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情報通信研究機構(NICT)は11月11日、他者の動作を予測することと、自分の動作を行うことには共通した脳内プロセスが関与していると発表した。

同成果は、NICTの脳情報通信融合研究センターと、フランス国立科学研究センターの共同研究によるもので、11月11日付け(現地時間)の国際科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

脳がどのようにして他者の動作を理解し、予測しているかについては、今まで、ほとんど解明されておらず、「他者の動作を予測する場合には、自分が同じ動作を行う場合と同じ共通した脳内プロセスが使われる」とする仮説が有力視されるに留まっていた。

同研究グループはこの仮説を検証するために、ダーツのエキスパートに対し、エキスパートが素人のダーツ結果を予測する予測課題とエキスパートがダーツボードの中心を狙ってダーツを投げる運動課題を実施。エキスパートの(素人のダーツ動作に対する)予測能力が変化する場合(実験1)と変化しない場合(実験2)で、エキスパート自身のダーツパフォーマンスにどのような影響が出るかを調べたという。

その結果、予測課題では、エキスパートは、最初は、正確に予測することはできなかったが、徐々に、素人の動作を観察するだけで、ダーツの命中場所を予測できるようになった。これは、予測課題の学習を通じて、他者動作の予測に関わるエキスパートの脳内プロセスに変化が生じたことを意味する。もし、この脳内プロセスが、自分が運動を行う場合にも関与していれば、このエキスパートの運動にもその影響が現れると考えられる。

実際に、この予測課題の前後にエキスパートに運動課題を行ってもらうと、予測能力向上後は、予測能力向上前に比べて、エキスパートのダーツパフォーマンスが悪化するという結果が得られた。一方、実験2では、エキスパートの予測能力はほとんど向上せず、この予測課題の前後におけるダーツパフォーマンスにも変化は見られなかった。

このように、他者動作の予測能力の変化が、因果的に自己の運動能力に対して影響を与えるということは、他者動作の予測と自己動作の生成の基盤となる共通した脳内過程の存在を反映していると考えられる。

同研究チームは「今後、他者動作に対する予測能力を改善させることによって自分の運動を改善させる、あるいはその逆の改善的変化を誘導するような、他者動作の予測と自己運動の間の相互作用を生かしたリハビリテーション法や認知・運動トレーニング法の開発を目指してく」とコメントしている。