JBA(日本バスケットボール協会)のガバナンス(統治)強化を筆頭に、男子の競技力低迷とトップリーグ分裂状態において、FIBA(国際バスケットボール連盟)から改革を求められている日本バスケ界。だが、改革の一番手であるリーグ統一に向けては期限内の10月31日までに改善案がまとまらなかった。これにより、日本のバスケットボール界は、FIBAから資格停止処分を受ければ、国際大会に出場できなくなる危機に瀕している。だからこそ今、実際に現場で戦う選手たちが声を上げることが必要だ。

「NBLとbjリーグの2つのトップリーグがあってはいけないのか」という疑問を持つ人も多いが、FIBAの要求は併存するトップリーグ状態を解消し、JBAの管理下でトップリーグを運営すること。「ひとつのリーグ(NBL)はJBAの管轄下にあり、もうひとつ(bjリーグ)はJBAの傘下から離れたところで機能している。この状況は、JBAが日本のバスケットボールを完全に管理できていないことを意味しており、それはFIBAの基本規程違反」という通達がFIBAから出ているのだ。

 現場で戦う選手の声を聞く第3回目は昨季、bjリーグでシーズンMVPを受賞した城宝匡史(じょうほう まさし)選手。bjリーグの歴史と同じく、入団して10年目を迎えるリーグ屈指のスコアラーだ。城宝選手のこだわりは「統一するならプロリーグでプロ契約選手」であること。また日本代表の強化についても、強く訴えたいことがあった。

―― 日本に2つのトップリーグがあることについてはどのように思っていますか?

城宝:とても難しい問題ですが、僕はリーグが2つあっても、3つあってもいいと思うんです。というのも、NBLは企業チームが実権を握っていて、それでプロリーグのbjと一緒になるというのは、ちょっと違うと思うんです。企業チームがバスケをやりたいのなら、実業団を作ってバスケをすればいいですよね。FIBAもアジアで低迷しているような日本に干渉しなくてもいいと思うんですけど......。

 NBLには社員選手もいるので、僕らのbjとは違うリーグだと思うんですよね。社員としてプレイをしたくて向こう(NBL)のリーグに行く選手もいますよね。プロ選手は引退したらそこで契約が終わりですが、社員であれば選手を引退しても企業に残れて安泰という状況があるので、バスケを辞めたあとのことを考えて企業に入った選手もいると思います。リーグが一緒になるのなら、プロリーグで全員がプロ契約であること。社員でやりたいチームは関東とかの実業団でやってもらえばいいと思います。

 あと、僕が言いたいのは、世間的にはNBLのほうがレベルは高いと言われてますけど、僕は両リーグの試合を見ても、NBLの何人かとプレイをしても、周りが言うほどレベルの差は感じません。もちろんNBLにはうまい選手がいます。差があるとすればサイズの違いだけです。でも、僕らは外国人選手とマッチアップしながらやっているので、外国人選手の戦い方を知っているという意味では、bjリーグの選手のほうが国際大会に通用する選手が多いと思います。こっちはどうしてもサイズが小さいので、実際に試合をしたら高さのミスマッチが出てしまいますが、個人のスキルではそんなに変わることはないと思っています。

 ただ、日本代表については公平に両リーグから選んでほしいです。ルールが違うから公平に選ぶのは難しいかもしれませんが、それでも候補を選んで全員のプレイを見て、代表選手を決めてほしいです。

―― 城宝選手はリーグを代表するスコアラー。日本代表でプレイしたい意志はありますか。

城宝:はい。日本代表がどれくらいのレベルなのか、入ってやってみたい気持ちはありますね。今シーズンは、僕のところにNBLのチームからもオファーが来たので、どれくらいのレベルなのか挑戦しようと思ったんですよ。

―― NBLチームからのオファーを断った理由は?

城宝:やっぱり、昨シーズンに富山がプレイオフまでいったので、優勝できるチームでやりたいということと、NBLに移籍して、勝てるかどうかわからないチームに行くのはどうかと思ったからです。あとは条件面で富山のほうがよかったから。別に僕はどちらのリーグでプレイしてもいいんです。条件がよければNBLでプレイしてもいいし、bjのほうが条件がいいのであれば、bjを選びます。

―― 条件がよければbjリーグを選ぶのは、先ほどから言っているように、bjリーグが「プロリーグ」だからですか? こだわっているのはプロリーグであることですか?

