専修大学 平井 萌さん

写真拡大

ハイパー学生のアタマの中

専修大学 平井 萌さん

ひらい・めぐみ●1992年茨城県生まれ。高校では軟式野球部に所属。規定により公式戦には出ることはできなかったが、男子に交ざって毎日練習に励んだ。2012年4月に専修大学に入学。13年3月にコンゴ民主共和国の現状の認知度の向上を目的とした学生団体「コンゴウィークジャパン」を設立。「地域活性×国際協力」をテーマにしたワークショップやコンゴ料理を提供する1日カフェなどのイベントを実施。14年8月、クラウドファウンディングで集めた資金を元手に「メロンパンフェスティバル」を都内で開催。約300人の来場者が訪れ、650個のメロンパンを完売。収益全額である12万8232円をコンゴで活動している日本人医師に寄付した。10月に開催された「世田谷パン祭り」にも「メロンパンフェスティバル」名義でブースを出店した。

2014年8月に開催した「メロンパンフェスティバル」にて。コンゴミュージックを演奏してくださったコンゴ人のミュージシャンの方と、運営メンバーとの記念写真。当日は全国から12店舗のパン店が出店し、個性豊かな17種類のメロンパンを販売した。

“知った責任”という言葉が、私とコンゴを結び付けた

最近、私はすごく「自分らしく、やりたいことをやって生きてるなー」ってしみじみと感じているんです。ポーッとしてることも多いので、周りには心配ばかりかけていますが(笑)。ただ、小さいころは今と真逆で、周りからは「しっかりしてるね」と言われることが多かったんですよね。幼いながらも「いい子でいよう」という意識が強く、大人の顔色をうかがって行動するのが上手な子だったと思います。

 

軸のない「いい子」だった私は、中学で恩師と呼べる人に出会ったことで少しずつ変わっていきます。その方は1年と2年の時にクラス担任だった先生なのですが、私の心のさびを落としてくれるような言葉をたくさんくれたんですね。私がまだ「いい子でいたい」という思いが強かったころ、テストで学年1位を取ったことがあって。それを先生に報告したら、喜んではくれたんですが「自信じゃなくて信念を持て。最後に自分を支えてくれるのは、何かを成しとげようとする信念だ」と言われたんです。

 

当時はこの言葉の意味を正確に理解できていなかったと思いますが、この日を境に「私は何がしたいんだろう?」と少しずつ考え始め、それに伴って「いい子でいたい」という意識は少しずつ薄れていったように感じています。

 

将来の進路について考え始めたのは、高校3年の夏ごろから。安直ですが、弱い人を助ける仕事がしたいという思いから「検察官になりたい!」と考え、法学部を目指すように。現役で入ることはかなわなかったのですが、1年の浪人を経て志望学部のある大学に合格。「真面目に勉強して確実にロースクールに入って、いち早く検察官になるんだ」という思いを胸に、無駄のない大学生活を送る決意を固めていました。

 

そんな私の気高きモチベーションは、大学に入学して間もなく、ものの見事に崩壊します。基礎ゼミの最初の授業で担当教授に「法は人を守るためにあるのではなくて、権力の乱用を防ぐためにある」「法で弱い人を助けるなんて夢は持たない方がいい」「本当に平和な世の中ならば、法律なんていらない」と言われてしまい…。あの時、自分の目標が音を立ててパリンと割れるのがはっきりとわかりましたね(笑)。もちろん、言われたことすべてをうのみにしたわけではありませんが、私が今後の方向性を見失うには十分過ぎる洗礼でした。

 

大学1年の夏、ボランティアサークルに入ったものの無為な日々を過ごしていた私は、サークルの先輩に勧められてインターンシップに参加。内容は「東日本大震災の被災地各地に3週間住みこんで、その街の魅力をPRするためのプランを考える」というものでした。そのインターンシップの最後に、主催者の方が「皆さんは、被災地の現状を知ってしまった責任があります。これからも、自分に何ができるのか考え続けてくれるとうれしいです」とおっしゃっていて、“知った責任”という言葉が強く心に刺さりました。

 

