写真左から のりおさん/AnitaSunさん/きくおさん/与作さん

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11月28日(金)から30日(日)に、Web上で音楽即売会「Apollo」が開催される。

今回は、その開催を目前に、企画・運営を務める「pixiv」・「同人音楽超まとめ」の担当者と、同人音楽サークル・Diverse Systemの主宰や人気ボカロPのきくおさんといった、東方project・ボーカロイド・オリジナル(一次創作)ら各シーンに身を置く人で集まり、同人音楽を中心に日頃感じることについて話していただきました。

人気ボカロP、大手同人音楽サークル主宰が一堂に会する

 
──それでは、本日はよろしくお願いします。ひとまず自己紹介を一言ずつ、よろしくお願いします。

のりお pixivで「BOOTH」や「Apollo」などの新規プロジェクトのリーダーをしているのりおと申します。「Apollo」ではAnitaSunさんと一緒に機能を考えたり、サービス開発のマネジメントを担当しています。

AnitaSun 「同人音楽超まとめ」のAnitaSunと申します。Bitplaneという名前で音楽サークル活動もやっていて、以前は東方のアレンジなどもやっていました。今回はpixivさんと協力して「Apollo」の企画・監修をしています。

Bitplane - 恋は、Sensation (feat. Hatsune Miku)




きくお ボカロPのきくおと申します。活動としては、個人で音楽つくってアップして、アルバムにして即売会やAmazon、iTunesなどで頒布して、たまにライブするということをループしている感じです。

最近はどちらかと言うと商業の音楽制作に多くの時間を割いていましたが、その辺りはあとで話すとして、まぁ変な曲ばっかりつくっています。

きくおがボカロを始める前7年間の(中略) 略してきくおミク0 XFade




与作 与作と申します。Diverse Systemというオリジナル系中心の同人音楽サークル主宰をしています。主にイラストを描くこと、音楽をつくること、デザインをすること『以外』がサークルでの僕の担当です。

企画運営、金銭関係、通販から人間関係の相談、夕飯何にするかとかそういうこと担当です。即売会で頒布するほか、Diverse Directというカートや決済の機能も手作りした自家通販サイトを持っています。

[DVSP-0111]works.4 disc 1 crossfade




──皆さんには自分のCDを持ってきていただいたのですが、早速机に広げていますね。

机上のCD

それぞれが持ち寄り、机に広げられたCDやグッズ



きくお とりあえず、家にあるだけ持ってきました。

AnitaSun きくおさんめっちゃCD出してますね。自分はこれ一枚しか今日持ってきてないから、なんだか恥ずかしいなぁ……。

きくお 最初にCDを出したのが2011年の夏コミだったかな。3年ちょっと経ったはず。一度のコミケで3作くらい新譜だした時もあったので。あとマンガも趣味で一緒に出したりしてました。

のりお マンガも描かれてるんだ? すごい!

与作 一人でその量をつくるの!? これはお見事だわ。

AnitaSun このマンガ、100ページ余裕で超えてる!! 自分が全然曲つくってないのが恥ずかしくなってくる……。

きくお いやいや、AnitaSunさんは、中学の頃自分の尊敬するアーティストでしたから。友達とずっとBitplaneごっこしてましたもん。

AnitaSun 恥ずかしいからやめてください!

きくおさんCD&本

CD「きくおミク」シリーズのほか、きくおさん自身が描いたマンガも



同人活動に近い場をWebで実現


──今回のApolloについては、以前KAI-YOU.netで行った座談会が開催のきっかけになったとうかがっているのですが、どのような流れがあったのでしょう?

AnitaSun そもそも、私が「同人音楽超まとめ」をはじめる話をチームラボの方としていて、自分もある程度年を取ってしまったので誰か若い人に協力をお願いしようと、「プログラマーで誰かいい人居ない?」と聞いた時に紹介されたのが、KAI-YOUで働いていた八田モンキーさんだったのです。

そのつながりでKAI-YOU.netでも「超まとめ」の事を記事にしてもらえるということで、「百化」の虎硬さん、pixivののりおさん、片桐社長を交えた5人で座談会をすることになりました。そこで「最近の同人ってどうなの?」という話をしているうち、片桐社長と私が意気投合してしまって、「何でもいいから一緒にやろう。ひとまず明日pixivのオフィスに来てくれ」ということになりまして。翌日オフィスで今回の企画の提案をしたら、その場で是非やろうという流れになっていきなり始まったという感じです。

「超まとめ」ではCDを直接買える仕組みがないので、BOOTHを使えば、直接買えるところまで実現できるかと思いまして。pixivも丁度BOOTHを始めたタイミングで、今までのユーザーである絵描きの人だけではなく、新たに音楽の界隈とも関わっていきたいという思いがあったそうなんです。しかし、SNSを始めたところで、人が集まる想像はあまり出来ないじゃないですか。

それなら同人の活動により近いサービスをつくったほうがいいのでは、と。

のりお 僕達としてはBOOTHでもっといろんな創作活動を広くサポートしていきたくて、イラスト関係以外の音楽作品などでも是非使ってほしいという思いがありました。

BOOTHに音楽に特化した場を用意してもいいかな、とぼんやり考えていたところに偶然AnitaSunさんと出会うことができたので、タイミングも運営状況に企画内容もバッチリはまったことが良かったですね。

──ちなみにのりおさんはVJもされていたんですよね?

