低迷『あさチャン!』の新名物、噛みすぎ佐藤渚アナは元アイドル
 今年の3月31日に放送がスタートしたTBSの『あさチャン!』(5:30〜8:00)。当初はぎこちなかった出演者同士のやり取りも、半年経てばさすがに少しはスムーズになっているだろう。と思いきや、そうでもない様子。みんな一様に笑顔を作って会話を交わしつつも、次のコーナーに移るときには余韻もへったくれもなくMCの夏目三久アナがバッサリと切り落としてしまう。その冷たさが分かっているから、どうしても話に熱が入らない。そんな雰囲気なのです。

◆ここまでバラバラだと目が離せない

 しかしそれも致し方ないところ。そもそもこの番組、構成の力点がしっちゃかめっちゃかなのです。『朝ズバッ!』の置き土産である報道色を残しつつ、スイーツ女子が食いつきそうなネタも扱っている。それだけでも収拾がつかなくなりそうなのに、『噂の東京マガジン』的な高齢者の茶飲み話にまで手を広げるありさま。

 たとえばJUNONボーイの岡大和が「おっはよーございまーす」と殺風景な田舎を旅したあとに、巣鴨の高齢者に「最近読んだ本は?」と一体誰がそんなこと知りたいんだという企画がぶち込まれる。そんなムードを引きずったまま「ぐでたま」に突入したところで、すでに視聴者の気持ちはがっつりぐでぐで。それでも齋藤孝先生は、あの型崩れしない爽やかな笑みを2時間半キープしている。

 朝の情報番組がいわゆる「総花的」になってしまうのは仕方ないところですが、それでも出演者と構成がここまで有機的にかみ合わないのは明らかな異常事態です。しかも番組開始当初よりも、その溝は深まっているように見える。

 いかにも仕事ができそうな井上貴博、山本匠晃の両アナウンサーはそんな空気を察知してか、大怪我はするまいと持ち場に徹して夏目キャスターをフォローしようとする様子もうかがえません。かわいそうな夏目三久。早朝には落ち着きすぎる声のトーンには、彼女の孤独も垣間見えます。

◆天然の噛みに、もはや癒される!?

 そんな殺伐とした番組ですが、ほがらかに我が道を行く佐藤渚アナウンサーのニュース読みには心がほっこりとします。彼女のモットーは「一日一噛」なのでしょうか。とにかく毎日必ずどこかでつっかえるのです。誰も予想だにしないところで。

 参議院外交防衛委員会で片山さつき委員長が政府の想定問答集を読んで問題になったニュース。覚えている人も多いかと思いますが、佐藤アナはその冒頭まさかの「片山」で噛んだのです。

「かた、かてぇ、かとぉ」

 都合三回ほどだったでしょうか。これにはさすがに眠気も吹っ飛びます。同時に、それまでの『あさチャン!』を観ていても全くなかった心からの笑いがこみあげてきました。そのおかしみは、「まちかど情報室」(NHK『おはよう日本』)での鹿島綾乃アナと鈴木奈穂子アナによる熟練のやり取りや、「MOCO’sキッチン」(日テレ『ZIP!』)で大量に消費されるオリーブオイルとは明らかに異質。佐藤アナが天性のゲームブレーカーであることを思い知らされます。

 これがあるから『あさチャン!』から離れることができないのです。辛そうな夏目三久も、彼女に手を差し伸べない男性アナも、全く練り切れていない特集コーナーも、鉄仮面のように微笑む齋藤先生も、そんなものどうだっていいじゃないか。今日も渚で笑とけ笑とけ。

 するとなんだかやる気がわいてくる。そのポジティブな高揚感は『朝ズバッ!』時代にはなかったもの。狐につままれたようですが、TBS朝の時間帯のモデルチェンジはひとまず成功したと言えそうです。

※佐藤渚アナは2010年、TBSに入社。その前は仙台のローカルアイドルで、高校〜大学時代に『恋のから騒ぎ』に出たり、NTTドコモ東北などのCMに出たりしていた。

<TEXT/沢渡風太>