インターンシップが終わり数日がたったある日のこと、何げなくSNSをチェックしていたらとある動画が目についたんです。それはアフリカのコンゴ民主共和国が抱えている社会問題の認知を広めるために作られたものでした。コンゴが貴重なレアメタルなどの資源を豊富に保有していること、そのレアメタルはスマートフォンの部品に欠かせない金属であること、その資源が火種の一つとなって激しい紛争が現在も続いていること…。これまで他人事にしか思えなかった海の向こうのことが、この時初めて身近に感じられたんです。「スマートフォンを使うことで、自分も紛争の加害者の一人になっているのかもしれない」と、リアルな恐怖を覚えました。

 

見終わった時、「これはどうしようもないな…」と思ったんです。どんなに心が痛んでも、それは遠い国のこと。見なかったことにして、もっと身近な世界を大切にしようと。しかし、インターンシップで頂いた“知った責任”という言葉が、私を逃してはくれませんでした。私は「コンゴのために行動を起こす」決意を固めました。この日からコンゴのことが頭から完全に離れた日は1日たりともありません。

 

就職はしない。「いつかやろう」の“いつか”は絶対に来ないから

その後は「コンゴウィークジャパン」という団体を立ち上げ、コンゴの国自体や抱えている社会問題についての認知度を上げるために、ワークショップやコンゴ料理を提供するカフェなどの企画を年に2回開催。ただ、来てくれるのは国際問題やボランティアに関心の高い方々ばかり。人が集まるのはうれしいことなのですが、私はもっと、以前の私のように「今まで外国のことなんて気にかけたこともなかった!」という人たちにこそ伝えたいという思いがあったんです。地道に活動を続けましたが、なかなか思うように伝えたい人たちに声が届かず…。そんな歯がゆい状況につらさを感じ始め、大学3年になるころには「就活期になったらやめよう」と考えるようになっていました。

 

落ちこんでいた私に2つ目の転機を与えてくれたのは、アルバイト先の社員さんとの何げない会話でした。私は「毎日の食事がメロンパンでもいい」と思うほどメロンパンが好きなんですが、ある日社員さんに「そんなに好きなら、買わずに自分で作ったら?」と言われたんです。その瞬間、コンゴとメロンパンが頭の中でつながった。自分が純粋に好きなものを媒介にすれば楽しく活動が続けられるし、もともと国際問題に興味のない人たちを取り込むこともできるはず。私は「コレだ!」と確信しました。

 

「コンゴ×メロンパン」という構図を思いついてからは、ビックリするくらいの早さでそれが現実として形を成し始めました。ひょんなきっかけから、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集めるクラウドファウンディングに応募。見切り発車で支援を呼びかけたらお金が集まって、慌てて企画を詰めて…。応募した段階では「コンゴをメロンパンでなんとかしたい」というたった1文しか書いていなかった企画書がどんどん具体的になり、「メロンパンフェス」という企画が生まれたんです。

 

「メロンパンフェス」では全国のパン屋さんから選りすぐったメロンパンを販売するだけではなく、メロンパンをモチーフにしたアクセサリーを作るワークショップなども開催。そしてもちろん、来場者の方にコンゴのことを知ってもらうため、コンゴ人のアーティストを呼んで演奏をしてもらい、コンゴの抱えている現状について有識者に語ってもらうトークショーを企画しました。

 

開催当日は行列が途切れず、終了1時間前にはすべてのメロンパンが売り切れるほどの盛況でした! トークショーで「メロンパンが目的でここに来た方は?」と聞いてみたんですが、聴衆の9割が手を挙げていて。「これが私の目指していた景色だ。もともと関心のない人に関心を持ってもらうきっかけを与えられたんだ!」と感動して、登壇しながらも涙が出そうになりましたね。

 

「なんで“メロンパン”と“コンゴ”なの?」ということはよく聞かれます。正直に言うと、私もうまく説明ができなくて…(笑)。メロンパンはただただ好物なだけですし、コンゴだって実はまだ一度も現地に行ったことがないんですよ。もし、あのときSNSで見た動画がほかの国のものだったら、その国のための活動をしていたかもしれません。でも、「好き」や「大切」に明確な理由って必要なんでしょうか? もし理由を完璧に言葉で説明できてしまったら、その理由が当てはまるほかの何かでも代替できてしまう気がするんです。私にとって「“メロンパン”と“コンゴ”」はどちらもかけがえのない存在。これ以上に取り組みたいことは、きっとこの先ないだろうと感じています。

 

直近の目標として、大学を卒業するまでにメロンパン専門店の1号店をオープンさせようと考えているんです。今はパン作りの修行や仕入れを勉強させてもらえるパン屋さんを探しています。就活はしないと決めました。なぜなら「会社に入って仕事を始めたら、仕事が楽しくなってコンゴのことから離れてしまうだろう」と思ったから。就職した10年後を想像したら、コンゴのことなんてほとんど忘れてしまっている自分がはっきり見えたんですね。その気になっている今やらなければ意味がない、「いつかやろう」の“いつか”は絶対に訪れないから。

 

夢はメロンパンの専門店を世界中にオープンさせて、その売り上げの一部がコンゴへの貢献につながるようなシステムを作ること。そしていつか必ず、コンゴにもメロンパン専門店をオープンさせます! 20年後、海外の人々に「日本食と言えば“スシ・テンプラ・メロンパン”だよね」って言わせられるくらい、メロンパンを広めたいです。そして、「メロンパンと言えば、コンゴだよね」と言わせたい。「“メロンパン”と“コンゴ”」の間につながりなんかありません。でも、「“バレンタイン”と“チョコ”」だって、もともとはまったく関係のないものですよね。ロジックを超えて何かと何かを結び付けることができたら、それは文化となって、社会を変える力を持ち得るんじゃないかなと思うんです。

 

これを読んでいる皆さんにも「好きなこと、好きなもの」があると思います。どうか、その「好き」という気持ちに、ブレーキをかけないでほしい。好きなことは「好きだ!」と、思う存分周りに伝えてほしいと思います。私はそうすることで、「好き」を具体的な活動につなげるきっかけを得られました。

 

私はメロンパンが好きです! 好きなことを声に出してみることで、思いもよらない未来が動き出すと私は思います。

 

■ 平井さんに10の質問

Q1.好きな異性のタイプは?

どんな方向にでもいいので、ぶっ飛んでいる人がいいです! 自分の理解を超えていて、よくわからないけど「すごい」と思わせてくれる人や、好きなことをとことん突き詰めている人が魅力的だなと感じます。

Q2.好きな食べ物は?

一番はやっぱりメロンパンですが、かんぴょう巻きも大好きなんです! 私にとってかんぴょう巻きは「おすし界のメロンパン」ですね。近所のスーパーに行くときには必ずかんぴょう巻きを探すんですが、なかなか売ってなくてつらいです…。ちなみに、「おでん界のメロンパン」ははんぺんです! 浪人時代、予備校の近くのコンビ二で、毎日のようにはんぺんを買っていて、そのコンビニのはんぺんのストック数が増えたことがありました(笑)。

Q3.好きな映画は?

ベン・スティラーさんが監督と主演を務めている『LIFE』。この映画を見たのをきっかけに、無性に「私も何か動き出さなきゃ!」と心をかき立てられました。クラウドファウンディングの企画をやるかどうか悩んだ時に、背中を押してもらった大事な作品です。

Q4.好きな音楽は?

映画『おおかみこどもの雨と雪』の劇伴や数多くのCMの音楽制作を手がける高木正勝さんの楽曲が最近のお気に入りです。音とか風とか、目に見えない感覚を可視化するような表現をされていて、ハッと息を飲みます。PVもすごくキレイなんですよ!

Q5.趣味は?

メロンパンです(笑)。でも、メロンパンは趣味というよりライフワークに近いですね…。ほかに趣味的なことで言えば、バッティングセンターに行くのは好きです。ストレス発散には効果バツグンですよ! 打つのは球速100kmくらいがちょうどいいのですが、近所にあるのが球速80kmまでしかなくて…。遅すぎてストライクが入らないから、めちゃくちゃ打ちにくいんです…(笑)。

Q6.宝物は?

メロンパンとの出合いです。高校3年の時、友達に「おいしいよ」って勧められて、学校の購買で売られていたのを買って食べたんです。パンよりごはん派だった私は、それまでメロンパンなんて見向きもしなかったんですが…。ほおばった瞬間に、体中に稲妻が走るような衝撃を感じたのを、今でもありありと覚えています。「なんでこんなにおいしい食べ物を今まで口にしなかったのか…」と、それまでの自分を責めるほどでした。この時の驚きは「私の人生史上で衝撃的だった瞬間」トップ3に入りますね。

Q7.座右の銘は?