のりお 10年以上前のことですがクラブでやっていました。pixiv入社前はずっと音楽業界にいたので、音楽アーティストやレーベルのWebサイトのデザインやシステム開発などをしていたんです。

──今回の企画に対しても必然的な流れを感じますね!

のりお 座談会のきっかけでもあるのですが、AnitaSunさんがリリースした「超まとめ」に、自分の知り合いでもあった八田さんが関わっていることを知ってびっくりして、AnitaSunさんに興味が湧いて紹介してもらった所から今につながっているので、やはり「超まとめ」のインパクトは大きかったですね。

ネットでポチるという感覚が当たり前の時代に


──ちなみにApollo開催の準備はどうですか?

AnitaSun 正直に申し上げると一ヶ月遅れくらいです……デモページも本当は9月中に公開予定だったんですけどね。

のりお 参加者の集まりとしてはすでに400以上のサークルさんにご登録いただいています。登録締切はまだ先なので、これからさらに増えると思います!

与作 まさか座談会中に「進捗どうですか?」が聞けるとは思わなかったよ!

AnitaSun Diverseさんはまだ登録されてないですよね?

与作 ちょっとM3の準備で俺がテンパってたので、まだ登録作業できてないです。ごめんね。でも参加予定なのでご心配なく!

AnitaSun 1サークルで3作品まで出品できるので、作品の数としては更に増えますよ。CDがあるものはBOOTHを通して自家発送・倉庫サービス経由での発送はもちろん、現物がないものでもダウンロード頒布が出来るようになっています。倉庫サービスを使えば、実際にはショップ委託とほぼ同じ手続きで頒布ができます。

のりお 倉庫発送サービスも宅配便のほか、メール便にも対応したので送料的にも使いやすくなっています。

──与作さんのところでは自家通販をされていますけど、こうした発送面で大変なことはありますか?

与作 うちでは宅急便ではなくて郵便の大口契約をつかってます。通販を始める頃、Twitterで「誰かいい配送方法知らない?」って聞いてみたら、郵便局勤めの友人が釣れちゃって。話通しておくからと言うのでそいつに任せてみたら、いきなりうちの住所を管轄してる郵便局の営業所から電話がかかってきてびっくりしました(笑)

一同 すげーー(笑)

与作 自分の知らないうちに他の業者と比べていることにされていて、おかげ様で送料をお得に収められたので、その分購入者への負担も少なくしています。

──海外からも注文があるそうですが。

与作 うちはPayPal決済にも対応しているんですが、これの良いところは海外からの入金にも対応出来ることで、1イベント毎に大体50件前後は海外からの注文がきますね。ただ海外向けには個別対応で発送しないといけないので、「国際eパケット」という郵便局のサービスで送っています。エアメールはたまに未達があるのでちょっと怖いんですよね……。

うちで取り扱っているCDだと、海外の音ゲーに収録されている作家の作品もあるので、そういうものだと韓国から結構多く注文が来るんです。その他に作品を知った理由が「どこから!?」って国からもたまに来ますね。イギリスは割とよくあるんだけど、この間はひょこっとイタリアから注文が来たね。同じヨーロッパでも、意外と注文を受ける国は偏ってる。

DiverseDirect

Diverse Direct通販ページ



AnitaSun 今日持ってきた自分のCD『Alice's Adventures in Wonderland』はbandcampにも現物の通販を置いているのですが、特に海外向けには全く宣伝を行っていないのに、それでも外国人が月2枚ずつくらい買っていくんですよね。

一同 へ〜〜

与作 うちも似たようなもので、宣伝しなくてもちょこちょこbandcampから1曲なりアルバム単位なりで捌けていくんです。多分、本当の意味で音楽に対して雑食な人が買っていくのかな。

きくお 自分もbandcampは気になっていて、やってみたいんですよね。今のところ扱っているのは同人ショップとAmazon、iTunesStoreだけなので。同人ショップでは通販と店舗販売が同じくらいずつ出てるみたいです。

AnitaSun 通販でそんなに数出るようになったんですね。5年くらい前の感覚だと通販での出荷数は3割いくかいかないかくらいの印象でした。

与作 みんなAmazonで通販慣れしたんじゃないかなぁという気がしています。それこそ5年以上前はネットでポチるということにすごく抵抗がある時期だったと思うんですよ。今はその意識がかなり薄くなってきたと思う。配送数が多くて宅配便がパンクしちゃうくらいだもんね。

Diverse Directも初期の頃、それこそ委託作品とかはなく自分の所のだけやってる時と比べたら、大体20倍ぐらいの規模になりました。もっとも20倍になっても自分一人でなんとかなったりならなかったりするぐらいの量なんですが…

AnitaSun そう言えばDiverseさんって、シーズンになると梱包の様子をたまにUSTで流してますよね。配信中に電話かけるとちゃんと画面の向こうで電話取ってくれるんですよ。(笑)

のりお BOOTHも倉庫にカメラ置いて「今発送してます!!」ってやりたいね。Webでの頒布だと対面で触れ合う機会がない分、手作業を感じる場面が少ないんです。画面越しでも人が動いてる様子が見えるのはいいなぁ。

AnitaSun 梱包の作業員もコスプレしてたりして。

与作 実は僕がサボらない為に配信してるんですよね、アレ。

音楽でつながるコミュニティ

 
のりお それにしても、やっぱり海外からの需要ってあるんですね。

与作 ありますね。日本にしかつくれないものというのがあるので、そこに注目している人がいるようで。

きくお 僕もそろそろ海外も視野に入れて活動しなきゃと思っているところで、bandcamp始めようとしたり、Facebookページの英語版も用意しているところです。

AnitaSun 海外の話をすると、向こうには向こうでコミュニティがあるんですよね。同人でも東方のこの辺と仲がいい人、ボカロのこの辺と仲がいい人、というつながりがあるように、あちらでもつながりを持っていないと、例えばbandcampなど、各サービス上にあるコミュニティの中に入りにくい面がやっぱりあるんです。

あちらは、みんなが音楽ブログをつくりあう文化が根付いているんですが、その音楽ブログや小さいレーベルを通じて、アーティスト同士がつながっていて、一緒につくったDJmixやらリミックスがいろんなところに点在しています。YouTubeでも1曲開くと、関連動画に同じ系統の曲がわあっと出てくるんですよね。

そこで名刺代わりとしてSonudCloudも活用されていて。SoundCloud単体では集客の動線としては弱いけど、音楽ブログ系や企業が運営している音楽メディアで、試聴ソースとしてエンベッドしてガンガン利用されますからね。

──日本の同人音楽だと、そういう横のつながりはどこにあるんでしょうね。

AnitaSun ボカロや東方でもその中でさらに細かく分かれているし。Twitterとかで細かく絡み合ってますよね。

与作 僕の周りの同人音楽だと、例えばHARDCORE TANO*C周りだったりとかDiverse周りだとか、それに音ゲー周り、ちょっとさかのぼると茶太さんとか片霧烈火さんのあたりだったりとか。集団をつくるって意味では結局全世界的にやってること自体は一緒ですよね。

集団に入らないなら入らないで、粛々と自分で曲をつくるしかない。

きくお ぼくは家が近いとかそういう理由で仲がいいのが2、3人いるくらいで、他のボカロPとつながり云々みたいなことがないので、そのあたりの話はよくわかんないです。

与作 完全にオンリーワンっすね。カッコイイと思いますよ。

AnitaSun BMSつくってた頃の自分がもろにそんな感じでしたね。

ボカロでも、東方でも、とにかくシーン初期の頃から活動をした場合は、周りとのつながりが薄くてもやれるんですよね。 シーンが大きくなるにつれ、一人で新たに参入するのはどんどん難しくなっていきます。

新たな大手サークルが生まれる「祭り」に

 
のりお クリエイター側から見るとオンリーワンではあるけども、買う側としてはジャンルの大きな括りで買いに来る人もいなくはないと思う。

きくお イベント会場では勢いで買ってくれる面もありますしね。

AnitaSun 会場に来たからには買わなきゃ損だし、後で買える保証もないからジャケ買いしていきますよね。お祭り気分もあるし。

与作 なんだかんだ、委託で後からでも買えることが保証されているサークルって少なかったりするので。Diverseは通販されることがわかっていて後回しになるので、会場ではそこまで数は出ないです。

のりお そこはApolloも同じですね。3日間に絞ったコンセプトも、「今買わなきゃ」っていうお祭り感を大事にした結果です。

AnitaSun 3日に絞ると、365日開いているサービスに対して、単純計算で120倍……とはいかないまでも、かなりの密度でコミュニケーションが行われるんじゃないか、という期待がありまして。

Apolloが開催されたら、サークルさん達が一斉にツイートをはじめて、それに対して買った人もどんどん「こんなアルバムを見つけた、あんなアルバムを買った」とツイートする。Apollo上で、アルバム詳細画面にコメントが付きだすと、サークルさんも更にその事についてツイートをはじめて……。

なんといいますか、そういう事が起こればいいなあ、という希望があります。フォローしているうちの何人かが、曲買っていたら気になるじゃないですか。

与作 音楽サークルのTwitterアカウントって、何かイベントをするごとに目に見えてフォロアーが増えるので、何か起こすとすぐ数になって見えますね。

apollo

「pixivのお知らせ」より



──Apolloではユーザーコメントについて、TwitterやほかのSNSに頼る以外では何か用意されていますか?

のりお 作品を買う時に応援コメントが付けられるようになっています。実際の即売会だと対面で一声かけるのと同じように、コメントを残して賑わい感を演出できればいいなと思っています。

──M3に行った時も知人が「知り合いの所を回るだけで、新しいサークルを掘るまで手が回らない」ということを言っていて、今回では試聴も出来るのでコメントと併せて、新しい発見にもつながるのかなと。

AnitaSun それこそが狙いで、Apolloを通じて新しく知ったサークルを、コミケとかの別の即売会でもチェックするような流れが起きてほしいんです。もっと言うと新しい大手サークルが生まれやすくなる状況をつくりたいのです。

同人音楽って、ちょうど去年の夏以降とか、あたらしい音楽サークルが出にくい雰囲気があって、それを今回壊したかったっていうのもあるんですよね。それこそ、きくおさんみたいな尖った人をもっと増やしていきたいというか。

apolloデモページ

「Apollo」Webサイトでは出品作品が一面に並び、試聴しながら好みの曲がないか探ることが可能



与作 コミケに良くいる人間としては大分、壁サークル、若しくは壁サークル級の人たちが増えてきた感じがします。昔に比べて通路が狭いというのは人が増えたのか、力をつけたサークルさんが増えたのか……。 壁サークルだけじゃなく、島中でも相当列やりくりしてるところを見たりします。

AnitaSun 以前から大手サークル(=壁サークル)が集まる外周は、列ができる関係上歩きにいですが、最近だとよっぽど島中の方がが混んでいて、いったん外周に出てから戻ってきたりしますもんね。

同人音楽の制作姿勢


──もう古参サークルともいえるDiverse Systemですが、最近の活動で何か感じることはありますか?

与作 2年前までは年間4枚の制作だったんですが、色々あって急に年間15枚になり、きちんといろんな余裕があった上で回るようになったかな、と思っています。

DiverseのCDのつくり方って、これまでの参加者でまず挙手取って、足りなければ心当たりの人に打診して、そこから公募取ったりするのだけど、企画出すと結構みんな乗ってくるんですよ。その辺りの制作の流れも健全だとは思います。

変な話ではあるんですが、企画を延期する勇気もしっかり持てているし。2年に1度くらい企画が延期したり落ちたりすることがあるんです。曲数が事情で集まらなかったりなどの理由で。そういう時は素直に「あ、じゃあ次の何時のイベントにしよう」と焦らずきちんとやっていく感じになりました。

DiverseSystemのCD

DiverseSystemの制作物。曲のジャンルやBPMなどで統一したテーマのもとに一枚のCDが作られている



──逆にきくおさんやAnitaSunさんは、一人でつくる場合の制作の流れはどういったものなんです?

きくお まぁイベントなどに間に合わせるための入稿合わせですね。つくり貯めがあるのでそこから出すけど、締切まで細部を詰めるので結局ギリギリになっちゃいます。

AnitaSun 私の場合は最初に曲調と各曲の秒数を決めて、そこからつくります。

きくお えっ、何ですかそのつくり方……。

AnitaSun アルバムをまるまる一枚通して聞いてもらったときに、あまり飽きずに最後まで聞けるようにつくるには、それしか方法がないので……。

だからつくり貯めも出来ないし、入稿直前に駆け足でつくると酷い目にあうからバッサリ落としちゃう。逆に完成する時はイベントの3ヶ月前にすでに出来ちゃってるとか……。

与作 僕の中ではAnitaSunさんは完全に不思議な人ってイメージです。あと、実はソロでテーマを持った一枚通しのCDをつくれる人ってなかなかいないんです。大体が途中で力尽きちゃう。

Caterpillar Song - bitplane




だからきくおさんも、この物量とクオリティはすごい。作曲についてはまだ理解できるんだけど、その上マンガまでつくれることが僕には理解できないよ。

同人音楽にレビュー文化を

 
──それこそ、pixivが開催ということもあるので、今回のApolloだとイラストやマンガを音楽と一緒に頒布するということも出来ますよね。

のりお まさに可能です。CD、ダウンロードのどちらでも、頒布の際におまけデータが付けられるようになっています。例えばiTunesだと普段歌詞データが付いてないので、歌詞などが載ったブックレットがついてくるだけでも嬉しいですよね。

AnitaSun 昔、洋楽のCDとか買うと解説がついてきましたよね。今はあれがないから次に掘るべきCDがわからないんですよ。

Amazonにも書評しかないし、買った後にはそんな所は見ないからなぁ。

のりお そう! あの解説冊子から周辺情報を得て、他のアーティストも知っていくんですよね。

AnitaSun アニメとかの場合は本編観た後でWikipedia見たり、感想を言い合う環境があるからちょっとうらやましいんです。

──BMSだと今でもレビュー文化があったりしますよね。

与作 あるある。でも大分限られた人数しかいない気がします。

AnitaSun 昔はブログでの感想も簡単に検索にひっかかったんだけどね。今はGoogleで検索してもまず良くてWikipediaかニコニコ大百科、つぎに売り場系のサイトが結果に出て、次にSNSやロボット検索の断片とTorrent交換サイトが大量に現れ、5ページ目位からやっとブログ記事が出てくる感じ。

音楽に感想を言う場はTwitterに吸われちゃって、でもタイムラインがすぐに流れちゃうからアーカイブされないんですよね。どんどん感想が短文になり、かつ流れていく状況なので、最近では逆に「超長文」なコンテンツの価値が相対的に上がってきている気がします。

与作 AnitaSunさんが言ってたことだけど、長文書けば書くほど人が読むってことだね。超まとめも、TOPのを読んで、「あー、ここが入り口なんだなぁ」って思った。

きくお いいですよね、あれ。

AnitaSun もっというと、最悪あの長文自体はあまり読まれなくてもいいんですよ。熱量が伝わるので、それだけで価値がある。(笑)

きくお AnitaSunさんの面白いところは、その熱量がまんま文章中にも出るんですよね。途中で「〜じゃないですか!」って、読んでる自分への投げかけが書いてあったりする。

のりお 「Apollo」もTOPにあれだけ抱負が書いてあるのが重要ですよね。あれがないとpixivがなんで音楽をやるのかわからないし。

AnitaSun あれがないと絶対炎上しましたよね! きっと「pixivは金儲けのことしか考えてないんじゃないか」って。本当は「超まとめ」の名前を出すかも迷ってたんだけど。

きくお あの文章もAnitaSunさんが頑張ってる感じがして好きですよ。

与作 僕もAnitaSunさんが関わってること知らなければ、「んん〜?」って思うことがあったかもしれないね。音楽方面からだと、こちらからpixivに絡むことって何もなかったので、本当なら今更なんで寄ってきたんだろうと思うところなんだけど、AnitaSunさんがOK出してるなら大丈夫なんだなって思った。

AnitaSun 「超まとめ」をリリースするときも、心臓が飛び出るかってくらいドキドキしてたんですよ。

意見を訊きに、大手レーベルの若いプロデューサーさん数人にも見てもらったんですが、彼らは意外にもあの文章にすごく賛同してくれたんです。でもこれから商業やっていこうっていうセミプロくらいの人にとっては、業界批判なので取っ付きにくいはずなんですよね。こんなことをRTでもしたら、商業で上手くやっていけないんじゃないかと思ったりして。

きくお でもそもそもメジャーや業界に憧れを持ってる人も減ってるんじゃないですかね?

AnitaSun 今はまさにそういうタイミングなんですよ……!

自分で出来てしまうと、他人に頼る余地がない


──ここでちょっとお聞きしたいのですが、ボカロ界隈の人たちがメジャーに行く中で、きくおさんはそのオファーを全部断ったそうで。それがすごく珍しいのですが、その動機をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

きくお 別に個人活動したいという強いこだわりがあるわけではなくて、レーベルの方ともちゃんと打ち合わせをしているんですよ。「きくおさん個人の音楽活動では手の届かない部分、わずらわしい部分を私どもでお手伝いできる事があれば、そこを担わせていただけたら嬉しい」という風にお誘いをいただけるのですが、そこで自分のCDのデザインや流通、制作形態の説明をすると、どのレーベルからも「それでは私達にお手伝いできる部分は何もありません」って回答になっちゃうんです。

これまで5,6レーベルからお誘いがあったんですけどね。自分も手の届かない部分に広がりを持つこと自体には前向きで、一緒に案を考えたりもしたんですが、結果的に何も出来ることがないと。映画の主題歌とかゲームの案件も現状、音楽事務所やマネージャーなど挟まずに受けちゃいますし。

与作 そういう時代だもんね、今。

きくお 仕事を持ってきてくれる方ももちろんいるんですけど、そこと専属契約するほどの必要もないし、マネジメントしたいという人もたまにやって来るんですが、大概のことは自分でやっちゃうから他人に頼む余地が無いんです。

のりお 別に商業レーベルお断りって訳ではないんですね。

AnitaSun でも実際、本当はそうした会社にやってもらうことがないはずなのに、お買い上げされちゃってる人って結構いるんですよね。メジャーから出す看板の大きさの魅力も、もちろんあるのだけれど。アーティスト本人からデザイナーやイラストレーターに連絡したほうが、肌感覚で良い物をつくる人を捕まえられる部分もありますから。

それこそ同人でやれている人については、独力で全部つくるやり方のほうが合っているケースが多いですよね。逆に大きなレーベルでないとできない売り方というものもあって、それはこちら側の人間には極めて難しい。

乗り出して会話するのりおさんときくおさん



プロデュースとはヘッドショット率を上げること

 
──やや画一的な言い方になりますが、クリエイターに対する信仰から制作以外は外から手伝ってあげなきゃ、という思いがメジャー側にはあるのではと思うのです。他方で、今はむしろセルフプロデュースできる作家じゃないと生き残っていけない部分もあるのかなと。

AnitaSun 最近では音楽とネットは切り離せないものになってきていますが、少なくともネットでは、今はセルフプロデュースがうまい人が生き残る可能性が高いのは確かですね。その辺があまり上手くない人を見つけて、外から手を加えることで一発当てる例は、ネットに関してはあまり見ないですからね。

のりお そもそもセルフプロデュース力がないと広がらないということなんでしょうね。そしてセルフプロデュースできるならわざわざメジャーに頼る必要がないのでしょう。

与作 今はメジャーだけが持っていた情報もネット上で得られるからね。CDのプレスの方法とかも見つけられるし。

きくお 自分もセルフプロデュースは上手い方ではないと思うんですが、そういう物のおかげで楽に出来過ぎてる感じがするんです。

AnitaSun いやいや、上手いですよ。動画のつくり方とか他の人と絶対カブりませんもん。

きくお ただ単に他人との交流がないせいだと思っているんですが……

与作 ちょっと失礼かもしれませんが、ボカロ界隈から遠い自分の所まで名前が流れてくるきくおさんって珍しいのですよ。

AnitaSun NHKの「みんなの歌」みたいなPVがいきなり出てきて、手描きで何かすごいなぁと思っていたら、あ!死んだ!!、血だ!!!って(笑)。

きくお あれはまだ動画を投稿しても1万再生もいかない時代で、勝負をかけるためにインパクトの強い内容でいったんです。

AnitaSun その考え方こそセルフプロデュース中のセルフプロデュースですよ! 例えばそういう事考えるのがプロデューサーって言うんですよ!

与作 シューター的に言えばヘッドショット率上げるのがプロデューサーってことですね。

AnitaSun 音楽以外にも言えることだけど、複数人でモノを考えると、安打は増えますが、角が丸まってホームラン率が下がるんです。角が丸まると何が起こるかと言うと、2ちゃんまとめサイトに載らなくなるんですよ!

与作 わかりやすい(笑)

AnitaSun 多くの人にフックされるには強烈なネタがないといけなくて、これを複数人でやると絶対にならされちゃうんです。そこをひとりの判断だけで突っ走れば、命中率は極端に下がるけどヘッドショット率だけは上がる。今、そいつらがトップニュースを占拠している中で突き抜けるには、同じく一人の独善的・独裁的な判断で突っ走らないと、まとめサイトが記事にするような衝撃的な何かは中々でてこない。

与作 クリエイター側は火力のパラメータを持っていて、プロデューサー側が命中率のパラメータを持っている感じだね。

AnitaSun そこで補い合える関係だといいんだけど、頭として考える側のメンバーが4人とか5人とかに増え過ぎると、ヘッドショットは狙えないと思います。

与作 ってなると、今俺の目の前にいる、全部1人で出来ちゃったきくおさんはやっぱり強いなぁ。

与作さん



創作意欲を引き出すためのイベント開催

 
──そうした、1人でも活動できる人たちが、今回Apolloに参加する意味っていうのはどのよういうところにあるんですか?

AnitaSun 即売会の会場だとジャケ買いすることが多いですけど、それで知らないアーティストも買われる訳です。そこにおいては、(即売会では後ろに並ぶ人の関係でやりにくい)試聴がたっぷりできる環境というのはより強力で、これをきっかけに新しい大手サークルに生まれてほしいんです。

M3試聴スペース

M3など試聴環境が整えられた会場であっても、全作品に耳を通すことは物理的に難しい



のりお 15秒で切り替えながらどんどん垂れ流しで聞くことが出来て、1000作品まとめて聞けるっていう環境は今のところ他にないと思うんですよね。

きくお 場があるっていうのは素直に嬉しいですね。つくり手としては音楽で場を盛り上げたい気持ちがあるから、安心して参加できるところが良いです。パッと見た時に面白そうと感じたので、自分もこのお祭りに参加したいなという気持ち。

与作 Diverseは純粋に「Apollo」の告知ページを見て、キレイだったからこれやろう、って感じです。その辺のつくりとか見ればちゃんとやるなっていう判断が出来ますもん。

きくお 儲けのためだけじゃない、好きだからやってる感じが伝わりますよね。

AnitaSun この間、テナントショップ「ニコニコ本社」の移転に合わせて、ニコニコ×PARCOの広告が池袋に一杯出ていたんですよ。あれを見ていると広告をつくる側が楽しんでつくっているのが伝わってきますよね。金のことだけ考えていてもヘッドショット率は上げられませんもん。

のりお あと、祭りを設定することで、物をつくろうと思ってもらえるきっかけを提供したいなと思っています。さっきも締切に向かって創作活動をしているという話も聞きましたが、例えば普段生活していていきなり「あ、Tシャツつくろう」とか、なかなか思わないですよね。何か作品を出す場所やイベントがないとそういう考えにはならないんです。

僕らはpixivを運営していて、人々の創作意欲を日頃から浴びていたので、BOOTHをつくれば商品をつくって登録する人が増えるんだろう、と安易に思っていたけど、実際はなかなか難しい。やっぱり商品となると1枚イラストを描くだけよりコストもかかるし、売り場があるだけでは人はものをつくらない。目標となるイベントがあることでそういう意欲が湧いてくるのだと思うんです。

きくお サービスを知る機会としても、こういうイベントのようなきっかけがないと比較検討とかしないんですよね。今回のきっかけでBOOTHについても調べたんですが、これから同人ショップでまかないきれないグッズ販売などでも使っていこうと思っています。

AnitaSun ちゃんとお金で買ってもらえるっていうことは気持ちが良いことだし、下心でもあるんです。それがたとえ赤字でも、値段をつけたものを買ってくれるほうが、無料で聞かれることから比べて本当に満たされるんですよね。

与作 僕も企画をつくるときに、これは赤字でもそういう企画だし問題はないけど、赤字なら赤字なりにどうするか。これは企画としては恐らく黒字になるだろうから、じゃあどうやって人の手にとってもらえるようにやっていくか、とか考えます。

AnitaSun お金って、他の得点付けに比べて、かなり承認欲求を満たしますから。

きくお 払う側としてもこの作品を楽しみたいんだという確認になります。

与作 お金を払うのは価値を認めている証拠だからね。

Webだから実現できる販売方法、内容


──そういえばApolloにはデータ容量制限ってあります?

のりお 3GBの制限があります。

与作 あ、それじゃ「A.D.2011 COMPLETE」をApolloに出そうと思ったんだけど無理ですね。こいつ8GBあるんだもん。このあいだの夏コミで、USBに2011年につくった曲を全部入れるっていうことをやったんですよ。

AnitaSun これ、確か1枚あたりでも結構なお金かかってたはず。

与作 制作原価1000円/枚越えてます。

のりお このパッケージカッコイイ〜〜〜こりゃ、BOOTHの容量10GBに増やさなきゃ(笑)。(現在は10GBに増量済み)

データの話で言うと、Apolloに関しては出品者にWAVデータを上げていただき、こちらでMP3やAAC、FLACなどに変換するので、購入者がお好みのデータ形式を選んでダウンロードできるようになっています。

A.D.2011 COMPLETE

「A.D.2011 COMPLETE」。一年分の楽曲が1本のUSBメモリに収められている



──ダウンロード頒布だとCDのハードに縛られない分、いろんな冒険をしてくる人が出てくるのもちょっと楽しみにしているんですよね。

AnitaSun みなさんにも、アルバムジャケットのイラストデータをレイヤー分けされた状態でアタッチして頒布するとか、是非ぜひこの機能で遊んでみてください! 私は、楽曲の全制作データをzipでおまけに付けたいと思っています。

与作 今「works.」のDJミックス音源ってのが頭によぎったなぁ。作業中ずっと垂れ流しておけるやつ。

AnitaSun そういえばきくおさん、最近よくDJされてるじゃないですか。どういう曲かけてるんですか?

きくお DJと言ってもいいのかな?基本的に自分の曲しかかけないんですよね。他の人の曲をかけたくないというか。

与作 それライブに近い感じですね。

のりお でもそういうやり方のほうが好きなファンも居ますよ。昔はよくFatboy SlimのDJとか行っていたのですけど、DJ本人の曲はほとんどかけてくれない。本人的には盛り上がる曲を選んでいるんだろうけど、一方でその場のファンはやっぱり本人のオリジナル曲が聞きたいっていう事はありますよね。

与作 よくそういう話は聞くんですが、曲をかける側は良い曲があるからそれを紹介したくて、聞く側はそれよりも本人の曲が聞きたいっていうことだと思うんです。僕の中では「DJ」なのか「ライブ」なのかで分けて考えています。

AnitaSun 私は滅多にDJやライブをしないんですが、もし今度やるときはみんなライブ会場の床に座って聞いてもらいたいな(笑)

大切なのは「部屋の匂い」

 
──イベントとして、場をつくるにあたって、ただ用意するだけでは絶対に盛り上がらないと思うんです。活発な場をつくるためには、やはり哲学も必要だと考えるのですが、「Apollo」はいかがですか?

AnitaSun その通りです! 個人的にいろんな所で言っていることなんですが、哲学というのは、要はつくった人の部屋の匂いなんです。

昔の2ちゃんねるはひろゆきの部屋のにおいがした。出来たばかりのニコ動も、ひろゆきと戀塚さんの部屋の匂いがしましたよね。スルメ食いながらパンツ一丁でこれ見てるんだろうなって感じが凄く伝わってくるんです。そしてそれに賛同する人がやってくる。

これがもし、そういう雰囲気付けもなく、ただ単純に「自由に動画を投稿できる、宣伝にも利用できる場をつくりました」というだけのサービスだったら、企業広告だらけになったはずなんです。それが、あの独特の匂いのおかげで、サービス開始初期はあそこでCMを投稿しようっていう発想に至った企業はほとんどいなかったんですよ。雰囲気的にアングラすぎて、リスキーでしたからね。

与作 確かに最近そういう広告が実際に入るようになってからはニコ動見てない感じがするな。

AnitaSun 最近はちょっと部屋の匂いが薄れちゃった気がしますね…。

今回のApolloは、そういう我々の部屋の匂いを頑張って出すよう努力しています。片桐社長にはもっと間口を広げてもいいんじゃない? と言われたんだけど、そこは絞らなきゃダメなんです。それぞれ場ごとの匂いっていうものがあって、例えば弾き語り系のインディーズの人だらけの場所になっちゃったら、同人界隈の人は当然投稿しにくくなります。だから、目的に沿って絞らないといけない。

立ち上げ当初のmixiも「これはオシャレな人の部屋の匂いがする」って思ったもんね(笑)。すっごい、本当に自分だけの感覚だとは思うので恐縮ですが…FacebookもFacebookで、あれはキョロ充の匂いがします。

……ってこのくだり、流石にまずいので、記事からは削ってくれると信じてお話しているんですが……

──面白いんで載せましょう!リード文にしたいくらいです!

AnitaSun うわーーーっ、ちょっと待ってください、せめて、めちゃくちゃ申し訳なさそうな雰囲気で文字に起こしてください!!

自主制作の方がお金になるクリエイターもいる時代

 
──では、最後に、まずきくおさん・与作さんにこれからの活動について伺いたいと思います。

きくお 実は今、商業の仕事をほぼ全部断っているんです。

AnitaSun えっ!?

