【福田正博フォーメーション進化論】

 アギーレ監督が就任して3試合目となった9月のジャマイカ戦は、日本が1−0で勝利。新体制での初勝利を手にしたが、シュート20本でオウンゴールでの1点だけと決定力に課題を残した。そして次のブラジル戦には0−4と惨敗。この2戦をあらためて振り返ると、アギーレ監督のサッカーのポイントのひとつは、縦パスを入れてから、それを受けて起点が作れるワントップが重要ということ。その点ではワントップに入った岡崎慎司が力を証明した。

 大迫勇也という選択もあるが、現状では、岡崎が当確といえるいいパフォーマンスを見せた。前線からの守備に関してもそうで、ジャマイカ戦では彼の守備から「スイッチを入れる」ことができていた。なおかつゴール前で仕事ができる。3トップのサイドでもいいと思うが、岡崎以外の絶対的なワントップがいない今、彼がファーストチョイスになるだろう。

 前線は、本田圭佑も当確だろう。アウトサイドに本田がいることでボールキープができるので、サイドバックの攻め上がりを生かすことができる。また、インサイドに入っていくタイミングなど、状況判断が非常にいい。彼がいるサイドは間違いなく活性化する。実際、ジャマイカ戦は本田が右から左サイドにポジションを移した時、長友佑都が前線に出ていけるようになった。香川真司も本田が左に入った後半に動きが活発化したという印象だ。ザックジャパン時代に築いたコンビネーションがあることも大きい。
 
 3トップのもうひとりは、武藤義紀が当確にもっとも近いのではないか。彼はアギーレ監督の信頼を勝ち得たと思うし、ピッチで輝いている。ブラジル戦も途中から出てきて積極的に仕掛けるシーンがあった。現状で武藤の優先順位は高いし、Jリーグで好調を維持しているので先発で起用してもいいと思う。

 中盤の柴崎岳に関しては、ずっとリーグで力を示していた選手であり、ジャマイカ戦では、香川ら代表で経験のある選手たちがいる中でも、柴崎は普段と変わらないプレーができていた。メンタルの強さ、冷静さがあり、高い技術を備えている。その能力の高さを証明したといえる。

 彼は世界のレベルがどんなものかを十分理解している。Jリーグ新人賞を受賞した時、同世代のネイマール(バルセロナ/ブラジル代表)やヴァラン(レアル・マドリード/フランス代表)の名前を出して、彼らがすでに世界のトップであることを自覚し、さらなる高みを目指していたことからもそれがよくわかる。そういう厳しさを持ってプレーしている。ブラジル戦で失点につながったミスはあったが、彼自身、考えるところがあると思うので、次に生かしてもらいたい。間違いなく存在感は増してきている。

 4−3−3の中盤で出場した選手のなかでは、細貝はやはりアンカーが適正だと思う。ジャマイカ戦後のインタビューで、彼自身「前の2試合よりもよかった」と言っていたが、ポジションが適正だったからストレスを感じずに、迷いなくプレーができたということだろう。

 また中盤の構成は、左の香川、右の柴崎、そして細貝の3人のバランスが非常にいい。守備に長所がある細貝、攻守両面をこなせる柴崎、攻撃に特徴を持っている香川。もちろん、アンカーには森重真人が入る可能性もある。センターバックは塩谷司が存在感を示してきているので、吉田麻也が戻ってきたら森重をアンカーにする選択肢もあるだろう。ほかに、インサイドハーフについては、森岡亮太はまだ出場時間が少ないので、もう一度試してもらいたいところだ。

 これまで招集されていない選手のなかでは、中盤は米本拓司をぜひ見てみたい。私としては、なぜこれまで彼が選ばれていないのかと常々思っている。守備はもちろん攻撃面でもチームに貢献できる選手だ。所属クラブのFC東京では4−3−3に近いフォーメーションの中盤で存在感を見せているので、今の代表チームにスムーズにフィットできるはずだ。

 アタッカーでは、宇佐美貴史をぜひ試してもらいたい。アギーレ監督からすると、スペインやメキシコには彼のようにドリブルで仕掛けられる選手がたくさんいるから、特別な選手ではないと思っているかもしれないが、彼は日本人では数少ないタイプの選手であることは間違いない。Jリーグでも結果を出しているだけに期待したい。

 また、体が大きくてフィジカルが強い豊田陽平も、ワントップ候補として試してほしい。豊田のような屈強なFWもヨーロッパや南米にはたくさんいるので、これもアギーレ監督からすると珍しくないのかもしれないが、残念なことに日本には体が大きく、速くて強い選手はなかなかいない。そこも含めて、代表選考ということについて、アギーレ監督の評価基準、考え方に日本人の私とは少し違いがあるのかもしれない。


 いずれにしても、アジアカップのために軸を作って、チームを構築していかなければいけないが、その時間は限られている。アギーレ監督の狙いを徹底させて、チームに浸透させることに、ある程度の時間は必要だが、ザッケローニ前監督が目指していたコンビネーションサッカーよりも時間はかからないはずだ。過去の戦歴を見ると、アギーレ監督はメンバーを固定して戦わないと言われている。言い換えると、それはメンバーを固定して戦わなくてもいいサッカーをしているということ。それはつまり、コンビネーション優先ではないということだ。

 選手がアギーレ監督から言われていることとして、縦に速くスピードアップというのがよく聞かれる言葉だ。それを攻撃の武器にするというメッセージは、選手にも伝わっていると思うし、そのアプローチは間違っていないだろう。

 また、チームを作りながら試していくとなると、限られた時間しかないのだから、国内組を見たいのであれば、オシム監督時代のように国内合宿の時間を作ってやっていくことを検討してもいいのではないか。

 これからアジアカップに向けて、ホンジュラス戦(11月14日)とオーストラリア戦(11月18日)でメンバーを固めていくことになる。現時点での最高のチームでどこまでできるのかということを見せるタイミングだ。今後は、内田篤人らブラジルW杯メンバーを招集する可能性もある。ザックジャパンはある程度固定したメンバーでずっとやっていたため、ブラジルW杯組の選手たちは、連係面、コンビネーションの良さをすぐ取り戻せるとアギーレ監督は考えているのかもしれない。

 現時点での選手層の上積みは、想定していた範囲内といえる。クラブで好調な武藤がそのままの調子を代表でも発揮した。柴崎は順当で、むしろもっと早く代表に入っていてもよかったぐらいだ。細貝はそもそもブラジル大会に呼ばれていてもおかしくなかった選手。そういう意味では、驚きはあまりない。

 次の2試合、どういうメンバーを呼んでどういう試合展開になるか。ブラジルW杯組と、新しく台頭してくる若い世代が融合するのか。招集メンバーとスタメンに注目したい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro