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通称“トクホ”と呼ばれ、消費者庁からお墨付きを与えられた特定保健用食品。これらの商品と通常の商品との違いは、特定の保健効果が科学的に認められるという点だ。許可を受けている商品は、飲料からお菓子、加工食品など多数のカテゴリーにおよび、2014年10月2日現在でその数は1,000を超えている。

中でも手軽に摂取できることで人気なのが清涼飲料水分野だ。キリンビバレッジがトクホ史上初のコーラ系飲料として2012年4月に発売した「キリン メッツ コーラ」が大ヒットして以来、人々の間で認知が多いに高まった。そして、現在、トクホ飲料部門で売上1位を記録しているのが、サントリー食品インターナショナルの「伊右衛門 特茶」だ。2013年10月の発売から1年が経ち、トクホ飲料市場で不動の地位を確立した同製品のヒットの背景を、同社 食品事業本部ブランド戦略部の新関祥子氏に伺った。

新関氏によると、トクホ茶系飲料には、主に「脂肪対策系」と「血圧対策系」があるが、全体の80%以上が前者にあたるという。トクホ市場における脂肪対策お茶系飲料の登場は2004年頃からで、同社の「黒烏龍茶」や花王の「ヘルシア緑茶」などがヒットをとばした。2013年に発売された「伊右衛門 特茶」についても「脂肪対策系」に当てはまり、脂肪対策を期待する消費者の間で人気を博している。

そんな中、同製品が他のトクホ茶系飲料と違うのは、“脂肪の分解”に着目した商品であること。大半の商品が食事中の脂肪の摂取の抑制を謳っているのに対し、すでに身体に付いてしまった脂肪の分解を促進することを目的としたもので、これはトクホ飲料でも初の商品となる。

特茶の特徴である脂肪の分解を促進する効果を謳うにあたり、トクホ飲料として認められた成分は“ケルセチン配糖体”と呼ばれる植物由来の成分。たまねぎなどの野菜に多く含まれるポリフェノールの一種で、この成分が、脂肪分解酵素を活性化させる働きがあることが実証されている。同製品にはこの成分が110mg含まれ、1日1本継続的に飲むことで8週間目から体脂肪の低減効果が現われることが消費者庁によって認められているという(※ケルセチン配合体を含まない緑茶飲料との比較)。

○トクホ飲料×伊右衛門ブランド

新関氏によると、同商品の製品化にあたっては、基礎研究も含めて約7年の年月が費やされたのだという。サントリーグループには健康食品などを扱う、サントリーウエルネスというグループ企業もあり、基礎研究においてはグループの横のつながりも大いに生かされているとのことだ。

基礎研究終了後も、実際の製品化までにはさらに長い道のりがあった。その理由について「ケルセチン配糖体の脂肪の分解を促進する効果が認められたのち、伊右衛門ブランドの一商品として発売するかなども含めてさらなる検討を重ね、実際に消費者庁に申請を出してからも時間を要しました」と新関氏は説明する。

そして、伊右衛門ブランドの商品として発売するにあたり、こだわったのは “おいしさ”との両立。「従来、トクホのお茶と言うと、お客様には苦いイメージがあったりと、決しておいしいと言えるものではありませんでした。"毎日飲む"ためには味わいの面で不満をお持ちの方が多かったのです。そのなかで、『伊右衛門』という既に消費者の皆さまから支持をいただいているブランドの商品として出すからには、トクホであってもおいしさにこだわりたいと考えました。つまり『体脂肪を減らすのを助ける』という機能がありながら、いつものお茶の様に美味しく飲める、そんなトクホ飲料を提供したいと考えました」と新関氏。

伊右衛門ブランドの商品は、京都にある寛政二年(1790年)創業の茶舗福寿園の茶匠が厳選した茶葉だけを使用し、サントリーが飲料の開発及び製造を担当している。トクホとしての機能をもたせながら、ブランドとしての信頼感を損なわないようにしなくてはいけない。そして常用のお茶として気軽に飲めることにもこだわり、サイズも500mlのペットボトルを採用したという。新関氏は、同製品の大ヒットの要因の1つにはこの点もポイントとなったと分析する。

「従来のトクホのお茶は苦いものが多く、少量を飲むイメージが強く、購買層も限定されていました。しかし、この製品の場合はふだんのお茶の代わりに飲める商品と位置付けたことが幅広い層にご愛飲いただけるようになった要因だと思います。今までのトクホのお茶はどちらかと言うと、体脂肪を気にされる中年男性の消費者が多かったのですが、飲みやすく、いつものお茶と同じ感覚で飲んでいただけるということで、特に主婦の方やシニアの方にも拡大したと考えています」

また、通常のペットボトル緑茶に比べて少し割高な価格ながらも受け入れられている理由について、「今までのトクホのお茶は普通のお茶に"プラスα"として飲むという感覚だったので、結果として2本飲み物を買わなければいけませんでした。それがこの製品の場合、今までの1本を『特茶』に置き換えればいいのでトータルでは割安ということになります。いつものお茶にプラス数十円というのが、トクホとしての機能が載っている分だと納得してご購入いただいているのではないかと思います」と推測した。

最後に、同製品の成分であるケルセチン配糖体をほかの新商品でも展開していくのかの質問に対し、新関氏は「他の飲料でも同様の効果があるかは未知数です。それぞれまた一から研究開発を行うことになるので、すぐに発売出来るわけではありませんが、サントリーは今後も様々な可能性を検討しながら研究を続けていきます」と、前向きながら慎重に回答。特茶が大ヒットにつながるまでの経緯が、いかに容易ではなかったことを改めて思い知らされた。

(神野恵美)