「何もかもはできないけれど、何かはできる」。どこかで聞いたのか、自分で思いついたのかは曖昧なのですが、最近よく頭に浮かんでくる言葉です。最初、コンゴのために何かしようと思ったときに「これから私は、コンゴのためにすべてを捧げなきゃいけない」というようなプレッシャーを勝手に感じてしまっていて…。でも、この言葉を思い出したらストンと肩の荷が下りて「全部捧げようとしないでやれる範囲でやればいいし、全部いっぺんに変えるのは無理だから少しずつ変えていけばいいんだ」と、ドンと構えられるようになりました。

Q8.最近の楽しみは?

食べたことのないものとの出合いです! 近ごろ初めて食べたもので印象に残っているのは、魚肉ソーセージですね。当たり前なんですけど、あれって普通のソーセージじゃないですよね。食べながら「なんだこれは…」とドキドキしちゃいました(笑)。世の中にはまだまだ知らないものがたくさんあるので、日々ワクワクしています!

Q9.最近で一番笑ったできごとは?

私の弟の趣味が「磨くこと」なんですが、先日帰省したら「これ、磨いた」と言ってアワビの貝がらを見せてくれたんですね。磨く前のものと後のものがあったんですが、磨いた後のものが本当に光り輝いていて…。「ああ、こんな薄汚れたものでも磨けば光るって、なんか人生そのものだな」とすごく大きなメッセージ性を勝手に感じてしまって、めっちゃ笑いました(笑)。
(右が磨く前、左が磨いた後の貝がら。ここまでキレイにするのに、2時間黙々と磨いたそう)

Q10.今、一番会いたい人物は?

メロンパンを初めて作った人。会って「ありがとう!」とありったけの感謝の気持ちを伝えたいです。そして「どうやってメロンパンにたどり着いたのか」「どうしてメロンパンと名づけたのか」など、いろいろうかがいたいです。実はメロンパンの起源って、今でも正確にわかっていないんですよ。メロンパンのルーツをつきとめることは、私の生涯の課題でもあります。

一日のスケジュール

7:58 起床。ニュース番組の星座占いで自分の今日の運勢をチェック。
9:50 家を出る。「いつも乗りたい電車にギリギリ間に合うかという時間になってしまうので、ほぼ毎日駅まで走ってます」。
10:45 大学で授業を受ける。国際紛争処理法や国際人権法など、国際法に関する講義を多く取っている。
12:15 昼食。「栄養のバランスを考えて、メロンパンは週3個に抑えられるようにガマンしているんですが、気を抜くと週5個以上は食べてしまいます」。
14:00 メロンパンフェスの準備作業。パン屋さんをはじめ関係者への連絡や、メロンパンフェスのWebページやTwitterの更新をまとめて行う。
18:00 午後の授業を終えて大学を出る。資料の印刷など大学でしたい作業が残っている場合を除いて、真っすぐ家に帰ることがほとんど。
20:00 スーパーやドラッグストアで買い物をして帰宅。「ランチは友達とワイワイしながら食べますが、夜は自宅で1人で食べることが多いですね。1人でゆっくり考えごとをしながら食べるのも好きなんです」。
23:00 メロンパンフェスの運営メンバーにメッセージを送り、それぞれの作業の進捗(しんちょく)を確認。「メンバーは大学がばらばらで頻繁に集まることが難しく、メッセージでのやりとりが中心です。みんな遅くまで作業をしてくれて、本当に助けられています!」。
1:30 就寝。「寝る瞬間の記憶ってほとんどないんですよね…。朝起きたら床で寝ていることが多いです」。

10:00 起床。パソコンでメールなどを確認して、簡単に朝食をとる。
13:00 洗濯や掃除など日ごろためていた家事を片づける。
15:00 外出。日用品の買い出しついでに近所の本屋さんを3店舗ほど回る。「本屋さんって大好きなんです。出版社でアルバイトをしているので普段からよく行くのですが、休みの日もついつい足が向いてしまいます」。
17:00 バッティングセンターでストレス発散。「1ゲーム20球の所なら、大体5ゲームくらい打ちます」。
19:00 友人が数人泊まりにきて、自宅で一緒に夕食。「友人たちは私の活動を理解してくれているので、一緒にいると日ごろのプレッシャーから解放されてリラックスできるんです」。
23:00 たわいのない話をしながらみんなで就寝。「たまに、この時間から私がメロンパンを作り始めて、深夜にみんなをたたき起こして食べてもらうこともあります」。

 

取材・文/西山武志 撮影/刑部友康