城宝:そうです。僕はプロリーグであれば、NBLでもbjでもいいんです。海外でプレイしてもいいです。僕がこだわっているのは、プロリーグでプロ契約ということです。全員プロでやるのなら、ひとつのリーグでやりたいです。

―― 先ほども出た日本がアジアで低迷していることについては、トップリーグでプレイしている選手としてはどう思いますか?

城宝:僕は大学まではバスケットをよく知らず、しっかりした技術を学ばずにきました。大学に入ってからバスケットで飯を食っていきたいと思うようになり、そんな時に、本当にいいタイミングでbjリーグができて、就職活動しないでbjリーグに入ることを目指してバスケの練習だけしてきたんです。とにかく、うまくなりたいという気持ちでやってきました。

 そういう環境でここまで来た僕が思うのは、多くの指導者が勉強不足だということです。日本はミニバスのレベルが高いのに、中学校や高校に進むと、特に公立だと部活の先生次第というか、指導者がいないチームは伸び悩んでしまいますよね。サッカーみたいにクラブチームでユースチームを作って大会を開けば、レベルアップすると思います。部活はどこかに入らなきゃいけないからやるケースもある。でもクラブチームはやりたい選手が入るから伸びる。そういう状況をもっと日本のトップの人たちが知って改善すべきです。レベルアップをするなら下からの底上げが必要で、そこから変えていく必要があると思います。

 また、bjリーグの審判の質も上げていかなくてはいけないと思います。審判の質が上がることで僕ら選手のレベルも上がります。指導者にしても、審判にしても、海外の試合を見て勉強したり、これをクリアしないといけないという基準を作るべきです。

―― では、選手はどうでしょうか。bjリーグはプロになって、この10年間で競技レベルは上がったと感じますか。

城宝:僕を含めてですけど、競技レベルはだいぶ上がったと思います。外国人のバスケットに触れることで、レベルは確実に上がったと思います。

―― 今回のように、インタビューをすれば城宝選手のように様々な意見は出て来るけれど、選手からの声がなかなか出てこないのはなぜでしょうか。リーグ統一に関して選手同士で話をしますか? 情報はどこで入手していますか?

城宝:みんな、この件に関してはあまり詳しく知らないと思います。情報も新聞やネットで記事を読むくらいです。ただ、みんな不安はあると思うんです。このままのチーム数でやるんだろうか、統一してチーム数が減るなら選手を削らなくてはいけないんだろうかとか、でも、どうしたらいいという会話はなかなか出てこないし、選手同士で話したことはないです。これは本当に難しい問題で、プロになる、ならないはずっと昔からやっていることじゃないですか。10月末までといっても、なかなか、まとまらないと思うんですよね。

―― FIBAからの処分が免れない状態になったことについては、どう思いますか?

城宝:フィリピンとかは、昔に制裁を食らったと聞きました。だから時間をかけて解決していくしかないと思います。でも、国際大会に出られないのはどうかと思います。僕たちのチームは毎年、台湾リーグの優勝チームと交流していますが、いい試合ができたりするんですよ。台湾は昨年のアジア選手権で4位。ワールドカップには届かなかったけれど、アジアでは強豪です。そんなチームと交流できていい経験ができているなと思うんですよね。だから、国際大会には出てみたいです。

―― 改めて、bjというプロリーグに10年間所属し、城宝選手がプロ選手として目指していることを聞かせてください。

城宝:僕はプロになって、このリーグで揉まれて成長してきました。bjにいる外国人選手はフィジカルが強いし、その外国人選手に負けないようにとプレイしてきて、プロで日本一の選手になりたいという思いでやってきました。今32歳ですけど、まだまだ上のレベルでやりたいので、誰にも負けないようなバスケット選手になりたいです。昨シーズンはMVPを取らせていただきましたけど、個人のことより、チームの優勝。せっかくファイナル4(※)までいったのに優勝できなかった悔しさがあるので、今シーズンは絶対に優勝したい。目指すはプロリーグで日本一のバスケット選手になることです。
※上位、東8チーム、西8チームがトーナメント形式で、プレイオフ、カンファレンスセミファイナル(2戦先勝)を戦い、残った東2チーム、西2チームがそれぞれ1戦先勝で準決勝、決勝を戦う。

【プロフィール】
城宝匡史(じょうほう まさし)
1982年4月24日、北海道出身。183cm、83kg
北海道大麻高等学校から大阪商業大学へ。大学卒業と共に、bjリーグ大阪エヴェッサに所属し、東京アパッチ、滋賀レイクスターズを経て、現在は富山グラウジーズ所属。昨シーズンはレギュラーシーズンMVPを獲得している。

小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko