出演者の集合写真/左から司会の山田幸美さん、アニメコンシェルジュの氷川竜介さん、『龍の歯医者』アニメーション監督の鶴巻和哉さん、キャラクターデザイン・作画監督の亀田祥倫さん

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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」などを生み出してきたカラーと、「niconico」などを運営するドワンゴによる、日本アニメーションの可能性を探る共同企画「日本アニメ(ーター)見本市」がいよいよ始動した。

11月10日(月)、放送されたアニメ本編を、毎回制作陣と共に振り返る番組の初回が放送され、7日から公開されている『龍の歯医者』のアニメーション監督をつとめた鶴巻和哉さん、キャラクターデザイン・作画監督をつとめた亀田祥倫さんが登場した。

番組の冒頭には同社の代表取締役社長の庵野秀明さんが登場し、ファンを驚かせた。

さらに、「日本アニメ(ーター)見本市」では、今後控えている30作品ほどの中で、セリフがある作品に関してはすべて林原めぐみさんと山寺宏一さんで演じることも発表された。

記事の最後には、番組で発表された、林原さん、山寺さん、そして監督の舞城王太郎さんによるコメントの全文も掲載

11月14日(金)から配信される第2弾は、ショートアニメ『監督不行届』の監督をつとめた谷東さんによる、自転車を題材としたアニメ『HILL CLIMB GIRL』が放送される。

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『HILL CLIMB GIRL』



舞城王太郎は『巨神兵東京に現わる』がきっかけ


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冒頭、サプライズ出演した庵野秀明さんは、「日本アニメ(ーター)見本市」第1弾の監督・原案・脚本をつとめた舞城王太郎さんについてコメント。

舞城さんとの出会いは、展覧会「館長庵野秀明 特撮博物館」のために自身が脚本を手がけた特撮作品『巨神兵東京に現わる』を制作した時のこと。

監督の樋口真嗣さんから「普通の特撮作品ではなく、文学の匂いをさせたい」という要望を受け、庵野さんの妻でもあるマンガ家・安野モヨコさんがかねてから舞城王太郎さんの熱烈な読者だったことから、舞城さんに詩のようなものをつけてもらうことを思い付き、オファーの結果“言葉”を担当してもらうことに。

庵野さんは、舞城さんの参加について「すごい良かった。舞城さんの言葉があるかないかであの作品の質は全然変わった」と激賞。それがきっかけで交流が始まった舞城さんに「日本アニメ(ーター)見本市」の企画を持ちかけたところ、あっという間に20本ほどの企画書があがってきたという。

放送後にうかがったところ、その中には、舞城さんが以前行っていた、企画を公開して映像化してくれる会社を募集する「REAL MORNING COFFEE」と銘打ったプロジェクトからの作品も多数含まれていたということだった。

舞城王太郎は、エネルギッシュでよく笑う人


龍の歯医者 キービジュアル


『龍の歯医者』では、当初、舞城さんには原案と脚本だけを担当してもらうつもりだったものの、監督もできそうだと思って頼んでみたところ、快諾してくれたそうだ。

舞城王太郎アニメ初挑戦作品となった『龍の歯医者』についての感想を振られた庵野さんは、「おもしろいんだけど、僕はよくわからない(笑)」と正直なコメント。

アニメーション監督をつとめた鶴巻さんは、出身地と年齢以外の一切が伏せられている覆面作家の舞城さんについて、「作品の印象通りの、エネルギッシュで、よく笑いよくしゃべる方だった」と評した。

舞城王太郎の絵コンテ初公開!


20本もあがってきた企画書について、「どの企画も大事なので、僕には選べないからカラーで選んでください」という舞城さんの希望から、鶴巻さんが選んだのが『龍の歯医者』だった。

企画書の段階では、龍と龍の歯医者との友情が描かれるようなイメージだったが、アニメ化するということで舞城さんにプロットを進めてもらったところ、今の作品に近い形になっていたという。

制作のために舞城さん自身が用意した絵コンテでは、10分以上の尺があったそうで、それを鶴巻さんが整理する形で進行していった。

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舞城王太郎さんの『龍の歯医者』絵コンテ



短編とはいえ、ゼロから世界観をつくりあげるには多大な時間を要する。今作『龍の歯医者』の企画が始動したのは5月頃だったそうだが、舞城さんが書いた最初の絵コンテが完成したのは6月21日。

7月末にアニメーションとしての最終絵コンテがあがり、実際に映像が完成したのは10月26日に行われた東京国際映画祭での上映直前だったという。

龍のデザインを手がけた小坂泰之は、鶴巻和哉がpixivで発掘


舞城王太郎さんのイラストなどを見せながら解説する鶴巻さん

舞城王太郎さんのイラストなどを見せながら解説する鶴巻さん



舞城王太郎さんの中では、キャラクターデザインについてもかなり具体的なイメージがあったという。番組では、舞城さん自身の手によるキャラクターデザインのラフも公開された。

舞城王太郎さんによる少年兵のイラスト

舞城王太郎さんによる少年兵のイラスト



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亀田祥倫さんによる少年兵



龍のデザインも、ややデフォルメされた舞城さんの当初のイメージから、写実的な造形に変更されている。

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舞城王太郎さんによる龍のイラスト



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鶴巻和哉さんによるイメージボード



作品の肝となる龍のデザインは、キャラクターデザインとしてクレジットされている小坂泰之さんが手がけている。

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小坂泰之さんによる龍のイラスト



なんと、小坂さんの参加は、もともと鶴巻さんがイラストSNSサービス「pixiv」で作品を見たのがきっかけだったという。数年前のことだったため、すでにアカウントは削除されていたものの、同人サークル名をたよりに調べた結果、九州にいることが判明。

そこで、小坂さんに直接電話でオファーし、制作作業はすべて電話とメールだけでやりとりしたという。小坂さんからはオファーを出してから2日ほどで龍のデザインのラフが送られてきたという。

鶴巻さんは、小坂さんの起用について、「冒険ではあった」とコメント。「pixivで投稿されていたのが、世界観のある絵だった。バックグラウンドが感じられる作品だったので(アニメも)できるんじゃないかと思った」と振り返っている。

亀田祥倫を作画監督に起用した理由は「アスカをかわいく描いてくれたから」


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左は鶴巻さん、右は亀田さん


キャラクターデザイン・作画監督をつとめた亀田祥倫さんは、鶴巻さんとは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』からの付き合い。

セントラルドグマで13号機を追ってきた改2号機との戦闘パートなどを担当した亀田さんについては、鶴巻さん曰く、「上手いというよりは、馬力があった」とのこと。

「エヴァンゲリオン」という大作に参加する場合、たいていエヴァらしさを意識するアニメーターが多い中、亀田さんの原画は「キレイな絵ではなかったけれど、物怖じせずに、パワフルで勢いがあった」。

亀田さんは、「僕、エヴァ大好きなんですよ! でも、自分が原画をやってと言われたら自分らしくやるしかないと思って」と、当時の心境を振り返った。

『龍の歯医者』の作画監督起用について、「なんで僕だったんですか?」という亀田さんからのぶっちゃけた質問に対して、鶴巻さんは「かわいい女の子さえ描ければ作画監督になれる」という持論を展開。特に亀田さんの描いた「エヴァンゲリオン」のヒロイン・アスカを気に入ったことから、亀田さんに作画監督をお願いしたという。

見どころまんさいの解説番組に、視聴者からは大満足の声


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原画を見せながら解説する氷川竜介さん


番組はその後も、アニメの見どころやクリエイターへの質問コーナーなどが続いた。

番組のレギュラー出演者でアニメ特撮研究家の氷川竜介さんが注目ポイントを解説する「氷川の二度見」コーナーでは、作品空間の遠近感を表現するための技法としての雲の描き方やレイアウトについての考察が披露され、視聴者からもたくさんの納得コメントが寄せられていた。

それぞれの来歴を掘り起こす「クリエイターの履歴書」というコーナーでは、かつて亀田さんがカラーに履歴書を送ったものの返事をもらえていないまま今日に至っていることなど、意外な裏話も飛び出し、見所まんさいの番組となった。

なぜか犬派か猫派かを質問する「クリエイターの法則」コーナーでは、視聴者からツッコミを受ける一幕も。

随所に手作り感が垣間見える初回放送となったが、実際に作品がどうつくられていったのか、制作陣同士のやりとりなど、普段聞けない話も多くアニメファンにはたまらない内容で、最後のアンケートでは「まぁまぁ良かった」以上が93.8%を占める結果となった。

すでに、11月17日(月)に放送される次回の『HILL CLIMB GIRL』の解説番組も、ニコニコ生放送で立てられている。



林原めぐみコメント


今回のオファーをもらった時の第一印象


なんだか、声周りのスタッフが、やたらと気を使ってくれました。
「私たちも、良くわからないんですけど、まんが日本昔話みたいに 登場人物全てを、とにかくお二人にやっていただきたいと…、ただ、どんなふうになるかとか、全貌は全くわからなくて…」など。

「でた!!」と思いました。

とにかく、日本昔話っていうから話がややこしくなるけど 壮大なパイロットフィルム制作にお付き合いするという事と理解し、
キッズアニメも、萌え? も、グラフィックスも、歴史物も、日本のアニメの幅の広さ、奥行き、個々の才能、技術、などなどを、ある意味、即行、世界に発信するにはネットはもってこいですものね。
日本のアニメ(スタジオカラー制作の)世界へのプレゼン? と私は理解しました…が違う?



何話かアフレコして、全キャラを2人で演じることについての感想


「でた!!」と思いました。

そういう役回りかと…。我々は…。
光栄です…
たぶん
本当に…。



作品によって全て違うスタッフで、それぞれ全く違うテイストのアニメに参加する意気込み


意気込みなんてもっちゃダメです。
その作品ごとの監督の目指すところに添える用に映像を邪魔せず、映像に溶けるべく? 常にノープラン。
つっても私の声は良くも悪くも、溶けにくいのですが…。
「こうして欲しい」と言われれば、「こうする」
「やっぱりこんなで」と言われれば、「こんなにする」
ある意味そこは、EVAで慣れっこですから…。
驚かない
怯えない
悩むことに悩まない
追い込まない
ポイントを、ぼんやり出来るだけ、的確に探します。
目指しながらノックしてればヒットするだろう…と。



企画を立案した庵野さんをはじめ、カラーへ一言


しょっているなあ…と頭が下がります。
ただ、予告とかの無茶ぶりには、着いて行きかねております。
出来れば監督ご自身にお願いしたい。
ズバット風、お楽しみにとか
ライダー風、お楽しみにとか
ウルトラマン予告風、ご期待くださいとか
「ソコ」だけは、ツボにびったりはまる自信がございません!



アニメをご覧の方々、ニコ動番組をご覧の方々に一言


世界観もいろいろ、ジャンルもいろいろ、簡潔な中にある、ざらつきや感動や置いていかれる感じや、あれこれ存分に味わってください。
もっと見たい! の手前っ…。
お楽しみに(サザエさん風)



山寺宏一コメント


日本アニメ(ーター)見本市について


素晴らしい企画! さすがカラーさん! 注目を集めれば、そこから才能あるクリエイター達が世界に羽ばたいて行く事でしょう! えっ? 声は二人? そりゃ大変有難いし、林原さんとなら面白いと思うけど、全部ってのは無理があるんじゃない? そのせいで作品の足引っ張る事になりゃしないか? いや、庵野さんがそう言うなら喜んでやらせて頂きます。


作品によって全て違うスタッフで、それぞれ全く違うテイストのアニメに参加する意気込み


いろんな方に知って貰うチャンス! 「今更やまちゃんじゃないでしょ」「若くてもっと良いのいっぱいいるよ」と思っても、強制的に使わなきゃならないんだから。あとはこちらの頑張り次第。結果良かったら、長いのも宜しくです!



アニメをご覧の方々、ニコ動番組をご覧の方々に一言


若いのから老けまで頑張ってやってます! 無理も承知です! 声優の事は気にしないで作品を、クリエイターの才能と可能性を見て下さい! 短いから観やすいでしょ?
あっ、やっぱり二人だけでやってる事も少し気にして下さい。



舞城王太郎コメント(データ上は縦書き)


アニメーション業界では初めまして。舞城王太郎と申します。物語の受け取り方について、読者、視聴者、観客の方々の解釈を限定したくない、狭めたくない、独自性を確保したいという気持ちから姿も声もできるだけ出さずにお仕事をさせていただいています。とは言えせっかくのイベントに参加せずにすみません。失礼をお許しください。

小説、マンガ、実写映画やドラマ、そしてアニメなど、物語にはいろんな表現の方法があって、それぞれに、それじゃないと踏み込めない領域や、見せられない情景や、獲得できないリズムや、飛び込めない世界観というものがあるんじゃないかと考えています。言い換えればそれぞれにそれぞれの味があります。同じ物語でも表現によって味わいの違いが生まれ、上手くいけば膨らみと深みと喜びと楽しみを大きくするはずだと思います。

今回参加させていただいた『龍の歯医者』は是非ともアニメにしたかった物語です。その気持ちの詳細をここで語るのは、そもそも皆さんの前に出てこない理由を台無しにするのでやめますが、ご覧になっていただければご理解いただけるんじゃないかと思います。

や〜〜〜、と、くだけた口調で申し上げますが、表現方法の選択で、実際的に異なるのは単純にそこに関わる人数と時間で、小説なら一人、マンガなら一人から数人、実写映画やドラマなら登場人物分の役者と必要な分のスタッフが関わりますが、アニメは登場人物の一挙手一投足にたくさんの描き手が必要です。登場人物がヨッと手を挙げる動作なら、小説ではそう書くだけ、マンガなら一コマ、実写なら役者とスタッフ揃ってもらって数時間仕事、アニメは絵コンテ描いてレイアウト決めて原画を描いて動画を描いてそれをチェックしてひょっとしたら直して色塗って背景塗って重ねて撮影して何かの失敗や不具合が出たらリテイク取って撮影し直し、という過程にいろんなスタッフが関わり続けます。大変です。た〜〜〜〜〜〜いへんです。いやもうホント、小説でなら「よっ、」のひと言なのに。

でもその大変さを経て表現するアニメにしか獲得できない味わいが確かにあるのです。それを求めて、そしてそれを極めるべくこれからも大勢の人たちが頑張るわけですし、舞城王太郎自身も精進していきたいと思います。

同時に、鶴巻さんを始めカラーの皆さんとアニメを作らせていただくというのはひたすら楽しい時間を過ごすことです。その喜びも今回の『龍の歯医者』から伝わりますように。

・・と、込めた思いの一つがぽろっと漏れましたが、あとは内緒ということで、ではでは、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました!