F1 レースでバーチャルセーフティカー導入テスト実施。GPS で 15m 走行ごとに車速を監視

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F1 グランプリを開催する FIA(国際自動車連盟)が、10月31日に行われた F1 アメリカGP の練習走行セッションで、バーチャルセーフティカー(VSC)システムをテストしました。

VSC とは、走行セッション中にコース上に何らかの危険があるがセーフティカーを出動するまでもない場合に、その危険を除去するまで各マシンに強制的に速度を抑えさせる、安全確保のための仕組みです。 
 
サーキットで行われるモータースポーツでは、コース内に何らかの障害物が落下したり故障車両が停止した場合、その除去作業を安全に行うため走行中のマシンの速度を落とす必要があります。そのため、コースにセーフティカーが入り、全マシンを安全な速度で先導します。
 
 
これに対し VSC では、セーフティカーがコースインするのではなく、各マシンを強制的に安全な速度まで減速させます。VSC が出ている間は、レース管制室はマシンに搭載する GPS の情報から15m の移動ごとに算出される速度データを監視します。設定した速度域を外れるとペナルティの対象となるため、ドライバーは常に速度を確認しながら走行しなければなりません。

ところが、セーフティカーが出ている間もタイヤやブレーキの温度を保つため、頻繁にマシンをウェービングさせたり、細かな加減速などを繰り返す必要のあるドライバーにとって、常に走行速度を確認するというのは至難の業です。VSC のテスト後、ロータスチームのロメイン・グロージャン選手は「前方よりもステアリングホイールの速度表示ばかり見ていた」と漏らしました。また、過去に2度チャンピオンを獲得しているベテランのフェルナンド・アロンソ選手は「リミッターボタンで自動的に適切な速度を保つような、簡単な方法を取るべきだ」と意見を述べています。
 

 
本来は安全を確保するために減速をするわけですが、VSC に対応するためにステアリングばかり見ていては、安全面でも具合が良いとはいえません。走る実験室とも呼ばれる F1 なら、ステアリングホイールの液晶などではなく、BAE システムズの HMD のようなヘルメット内への情報表示などを実用化してほしいところです。

FIA は、11月7日から9日にかけて開催されるブラジルGP でも、引き続き各チームを交えて VSC に関する意見交換やルールの見直しを行う予定です。
 
 

ちなみに、今回 VSC のテストが行われた背景としては、10月の日本GP で発生したジュール・ビアンキ選手の事故があります。この事故は、大雨となったレース終盤、コースアウトしたマシンを撤去中のホイールローダーに、同じ場所でマシンのコントロールを失ったビアンキ選手が衝突してしまったもの。

このとき、当該区間にはイエローフラッグ2本の振動によって「停止できるほどの速度まで減速」することが指示されていました。YouTube などに流れた事故の動画からマシンはコースアウトの際、かなりの速度が出ていたとする意見もありますが、FIAは調査結果の報告で「ビアンキ選手のマシンは充分に減速していた」としています。

なお、ビアンキ選手は事故の衝撃により頭部に重いダメージを受けており、現在も意識が回復していません。