2010年、2011年と、2年連続で賞金女王に輝いたアン・ソンジュ(27歳)。今季、3度目の賞金女王獲得へ、いよいよ独走態勢に入っている。

 10月には、スタンレーレディス(10月10日〜12日/静岡県)、富士通レディース(10月17日〜19日/千葉県)と2週連続優勝を飾って、今季5勝目をマーク。11月6日現在、獲得賞金は1億4841万4250円に上って、2位のイ・ボミ(1億1406万8166円)とは、およそ3000万円という大差をつけている。

「『賞金女王』のことを考えないと言えば、ウソになります。でも、なるべく考えないようにして、これからの試合に臨みたいですね」と語るアン・ソンジュ。その言葉どおり、残り試合も平常心を保ってプレイすることができれば、3度目の賞金女王は間違いなく手にすることができるだろう。

 それにしても、このアン・ソンジュの強さには恐れ入る。

 なにしろ今季は、決して万全な状態ではなかったからだ。アン・ソンジュによれば「手首を痛めながらも、無理して出場した試合がいくつかあります」という。夏場には、その手首の痛みが悪化して、試合に出場することさえできない期間もあった。にもかかわらず、部門別ランキングでは、賞金ランクをはじめ、平均ストローク、パーセーブ率、リカバリー率が1位。平均パット数、平均バーディー数でも3位という高い数字を残して、今季ツアーで圧倒的な存在感を示している。

 彼女はなぜ、これほどの好成績を残せるのか。アン・ソンジュと激戦を繰り広げ、彼女の強さを目の当たりにしてきた選手たちに話を聞いてみた。

 富士通レディースで、最終日にアン・ソンジュと同じ最終組で回って、熾烈な優勝争いを展開。最後はプレイオフの末に涙を飲んだ、菊地絵理香(26歳)はこう話す。

「絶対的に言えるのは、アン・ソンジュ選手には"焦りがない"ということ。それに尽きると思います。一緒に回った富士通レディースの最終日でも、(彼女は)ショットがすごく荒れていたんです。それでも、焦ったり、悩んだりしないで、積極的にピンを狙っていくんです。普通は、ショットの調子が悪いと、『(無理をせずに)グリーンの中央を狙おう』と考えたりするものですが......。(彼女は)そういうことを考えない選手なのかもしれません。万全な状態になくても、そうやって攻め続けられるのはすごい。

 あと、なかなかバーディーが来なくて、流れが悪い状況にあっても、あまりイライラしない。キャディーさんと話をしながら、うまくいいリズムを作っていける。そういうところが、(彼女の)強さにつながっているのかな、と思います」

 昨季2勝して一躍ブレイクした堀奈津佳(22歳)も、菊地と同じように、アン・ソンジュの卓越したメンタルコントロールに感服していた。

「(アン・ソンジュは)いつもスイングのリズムが一定で、ドライバーは飛んで曲がらないし、アイアンショットも正確です。それは、どんな状況にあっても、プレイするときの気持ちがブレていないからではないでしょうか。ラウンド中にイライラしたりして、感情が表に出るときがたまにあるのですが、ボールを打つときには、気持ちの切り替えができていますからね。(自らの)感情の起伏をうまくコントロールする力が、アンさんにはあるのだと思います」

 昨季3勝を飾って、今季もアン・ソンジュと上位争いを演じることの多い吉田弓美子(27歳)は、開口一番、「アンさんは、ゴルフの組み立てがすごくうまい」と語る。そのうえで、技術の高さを強調する。

「アンさんは、マネジメントに無駄がないんです。例えば、キャディーさんが『こっちの方向を狙ったほうがいい』とか、『グリーンのあの場所に乗せたほうがイージーパットになるよ』ってアドバイスをしたら、そのとおりに打っていく。しかも、そこに寸分の狂いもなく、ボールを乗せてきたりします。要は、それだけの技術があるんです。たとえ、少し違った場所にボールを落としたとしても、そのズレを補うだけのパッティングのうまさもあります。

 さらに今年は、精神的に強い部分が備わっている。『隙がない』っていう表現がぴったり当てはまるんじゃないでしょうか。他の選手も、それぞれに強みはあるけれども、アンさんは頭ひとつ、抜けている感じがします。ミスの範囲も、他の選手よりもかなり狭いので、一緒にプレイしているとすごく勉強になります」

 今季好調の原江里菜(27歳)も、吉田の意見に同調する。技術の高さこそ、アン・ソンジュの強さの源であり、そのプレイぶりには「隙がない」と言う。

「(アン・ソンジュは)ショットやパットの技術レベルが、(他の選手とは)違うと思います。しかも、プレイ中は絶対に隙を見せないですよね。勝負どころで確実にいいショットを打ってくる。そう思いませんか? やっぱり、それを支えているのは、技術だと思うんです。

 例えば、左足下がりやつま先下がりとか、ボールがディボットにあるとか、状況やライが悪くても、それに適応できる高い能力がある。いい場所からいいショットをするだけでなく、条件が悪くても、大きなミスをしないのが、彼女の強さですよ。難なく、バーディーチャンスにつけてくることさえありますから。そういうところで、スコアに差が出てくるんですよね。悔しいけれど、その点は、他の選手にはないところだと思います」

 さらに、原が続ける。

「アンちゃんには、何を聞いても、すぐに明快な答えが返ってくるんですよね(笑)。というのは、一緒に練習ラウンドをしていて、左足下がりのショットが苦手な私が『どうやって打っているの?』ってアンちゃんに聞くと、『こう打てばうまくいくよ』って、即座に教えてくれるんです。どんな状況にあっても、自分なりの対処法があって、ベストな回答がわかっているんでしょうね。だから、強いんだと思います」

 アン・ソンジュ自身は、今季の強さについて、6月から交際している男性の存在を上げる。韓国プロゴルフ協会の会員で、レッスン指導をメインに活動しているキム・ソンホさんである。アン・ソンジュが、「私の気持ちをよく理解してくれる人」と言って、メディアの囲み取材でも自ら語り始めて、のろけ話を展開するほどだ。

 何はともあれ、公私ともに順調なアン・ソンジュ。一緒に戦う選手たちが、その強さに"お手上げ"という今、3度目の賞金女王の座に就くのは、時間の問題と言えそうだ。

text by Kim Myung-Wook