きくお 元々商業仕事との両立が上手くできていないところもあって、アーティストとしての活動一本に絞ろうかと。大体年間100曲くらいつくっているんですが、自主制作でVOCALOID曲として公開しているのが年4曲くらい。他に書き下ろしで20曲くらいあるんですが、その他の80曲は商業用に納品しているんです。でも、どっちが収入になるかというと、圧倒的に単価は自主制作の方なんですよ。

AnitaSun (きくおサウンド程のサークルなら)そりゃそうだ!

きくお 生活にも若干余裕が出てきたので、しばらくアーティストワークに絞ろうかと水面下で用意しているところです。締切がある方にどうしても力を割いちゃうので、今のままだとバランス取れなくて……。 もしかしてクリエイターに向いてないんじゃないのかなとか思う時もあるんですが。

AnitaSun みんなそう思いながらやってるし、きくおさんの場合実際に自主制作だけで生きていけるからこそ、こちらに舵を切れるんだと思いますよ。それこそ同人音楽のイベントがなかったら、致し方なし商業の受け仕事だけでやってたであろう人がもっと居たはずです。

同人は本来、決して売上を稼ぐためのフィールドではないとはいえ、現実に以前には存在しえなかったタイプのアーティストワークが発生している貴重な場になっているので、そういう人のために自分もインフラを用意しなきゃいけないと思っています。

与作 Diverseは今後のCDの計画ならすでに来年の予定まで決まっているんですが、それはともかくとして、ずっと決めていることとしては、若い子たちの面倒を見て、機会が来たらうちを踏み台にして上に行けという話をしてます。

気にせず他所に遊びに行っていいから、夕飯までには帰ってくるんだぞ、と。

AnitaSun それは昔からちゃんと機能してますよね。Diverse卒業組はかなり層が厚い。

──通販の方はどうです?

与作 Diverse Directは一旦俺が一人で限界まで回してみようというコンセプトにしています。あと、自前での限界がどこなのか。お金が絡むのでちゃんとはやりますが、僕なりのゲーム感覚って事で。やれるところまでやってから次を考えようと思っています。
あとはよく通販に「うちのCDも置いてくれ」って頼まれるんだけど、何でも置いちゃうと「部屋の匂い」が消えちゃうから、現状はDiverseに参加したり、僕が見て良いなあと思った人だけということにしてます。

それと、基本的にうちには商業仕事の依頼は来ないのだけど、来た場合はクリエイター側に直接流すようにしてますね。この間のコミケでUnityの企業ブースで出したCD制作を協力した時みたいに、どうしてもって言われた時は「おやつ係」でクレジットしてもらってます。

AnitaSun 今さらながら、今回この場にネットレーベル周りの人も呼べば、また違った視点から話しできたんだろうなぁ。

与作 あのあたり、完全に別の所で生計立ててる人も多いもんね。

AnitaSun 説明しておかないといけないのが、同人音楽とネット音楽は元々は文化圏が違うと言うことでして、初期の同人音楽は例えばゲーム音楽の作家さんなどが割合として多かったし、コミケとかM3などのリアルなイベントを中心の文化でした。

一方でネット音楽は、インターネット最初期はMIDI系のコミュニティのほか、BMSの存在が大きくて、BMSにはエロゲー等のゲームアレンジを中心にやっていた人達と、メガデモやModPlug(インターネット初期の時代に流行った、無料のサンプラーソフトウェア)などを使ってテクノ・ハウスをつくっていた人が同時に現れて、喧々諤々喧嘩しながら共存していたんです。因みに話がそれますが、多分海外ではModPlug界隈に居たようなタイプの人達は、後にSoundCloudに流れていったように見えます。ModPlugはそういう界隈でした。

与作 その殺伐感がかえって良かったんじゃないかな。それと、BMSは良くも悪くもゲームとして遊べたのでプレイヤーが付いてきたのも大きかったね。

AnitaSun その後プレイヤーズ王国や東方が出るんですよね。

与作 東方も初めインスト曲ばかりだったのが、歌モノでヒットしてボーカリストが目立ったり。

AnitaSun 東方のボーカリストは、それまでの同人界隈のボーカリストとはコミュニティが異なっていた気がしますね。しかもその後ニコ動では「歌ってみた」が流行るんだけど、その歌い手もまたこれまでの同人界隈のボーカリストとは違う人たちで、歌手はコミュニティが変わるごとにどんどん新しい人達が出てくるのが面白い。一方で作曲側やデザイン・3DCG側は、BMS界隈の出身者が結構多いですね。

──ではApollo運営側のお二人からも最後に一言お願いします。

AnitaSun 一時期の新陳代謝が減ったような雰囲気が怖くてこういうことを始めたので、ひとまず初回としてこのイベントを成功させて、次の大手サークルが出てくるきっかけになれるような場になってほしいですね。

のりお pixivが始まって以降、イラストの請負仕事で食べていける人が増えました。でも頼まれ仕事ではなく自分のオリジナルの絵で食べていける事も大事だと思うのです。これはイラストだけではなく音楽でも同じことですし、BOOTHではそういった人たちのサポートを目指しているので、今回の「Apollo」でも自ら生み出した作品で生きていけるような世界になることを目指してやっていきたいなと思っています。

集合写真