11月5日、日本代表メンバーが発表された。年内最後の親善試合となる2試合、11月14日のホンジュラス戦(愛知・豊田スタジアム)と、18日のオーストラリア戦(大阪・ヤンマースタジアム長居)に臨む23名である。

 発表されたメンバーで目を引いたのは、ブラジルW杯に出場して以来の代表復帰となったDF内田篤人(シャルケ/ドイツ)、MF遠藤保仁(ガンバ大阪)、今野泰幸(ガンバ)の3選手。他にも、W杯本大会こそ選外となったものの、ザッケローニ前監督時代に代表経験がある、FW豊田陽平(サガン鳥栖)、乾貴士(フランクフルト/ドイツ)が"復帰組"として加わった。

 アギーレ監督就任後は、比較的若い選手、あるいは代表経験の乏しい選手の抜擢が目立っていたが、彼ら"復帰組"の経験が、若い選手たちに好影響を与え、チームがさらに活性化されることが期待される。

 とはいえ、「アジアカップ(1月9日〜31日/オーストラリア)に臨むメンバーの80〜90%は決まっている」とアギーレ監督。新生・日本代表に、それほど多くの"空席"が残されているわけではない。実績のある選手であろうとも、限られた時間で結果を残す必要があることに変わりはない。

 さて、アギーレ監督が「アジアカップへ向けた選手選考」と位置づけた年内の親善試合もすでに4試合を消化し、残すところ11月の2試合のみ。選手の起用の仕方だけでなく、記者会見での発言などからも、主力となる選手がある程度固まりつつある様子はうかがえる。実際、指揮官自身、「アジアカップで優勝を目指すチームのベースは、私の頭の中にできている」と語っている。

 GK川島永嗣(スタンダール・リエージュ/ベルギー)、DF吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、森重真人(FC東京)、FW岡崎慎司(マインツ/ドイツ)、本田圭佑(ミラン/イタリア)の5選手は、当面のチームの軸になると考えていいだろう。彼らがアギーレ監督から厚い信頼を寄せられているのは間違いない。

 加えて、DF太田宏介(FC東京)、塩谷司(サンフレッチェ広島)、MF柴崎岳(鹿島アントラーズ)、FW武藤嘉紀(FC東京)といった新顔も代表定着への足場を固めている。おそらく戦力確保にメドが立ち、すでに選手選考が終了したポジションも少なくないはずだ。

 しかしその一方で、これまでの4試合を振り返ったとき、決定的な人材を見定められなかったポジションもある。4−3−3の基本布陣における、3トップの真ん中を担うセンターフォワード(CF)と、中盤の底を務めるアンカーだ。

 アギーレ監督の初陣で、186cmの皆川佑介(サンフレッチェ)が抜擢されたのをはじめ、これまでCF候補には、182cmの大迫勇也(ケルン/ドイツ)、194cmのハーフナー・マイク(コルドバ/スペイン)と、大型選手が招集されてきた。だが、いずれも定着には至らず、他のポジションのように軸となる選手が浮かび上がってくることはない。指揮官の模索が続いている様子がうかがえる。

 そこで注目されるのが、今回選出された豊田である。

 直近のブラジル戦では岡崎がCFに起用され、機動力を生かした巧みなボールキープを見せたことで、「CF=岡崎」の結論に至るかに思われたが、豊田を新たに加えたことを考えると、アギーレ監督はやはり大型CFへのこだわりを捨ててはいなかったようだ。指揮官は期待を込めてこう語る。

「豊田はパワフルで空中戦に強い。岡崎とは違った特徴があり、違った攻撃ができる。チームの攻撃(パターン)が豊富になる」

 サガンで好調を維持する豊田は、先日(第31節/11月2日)のヴィッセル神戸戦で2ゴールを挙げ、チームを逆転勝利に導くとともに今季得点ランキングでもトップ(15点)に並んだばかり。絶好のタイミングでの代表復帰には、本人も「待ってました」の気分だろう。ここで、豊田が指揮官の希望に沿う「一発回答」を提示できれば、今後の構想の軸に据えられる可能性も十分にある。

 同じことは、アンカーにも言える。

 9月の2試合(ウルグアイ戦0−2、ベネズエラ戦2−2)では、いずれも森重がアンカーに起用され、攻守両面で及第点という結果を残したが、10月の2試合(ジャマイカ戦1−0、ブラジル戦0−4)では、細貝萌(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)、田口泰士(名古屋グランパス)が起用されるも、今ひとつ。森重を手薄なセンターバックに回さざるをえない状況の中、アンカーにはこれといった人材を見つけられていないのが現状なのだ。

 中盤の底で相手の攻撃を食い止め、状況によってはDFラインに下がる。そこではセンターバックにもなれるだけの強さと高さが必要なうえ、マイボール時には的確にボールをさばき、攻撃の起点になれなければならない。

 そんな厳しい条件に適う選手を探す中で、アギーレ監督が白羽の矢を立てたのが、今野だったというわけだ。

 アギーレ監督が将来性を重視し、若手主体の選手選考をしてきたことを考えれば、31歳のボランチの選出は少々意外ではある。だが、今野は元々、ボール奪取に優れたボランチとして名をはせた選手。その後は主にセンターバックとして代表に定着し、178cmながら空中戦にも強く、低い位置から攻撃を組み立てるフィード能力では吉田をもしのぐ。現在、ガンバでは再びボランチを主戦場としており、まさに指揮官が考えるアンカーに適任の選手なのだ。

 アギーレ監督が特にこだわりを見せ、人選が難航してきたふたつのポジション。はたして今野と豊田は、指揮官の悩みを吹き飛ばす"救世主"となれるだろうか。

「アジアカップへ向けて直接選手を見る最後の機会。初めて直に見る新たな選手を呼べたのはうれしい」

 アギーレ監督がそう語る2014年最後のテストマッチ。ふたりの復帰組に注目したい。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki