10月のジャマイカ戦では投入直後に鋭いクロスを入れてチャンスを演出。ブラジル戦でもチャンスを生み出した。(C) SOCCER DIGEST

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 10月の日本代表の2試合を通じ、太田宏介が左SBとして急速に存在感を強めている。今後のさらなる飛躍を予感させたのは、ジャマイカ戦での積極的な仕掛けから放った一本のクロスだ。長友が定位置として久しい左SBのポジションに、新たな風を吹き込むのはこの男かもしれない。

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――10月の代表活動を経て、リーグ戦では好プレーを連発。ノッている印象があります。
「どうですかね。ずっと冷静というか、ここまで同じモチベーションで臨めています。代表戦も特に緊張せず、リーグ戦と同じ感覚でできましたから。クラブと雰囲気は少し違いましたが、環境の違いに関係なく普段どおりのスタンスでゲームをこなせるようになったのは、成長したと思える部分です」
 
――緊張しなくなった要因は?
「この1、2年で自分に自信が持てるようになったのが大きいです。特に今年はミステル(フィッカデンティ監督)から守備の意識・技術を改めて教わって、それを上手く表現できていると思います。それから、年齢を重ねるにつれて周りが見えるようになりました。だから、若手への声かけ、練習の雰囲気を感じ取っての行動・言動を今年からだいぶ強く意識してやっています。年齢的(27歳)にもチームを引っ張らないといけない立場になったので、単なる盛り上げ役にとどまらない役割をこなさないとダメですよね」
 
――FC東京では、昨季よりも裏を取られる回数がだいぶ減りました。
「昨季はポポヴィッチ監督に『裏のスペースは森重にカバーさせるから、前へ行け』と言われていました。攻撃的なサッカーを目指していたので、守備以上に組み立てや仕掛けの局面での貢献が求められていましたが、今はディフェンスから入っています。中盤の3枚(インサイドハーフ2枚とアンカー)を上手く動かしながら、後ろの4枚が崩れずに守るスタンスなので、必然的に攻め上がる回数は限られます。確かに以前よりポジショニングに気を遣うようにはなりましたけど、自分の成長とは無関係かなと。クラブで標榜するサッカーが変わって、ただ単にリスクを冒さなくなっただけです。ミステルの下で気付かされたのは、こういうサッカーもあるということですね。守備から入って無失点に抑えると、『ああ、今日は仕事した』と快感を覚える試合もありました。それは新しい発見でもあったので、ミステルには感謝しています」
 
――ベテランの羽生選手も、「この歳になって守備の楽しさが分かった」と話していました。「僕や羽生選手に限らず、守備への考え方が変わったのはおそらく全員だと思いますよ。そのなかでチームとして共通意識を持てるようになったのは、とても大きいです。昨季は気持ちが乗ると手がつけられないほど強かった半面、崩れる時はとことん崩れました。ミステルの練習はそういう波をなくす意図がありますし、FC東京に新しい土台が築かれている実感があります」
 
――ただ、代表戦ではあまり良い守備が見られませんでした。(10月14日の親善試合で)ブラジルに4ゴールを叩き込まれ、冷めてしまった日本のサッカーファンも多かったと思いますが、あの敗戦をどう捉えていますか?
「許されない失態です。相手がブラジルでもドイツでも、0-4はあり得ない。アンダー世代の代表が世界大会への切符を逃した悲劇も重なり、『これから日本は大丈夫?』とネガティブな声もありますが、それは仕方ありません。言い訳が許されないのが代表だと思うので、まずは現実をしっかりと自分の中で受け止め、消化したい。そのうえで、とりあえず個のレベルアップに励みたいですね。まだまだ伸びる部分はあるはずですから。1、2年後、またブラジルのような強豪国と戦う機会があれば、『あの敗戦があったから今がある』と言えるようなパフォーマンスを見せたいです。僕の中で、アジアカップの優勝はノルマ。アジアを越えて強いと評されるチームに成長しないと、本当の意味で這い上がれないような気がします」