五輪に向けて「世界をもてなすトイレプロジェクト2020」を始動し、まずはトイレに対する声を集める活動を早期に開始すると宣言した。現状のトイレの問題点の有無や、問題の内容の検証と改善に向けた方向性の整理が目的だ。

また2015年6月をめどに「東京オリンピック・パラリンピックトイレ準備委員会(仮称)」を発足させ、集まった「トイレの声」を東京都や五輪・パラリンピックの組織委員会、さらには全国の多くの人に届けることを確認した。

フォーラムの参加者のひとりで、東京大学大学院国際地域保健学教室の神馬征峰教授は、「東京五輪はひとつの契機。五輪後も、広く社会に『トイレルネッサンス』の運動を広げていくことが重要です」とコメントした。