2019年に日本で開催されるラグビーのワールドカップ(W杯)の大会組織委員会は5日、岩手県・釜石市など14カ所が開催地に立候補したと発表した。来年3月に決まるW杯会場の目安は「10〜12カ所」。果たして、アジア初のW杯の開催地はどこになるのだろうか

「多からず、少なからずというか。それぞれの団体(自治体)が深く考えて、関係方面と調整して出した結果ですから。多ければいいというものでもありません」。大会組織委の嶋津昭事務総長はまず、そう口を開いた。昨年、60を超える自治体がW杯開催に興味を示していたが、ふたを開けてみると、わずか14カ所にとどまった。

 開催立候補は、北から札幌市(札幌ドーム)、岩手県・釜石市(釜石鵜住居復興スタジアム=仮称)、仙台市(仙台スタジアム)、埼玉県・熊谷市(熊谷ラグビー場)、東京都(新国立競技場=仮称)、静岡県(小笠山総合運動公園エコパスタジアム)、愛知県・豊田市(豊田スタジアム)、京都市(西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場)、大阪府・東大阪市(花園ラグビー場)、神戸市(御崎公園球技場)、福岡市(東平尾公園博多の森球技場)、長崎県(長崎県立総合運動公園陸上競技場)、熊本県・熊本市(熊本県民総合運動公園陸上競技場)、大分県(大分スポーツ公園総合競技場)となる。

 注目すべきは、まず「14」という数だろう。開催自治体が負う分担金や財政負担、スタジアムの後利用で苦労している2002年サッカーW杯の"トラウマ"もあったのだろう。ラグビー熱の足りなさもあってか、7万2千人収容の横浜国際総合競技場のある横浜市や、4万人収容の新スタジアムが来年に完成予定の大阪府・吹田市などは立候補を見送った。

 結果、6万人以上の収容能力が目安となっている準決勝と3位決定戦も8万人収容の新国立競技場で実施する公算が強まった。19年完成予定の新国立では既に、開幕戦と決勝が行なわれることが決まっている。

 嶋津事務総長はこう、言葉を足す。「北は北海道から南は九州まで、全国的に非常にバランスのとれた申請をしていただいた。全国で盛り上げて、国民全員がラグビーを楽しめると信じています」と。

 特記事項は、被災地の東北から岩手県・釜石市と仙台市の2つがあったこと、ラグビー熱の高い九州から4カ所もの地域が手を挙げたことである。関東は2カ所だけで、北陸エリア、中国、四国エリアからは立候補都市が出なかった。

 まだスタジアムが完成していないのは、岩手県・釜石市と東京都だけである。2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設は間違いなかろう。かたや岩手県・釜石市は目下、1万5千人収容のスタジアムを計画している。

 開催地選定の最大のポイントは、この「ラグビータウン」といわれる釜石市が選ばれるがどうかである。嶋津事務総長は被災地のチャレンジを歓迎し、釜石市と仙台市の相互の補完作用に期待している。

「やはり被災地の復興の状況を世界に示す絶好のチャンスとなります。選定にあたっては、先入観を持たれないようにしてもらいたいが、仙台市と釜石市はそれぞれ補完できる立地関係にある。両市が同じブロックの試合をやるということもあるし、その交通機関、宿泊、観戦客の観光旅行などのホスピタリティもお互い協力できる、いろんな意味で連携プレーも必要なことだと思います」

 気になるのは、仙台市が、(1)財政負担の軽減 (2)好カードの要望 (3)Jリーグとの日程調整――など6項目の条件を付けたことである。だが、嶋津事務総長は「条件は、要望、課題だと受け止めている」と話す。他都市も似たような要望を出しているようで、「開催団体と我々で努力すれば、乗り越えられる課題もあります」と柔軟な姿勢を示している。

 選定作業は、早ければ12月にも国際ラグビーボード(IRB)側のラグビー・ワールドカップ・リミテッド(RWCL)と組織委員会による現地調査が始まり、来年3月までに開催地が決定される。それぞれのスタジアムの規模や設備などの諸条件、交通機関、宿泊施設などのインフラ面だけでなく、マーケティングを含めた収支計画、大会後のスタジアム活用、開催理念、W杯を通したまちづくりなどがチェックされることになる。

 インフラ面の条件では苦しい人口3万7千人の釜石市の同市スポーツ推進課ワールドカップ誘致推進室の増田久士さんは「こういう田舎のまちが、ワールドカップを生かして、地域の活性化にどうつなげていくのか。いまの日本の(一極集中の)課題解消に貢献することもできるかもしれない」と訴える。

 要は、大会組織委がW杯の目的をどこにおくのかだろう。大会収支だけにこだわるのか、あるいはラグビーの普及・発展、ラグビー文化の醸成、被災地復興を含めた国作りまで視野においているのか、である。

 そう考えると、開催地の予定数にこだわる必要はない。来年のW杯イングランド大会では13会場で試合が行なわれる。いっそのこと、W杯日本大会では、14カ所すべてでW杯の試合を開催してもいいのではないか。

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu