エイスースの「ZenFone 5」

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 中国・ファーウェイや台湾・エイスースなど、アジア系の海外メーカーが日本国内向けにSIMフリーのスマートフォン(スマホ)の投入を強化している。強力な販売網を持ち、安定した販売量が見込める大手携帯電話会社(キャリア)向けではなく、あえてオープンなSIMフリー市場にスマホを投入するのはなぜだろうか。

●相次ぐアジアメーカーのSIMフリー市場参入

 SIMフリースマホに、仮想移動体通信事業者(MVNO)が発行するSIMを挿入することで、格安スマホとして利用できる。従来、SIMフリースマホを提供する企業は、独立系が多くを占めていたが、最近はパソコンやタブレットなどで名前が知れている海外企業も積極的に参入している。

 特に急速に勢力を拡大しているのがファーウェイだ。同社は今年6月にSIMフリーの「Ascend G6」をMVNOに提供開始。8月には、「Ascend P7」やタブレット「MediaPad X1 7.0」など5機種を投入したほか、10月には海外で発売されて間もないフラッグシップモデルのファブレット「Ascend Mate7」を投入することも発表。11月にはミドルクラスの「Ascend G620S」の発売を発表したあたりにするなど立て続けに製品を投入しており、力の入れ具合を見て取ることができる。

 また、エイスースは10月28日、「ZenFone 5」の国内販売を開始すると発表。2万6800円からと低価格ながら、安さを感じさせないデザインに加え、日本語入力に「ATOK」を採用するなど、力の入った内容となっている。

 ほかにも、中国・レノボがフリーのデータ通信対応モデルのタブレット「YOGA Tablet 2」を12月に発売すると発表したほか、中国・ZTEがNTTレゾナント向けに「ZTE Blade Vec 4G」を提供。韓国・LGエレクトロニクスも「G2 mini」をMVNO各社向けに提供するなど、アジア系のメーカーがSIMフリー端末を日本市場に投入する動きを積極化させていることがわかる。

●iPhone優遇の大手キャリア

 しかしなぜ、アジア系メーカーの多くが、立ち上がりから間もない日本のSIMフリー市場に狙いを定めているのだろうか。

 理由の1つとして考えられるのは、キャリアの端末販売戦略の変化によって、キャリア経由でのスマホ販売が厳しくなっていることだ。日本ではiPhoneが大ヒットし、iPhoneの有無がキャリアの業績を大きく左右する状況を生み出したことから、キャリア各社はiPhoneを優遇する戦略を取るようになった。その傾向は、昨年NTTドコモがiPhoneの取り扱いを開始したことで一層拍車がかかっている。

 半面、iPhone以外の端末の調達を減らす傾向にあり、昨年にはNECカシオモバイルコミュニケーションズ(現・NECモバイルコミュニケーションズ)やパナソニックモバイルコミュニケーションズが国内スマホ市場から撤退するなど、アップル以外のメーカーは販売面で総じて厳しい状況にある。それゆえ、スマホに関してキャリアとの関係を十分構築できていないアジア系メーカーは、日本でのスマホ販売の活路をSIMフリー市場に見いだそうとしているといえよう。

 もう1つの要因は、格安スマホへの注目が高まっており、今後のSIMフリー市場が大きく伸びると考えられることだ。総務省が来年、キャリアに対してSIMロックの解除を義務付ける方針を定めた一方で、MVNOによる市場活性化を支援するなど、国もSIMフリー市場の拡大を後押ししている。

 しかし、まだ日本のSIMフリーの市場は決して大きいとはいえず、専用端末を開発するのは難しい。だがグローバルに展開している海外メーカーであれば、海外で販売しているモデルをほぼそのまま日本に持ち込むことができる。そうした中で、特に市場ニーズが強い価格面で優位に立つアジア系のメーカーが、日本市場への参入を加速させているのだ。

●課題を解決できるか

 海外メーカーの参入には課題もある。最も大きいのは、海外で販売されているモデルが、必ずしも日本市場にマッチしているとは限らないことだ。

 現在、日本市場で販売されているSIMフリー端末は、価格を重視したミドルクラス以下の製品が多いが、高価格のiPhoneが人気を集めるなど、ハイエンド志向で品質面に厳しい目を持つユーザーが多い日本市場に適しているとはいえない商品も見受けられる。今は格安スマホの目新しさから注目されているが、その目新しさを失った時点でユーザーが品質・内容に満足できるものでなければ、市場全体が失速する可能性もあるだろう。

 特に求められるのはサポートだ。スマホはパソコンよりもユーザー層が幅広く、ITに関する知識が少ない人でも利用する。家電量販店で格安スマホとして購入する人たちは特にその傾向が強いだけに、しっかりサポートできる体制を整えられるかというのは、重要な要素となってくるだろう。

 そうした課題があるとはいえ、キャリアとの関係構築が難しく、日本市場に入り込めなかった海外のメーカーにとっては、SIMフリーが日本市場へ進出する足掛かりとなりつつあることは間違いない。今後も、中国系を主体として、SIMフリースマホによって日本市場に乗り込んでくる海外のメーカーは増えるだろう。
(文=佐野正弘/ITライター)