>>【前編はこちら】11/10は“いいトイレ”の日! 女性トイレハンターがお勧めする「日本の珍トイレ」とは?!

全国各地のトイレを取材する「トイレハンター」として活躍するマリトモさんへのインタビュー。後編では、仕事に対する情熱や、長年苦しめられた病気との闘いなど知られざる素顔に迫りました。

    物心がついた頃から、トイレの夢をよく見ていた

――トイレに興味を持ち始めたのはいつ頃からでしょうか?

マリトモさん(以下マリトモ):物心がついた頃から、トイレの夢をよく見ていたんです。例えば、隣と仕切りがなかったり、ドアはあってもドアの下の高さがありすぎて丸見え状態だったり、かなり戸惑うような内容でした。なんでそんなに夢に出てくるんだろう……と不思議に思っていたのですが、その頃はまだそれくらいにしか意識していませんでした。

その後、高校を卒業して夢だった映像制作の会社に就職するため、映像系の専門学校を経て、PVやCMを撮る映像制作プロダクションでADとして働き始めました。ただ、夢が実現したのもつかの間で、もともと身体も弱かったこともあって激務に耐えられず、映像の道を断念しなければいけなくなりました。

――そのときの挫折はマリトモさんにどのような変化をもたらしたのでしょうか?

マリトモ:いまでも思い出すとつらいのですが、映像の会社を辞めてからは何をしていいか分からず、今日は介護の仕事で明日はコンパニオンという具合に、その日暮らしの仕事をしていましたね。毎日生活するだけで精一杯だったのですが、でも生活していかなくてはいけないと考えたときに、この先に活かせるスキルは身につけたいなと思ってウェブやライターの仕事を始めるようになり、新たなキャリアをスタートすることになりました。

    トイレをしてしまった会社には必ず受かった

――トイレの情報を集め始めたのはその頃からでしょうか?

マリトモ:そうですね。当時転職をするたび、面接のため会社へ訪問するのですが、その際に緊張してトイレをすることがよくあったんです。ただ、トイレをしてしまった会社には必ず受かったこともあり、、そこでトイレの存在を意識するようになりましたね。それから訪れる先々にあるトイレがすごく気になるようになって、派手さやユニークさがなくても、気になるトイレは写真や日記に記録するようになりました。それが10年前くらいからですね。

――現在、トイレにまつわる書籍も執筆されていますが、その頃からトイレに関する仕事をしたいと思われていたのでしょうか?

マリトモ:全く考えていませんでしたね。仕事につながるとかではなく、趣味というか無意識で行動していました。旅行と絡めて気になるトイレを取材しに行くとか、面白いトイレがあると聞くと自費で出掛けるといったかたちでしたね。

ただ、数年前にパニック障害を発症してしまって、今では満員電車や飛行機、新幹線でも各駅停車しか乗れないんです。トイレのためならどこへでも行きたいと思っていますが、移動も車でないと厳しかったり何かと不自由で。健康であることの有り難みについてつくづく考えさせられました。「今やれることは、今やらないと後悔する」。病気という痛い目にあって学びましたね。

トイレも当たり前のようにありますが、そもそも世界中でトイレがある国は50%しかなく、さらに水洗式のトイレとなると先進国のわずかな国でしか普及していません。トイレハンターとして活動しようと思ったのも、貴重なトイレの存在に共鳴するところがあったのかもしれません。

    トイレに抱くマイナスのイメージを少しでも払拭させたい

――トイレハンターとして、これからのご活動の展望を教えて下さい。

マリトモ:「汚い」「くさい」というような、利用者がトイレに抱くマイナスのイメージを少しでも払拭させたいです。日本人はトイレに恵まれていることに感謝すべきですし、トイレを通じて誇れるようなプラスの面をアピールしていきたいと思っています。

また、国内の女性用トイレはパウダールームがあったり、ナプキンや油取り紙、ハンドクリームなど、いろんなアイテムが置いてあるなどかなり充実していますが、男性用トイレは、温水洗浄便座をはじめ個室の数もまだまだ少ないのが現状です。ですから、例えばひげを剃れるスペースがあってもいいかもしれないですし、より快適な空間に改善していけると思うので、そういったアイデアなども発信していきたいですね。

あとは、壮大な野望ではありますが、私が日本の地方に眠る面白いトイレを発掘して紹介することで「旅行ついでにちょっと寄ってみようかな」という方が増えたりと、トイレを通じて地域の活性に繋がるといいなと思っています。

(末吉陽子)