ホンジュラスに6--0で勝利した11月シリーズの第1戦。ブラジルW杯を戦った選手たちをズラリと並べたことで、前体制との違いが「改めて」くっきりと浮かび上がった。

「メンバーは同じでも、戦術もポジションも違うから、全然違うものだと思ってやっていた」

 内田篤人がそう語ったように、4-2-3-1から4-3-3へとシステムが変更され、長谷部誠、遠藤保仁、本田圭佑、香川真司......といった、前体制で主軸だった選手たちのポジションが変化した。そして何より、チームのコンセプトが大きく変わった。

 どんな相手に対しても、攻撃的なスタイルを貫こうとしたザックジャパンとは対照的に、アギーレジャパンは、指揮官自身が何度も口にしているように、「決まったスタイルはない」ことが、言ってみればスタイルだ。

 このホンジュラス戦後の記者会見においても、アギーレ監督は改めて強調した。

「今の日本代表は相手陣内で仕掛けることができるし、引いて守ってから攻撃を仕掛けることもできる。チームには両方のオプションを与えていて、選手の判断に委(ゆだ)ねている」

 今回、日本代表に復帰したブラジルW杯経験者たちの言葉に耳を傾けてみると、そうした現チームのコンセプトが、改めてよく分かる。

「細かい指示はないので、ある程度、自分たちで考えていけばいいのかなと思います」

 右サイドで本田をサポートした内田がそう言うと、香川とともにインサイドハーフを務めた遠藤はこう言った。

「基本的に形を決めずにやっていたし、(香川)真司も自由に動くタイプなので、スタートポジションだけ決めて、あとは自由にやっていた」

 さらに、日本代表で初めてアンカーを務めた長谷部は、こんな言葉を残している。

「監督に、『これはするな』ということは言われていなくて、『こんな形もある』というヒントを与えられている。ピッチの中でプレイするのは自分たちなので、臨機応変に組み立ててやった部分はある」

『自分たちで考えて』
『自由に』
『臨機応変に』

 こうしたフレーズは、アギーレジャパンの、特に攻撃面を語る上で重要なキーワードだ。

 ザックジャパンは攻撃パターンがしっかりと確立していて、まるで「教科書」のように美しく崩す場面も多かった。見ている側には分かりやすく、だから、対戦相手にも研究されやすかった。

 一方、アギーレ監督は戦況と対戦相手に応じた戦い方を求めるから、見ている側からすると、「分かりにくい」という印象が強くなる。現時点ではどうしても、即興のコンビネーションが多くなり、手探りのプレイも多い。

 だが、そうした中でも、さすがだったのは遠藤である。パートナーの香川のポジショニングを意識したプレイが目につき、香川が低い位置に下がれば、重ならないように高い位置を取ったり、あえて近づいたり、メリハリが利いていた。

「初めて並んでやった割には、スムーズにできたと思う」

 遠藤からの決定的なパスは出て来なかったが、ゴール前まで飛び出す場面もあって、「臨機応変」を地で行く選手だということを証明した。

 また、攻撃のコンビネーションも少しずつ形になってきている。例えば、右ウイングの本田を中心にしたアタックだ。

 速攻の場合はフィニッシャーとして、遅攻の場合は攻撃の起点として、右サイドに張った本田を生かす攻撃が効力を発揮した。左サイドの香川から本田へのサイドチェンジもこれまでには見られなかったもの。ホンジュラスのレベルを考慮する必要はあるが、遅攻あり、速攻あり、ショートカウンターありと、攻撃の幅は広がってきた印象だ。

 欲を言えば、もっとポジションチェンジをしてもよかった。

 これまでのアギーレジャパン4試合を見る限り、攻撃時にはアンカーがディフェンスラインに入って3-4-3に、守備時にはウイングが下がって4-1-4-1になるのは最低限の約束事だが、それに縛られる必要はない。ホンジュラス戦では、後方からのビルドアップの場面で3バックにすることに固執するあまり、遠藤や香川との距離が遠く、ビルドアップが滞(とどこお)る場面もあった。

 相手の2トップがプレッシャーを掛けて来ない状況だったから、長谷部がより高い位置を取ってもよかった。長谷部と遠藤が入れ替わったり、遠藤と長谷部が並んで2ボランチにしたりして、ビルドアップをさらにスムーズにさせることもできた。

 そのあたりの柔軟性は、長谷部も感じているようで、課題として挙げている。

「もう少し自分で持ち運んだりとか、もう一個前の中盤のところでボールを受けたりとか、出してからもう少し前へ行くとか、バリエーションを増やしていきたいと思う」

 自分たちで考え、自由に、臨機応変にゲームを進めていくことは、「言われたことに従順」な日本人にとって苦手とされてきたこと。だが、日本サッカーがもうひとつ上のステージに上がるためには不可欠で、まずはアジアカップで、ブラジルW杯の経験者を中心にアギーレ監督の求める戦い方にチャレンジしていくことになる。

 9月、10月の4試合で気になる若手を手もとに呼んでふるいにかけ、そこに計算の立つブラジルW杯の主力を加えて、チームを編成する----。

 初陣から4ヶ月でアジアカップを迎えるという状況で、将来の世代交代を睨みながら、アジアカップも獲ることを考えれば、これまでのチーム作りは、理に適(かな)ったものだ。

 所属クラブでレギュラーではなかった皆川佑介(広島FW)や坂井達弥(鳥栖DF)をいきなり抜擢し、貴重な中立国(シンガポール)でのブラジル戦で若手を大量に送り込んだために判断が難しくなったが、大きな流れで見ていくと、現実的だと言っていい。

 本格的な世代交代は、アジアカップが終わってから----。おそらくアギーレ監督は、そう考えているに違いない。アジアカップを戦うチームの全体像が見えてきた。

飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi