タイヤに「革新起こした」オロジック(画像はブリヂストンのホームページより)

写真拡大

ブリヂストンが世界に先駆けて開発し、量産化に成功した細くて大きいタイヤ「オロジック」が注目されている。

オロジックの実用化は世界的にほぼ統一されているタイヤの大きさを変革するという革新的な取り組みだ。独BMWの電気自動車(EV)「i3」に世界で唯一装着されおり、今後の普及動向に自動車業界の関心が集まっている。

「聖域」に踏み込んだ

オロジックは、幅が約15センチで通常のタイヤに比べて3センチ程度細く、直径は約70センチで約7センチ長い。タイヤは通常、幅が狭くなると、走行中に正面から受ける空気抵抗が軽減される。また、直径が長くなると、タイヤと地面との接触面が大きくなり、タイヤが変形しにくくなって、進行方向と逆向きに生じる抵抗力「転がり抵抗」も小さくなる。このため、細くて大きいオロジックを装着した車は、通常のタイヤを装着した場合と比べ、燃費が5%程度改善するという。

タイヤの大きさは世界的にほぼ標準化されている。もしタイヤメーカーの都合でタイヤの大きさを変えれば、タイヤを覆うホイールなど無数の関連部品ばかりか、車の基本設計まで変えなければならない。このため「タイヤの大きさを変えようなんていう発想はそもそも持たない」(業界関係者)というのが"常識"だ。

ブリヂストンが、そんな「聖域」とも言えるタイヤの大きさの改革に踏み切ったのは、「究極の次世代エコカーを作ろう」という熱意からだ。ブリヂストンは元々、自動車レースの最高峰「フォーミュラワン」(F1)向けにタイヤの供給をしていたが、リーマン・ショック後の厳しい経営環境の中、リストラの一環としてF1から撤退することを2009年に発表。F1に最先端の技術を取り込むことに力をそそいできた技術者らは一時、混乱し失望したが、「今後は次世代エコカーの開発に力を向ける」という新たな方針の下、気持ちを切り替えてエコカー開発を目指した――という。

仏ミシュランなど欧州のタイヤメーカーも試作品

まず第1弾として行ったのが、「これまでの常識を徹底的に見直す」(同社)ことだ。試行錯誤を重ねた結果、燃費向上のためにはタイヤの大きさそのものを根本から変える必要があると結論。試作品を作り、世界中の自動車メーカーに説明して回った。これにいち早く賛同したのがBMWで、オロジックを装着した「i3」を欧州で昨秋発売、日本でも2014年4月から販売が始まった。

技術に重きをおき、部品メーカーに対する要求がことさら厳しいとされるBMWがオロジックを取り入れたことで、自動車業界全般がオロジックに注目するきっかけにもなった。

最近では、仏ミシュランなど欧州のタイヤメーカーも自動車ショーなどで細く大きいタイヤの試作品を公開しているほか、国内の自動車大手もオロジックへの関心を強めているという。ブリヂストンは「ハイブリッドカーやEV、燃料電池車の登場など、自動車そのものが過渡期を迎えているからこそ、オロジックが実用化できた。自動車の未来を日本から変えていきたい」と意気込んでいる。