トウモロコシの“お礼”家贈る、数十年前に受けた恩に報いたかった。

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人から受けた恩に報いる方法は実にさまざまだが、中国のある男性は先日、数十年前に施しを受けたトウモロコシのお礼に家をプレゼントするという意外な行動に出た。貧しい時代に手を差し伸べてくれた人のことをいつまでも経っても忘れなかった、立身出世の心暖まるストーリーだ。中国メディア大河網などが伝えた。

河南省商丘市夏邑県の胡橋郷で生まれた伊慶民さんは、3歳のときに父親が病に倒れ、帰らぬ人となってしまう。以後、母親が小さな商売をして家計を支えてきたが、生活はとても貧しかったそうだ。

けれども、そんな貧しい生活を続けるうちに伊さんは苦しみに耐える術や大胆に実行する勇気を持つようになった。17歳のとき、伊さんは技術を学び身につけ、貧しい生活から脱却することを決意。母親の承諾を得て当時飼っていた犬を売り、そのお金で大工に弟子入りすることでめきめきと力をつけていったという。

大工として修行を積むのと同時に経営のノウハウなども積極的に学んだ伊さんは、その後自ら会社を設立。多くの人がそうであるように立ち上げ当時は苦労の連続だったが、幼いころに忍耐力を身につけていた伊さんは決してあきらめず、事業を徐々に拡大させていく。そして気付けば大きな財を築くまでに成長していたそうだ。

そんな伊さんには、子どものころに受けた恩で忘れられない出来事がひとつあった。それは11〜12歳の頃、母親の商売に付き添っていたときに暴風雨に遭遇し、避難のために立ち寄った農家での出来事。農家の女性は、伊さんが腹を空かせながら寒そうに凍えているのを見ると不憫に思ったのだろう、熱々のトウモロコシをひとつ分けてくれたそうだ。

関係ない人からすればこの出来事は「ただ暖をとり、トウモロコシの施しを受けただけ」なのかもしれないが、この思い出はいくつになっても伊さんの脳裏から消えることはなく、「いつか恩返しをしたい」という気持ちを抱き続けたのだという。

そしてその思いが先日、ついに結実する。伊さんは龍寨村で農家の女性を探し当てることに成功したのだ。女性はすでに80歳以上の高齢となっていたが、女性に会えた伊さんは「あなたは私の恩人です。この数十年忘れたことはありません。私は今、経済的に豊かになることができました。あなたにぜひ家をもらっていただきたいのです」と興奮した面持ちで話し、実際に3L2DK(※3部屋にリビングが1つ、ダイニングキッチンが2つの家。中国ではしばしば見かける間取りで、二世帯家族などに人気)の大きな住居をプレゼントした。

もちろん、女性は「ひとつのトウモロコシが住居に替わるなんて……」と、まさかの展開に驚きを隠せずにいるという。