橋下市長誕生から約3年。大阪市はどのような町に生まれ変わったのか。薬師院教授いわく、

「市政をメチャクチャに混乱させるだけで、失政続き。例えば『クールジャパン戦略』として日本のアニメやゲームなど、ソフト産業が集積する拠点を関西空港対岸のりんくうタウンに整備しようと事業者を公募したら、まさかの0件。橋下氏が導入した区長の公募制度だって、任期途中で4人も辞めています。センスはなく、勘どころが悪いとしか思えない」

 これらは氷山の一角にしかすぎなかった。橋下氏の就任以降、新たな問題が勃発しているのだ。

 09年の大阪府知事時代には、行政改革で専任の学校司書を廃止。そのしわ寄せで業務を割り振られた教職員の手が回らず、府立高校の2割の学校図書館が利用できない「開かず」の状態であることが報じられた。また、公立の小中学校では講師が足りず、3カ月間授業なしが続いたこともあり、子供たちが政策の失敗に巻き込まれている。街の安全も脅かされ、街頭犯罪の年間認知件数は増加。4年ぶりに全国ワースト1位に躍り出た。

「雇用の面でも大阪はよくありません。都構想の議論でどんな町になるのか未来が見えないため、企業誘致が進まず、雇用が増えない。極端に言えば、今の大阪は政情不安な国であり、シリアに工場を出したい企業はない、というのと同じ状況です」(薬師院教授)

 テレビでの派手なパフォーマンスも橋下氏の専売特許だったが、市民の見る目は変わってきている。

 10月20日に大阪市役所で行われた在特会代表者との「公開討論」では、暴言を吐いたあげく、相手を途中で退席させた。面会後には、5日間で電話やメールによる1355件の批判が市に殺到したという。

「在特会とのバトルは相手のペースに乗せられ、完全にノックアウトされて赤っ恥をかいた。橋下氏は大阪人の本質を見誤ったのではないでしょうか。誰かれかまわずケンカを売る戦法は出始めはおもしろがりはするけど、案外、大阪人は腹の底では冷静に見ていて、薄っぺらさを見抜かれてしまった。最近はテレビに出演すると視聴率が下がり批判が寄せられるので、局から声がかからなくなってきています」(大谷氏)

 大阪市民に聞いても、

「住民投票? 誰もそんなもんには行かんのとちゃうか。大阪府民は(都構想に)大した関心はないで。どっちでもええというか、『中身はようわからんけど、橋下がまだギャーギャー言うてて困ったもんや』という程度でっせ」

 さらに、関西のテレビ局関係者も、こう顔をしかめるのだ。

「大阪都構想のニュースで『この内容では府民は理解できない』と報道したところ、橋下氏から『そういうことを放送で言うなら、どこがどうわからないのか、記者会見で聞いてください』とケンカ腰で反論されました。もう関わりたくないのが本音です」

 それでも専決処分で住民投票までなだれ込めば危険な状態になると、薬師院教授は警告するのだ。

「橋下氏は自転車操業の連続で生き延びていますが、選挙になればやはり上手で、なかなか転ばない。市民の中には都構想がどれだけいいかげんで否決されたのか、知っている人が少ないのも事実。タレント人気を使って『大阪を変えるんだ』という雰囲気を作り、耳ざわりのいい言葉を並べて民意に訴えかければ、『風』が吹いて都構想実現となる可能性もあるのです」

 大阪市民はいつまで橋下氏に振り回され続けるのか。