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かつては芸能人など人前に出る仕事に携わる人向けに行われている印象のあった、歯のホワイトニング。ひと昔前に“芸能人は歯が命”というCMのキャッチフレーズが大流行して以降、一般の人々の間でも歯磨き粉で家庭で行う気軽な歯のホワイトニングが浸透した。今では“美容”の一環としてクリニックに通い、気軽に専門家による施術を受ける人も増えているなど、その意識は年々変化してきている。

そんな歯磨き粉やガムなどホワイトニング向けの一般商品で最近よく目にするのが「メタリン酸ナトリウム」と呼ばれる成分。一般消費者には聞き慣れないものだが、歯科医として実際にホワイトニングの施術に携わる北海道大学歯科診療センターの歯冠修復科・審美歯科専門外来担当の川本千春先生に、今回、この「メタリン酸ナトリウム」という成分について解説してもらった。

まずは、成分の科学的な説明から。メタリン酸ナトリウムを分子式で表すと(NaPO3 )nとなり、主な作用としては、金属イオン封鎖作用、緩衝作用、解膠作用、洗浄作用が挙げられ、食品添加物、医薬品、医薬部外品に利用されており、その安全性も担保されているものだという。

「食品添加物としては、食品の保水性を高める、形状を保つ、食感を良くする等の目的で加えられるほか、変色を防止してくれる作用があります。また、医薬品では抗生物質の血中濃度を維持するために製剤に使用されることがあります。最近では歯石の沈着防止効果やステイン除去効果の成分として歯磨剤に含有されることがあります」

そして、この成分が具体的にどのように作用し、歯のホワイトニング効果が見込めるかについて、その原理を次のように説明する。

「歯の表面はエナメル質で覆われていますが、これは約96%が“ハイドロキシアパタイトCa10 (PO4)6(OH)2”を主成分とする無機質です。歯の黄ばみの原因として、食品に含まれる着色物質(ステイン)が、歯の表面のタンパク質と結びついて蓄積することが挙げられます。メタリン酸は分子内のマイナス電荷密度が非常に高いため、歯のカルシウムなどの陽イオンに結合しやすい性質を持っており、エナメル質とステインの間に入り込み、汚れを浮かせることで歯本来の白さになると言われています。また、メタリン酸が歯の表面をコーティングすることで着色や歯石の沈着を防ぐとも言われております。研磨剤等を使用して機械的に汚れを落とす方法に比べて、歯を傷つけるおそれがない安全なホワイトニングです」

一方、歯科医院で行う歯のホワイトニングは、高濃度の過酸化水素を用いて行うとのこと。医薬品扱いのため、歯科医院でのみでしか行うことができない。しかし、高濃度の過酸化水素は歯肉につくと、歯の表面が脱灰して痛みが出たり、炎症を起こしたり、人によっては知覚過敏を起こしてしまうリスクがあるという。また、過酸化水素によるホワイトニング直後にはタバコやカレーライス、コーヒー、紅茶、赤ワイン等着色性の飲食物の摂取を制限する必要があるそうだ。

これに対し、歯磨剤やガムなどでも手軽に用いることができるメタリン酸ナトリウムは、食品添加物や医薬部外品に使用することが認められており、人体に対する刺激も少なく、安全性の面で優れていることから、過酸化水素を使用したホワイトニングができないような患者や、タバコや着色性の飲食物の制限ができない人にも安心して用いることができるとのこと。「ステイン除去効果以外にも、歯石の沈着の抑制効果があるとも言われており、歯周病の予防にもよいとされ、漂白後の使用にも有効とされています」と川本先生。

しかし、歯の変色は虫歯や嗜好品、薬剤、遺伝、歯の神経の病気などいろいろな原因が考えられる。中でもメタリン酸ナトリウムが有効なのは、コーヒー、紅茶、赤ワイン、タバコなど嗜好品によるステインの除去。「メタリン酸ナトリウムが配合されたガムを噛んだり、歯磨き粉を使用して歯磨きをするだけでもホワイトニング効果は十分期待できる」とその有効性に太鼓判を押してくれた。

(神野恵美)