武藤の方がその点で本田に似ている。宇佐美にはない馬力がある。総合力の高い雄大な選手に見える。だが宇佐美は、一瞬のキレ、繊細さという点で、両者より上だ。そこに捨てがたい魅力がある。

 三者に共通しているのは、1.5列目ならどこでもできるという点だ。右も左も真ん中も苦にしない。対応エリアは広い。

 とはいえ、この3人がスタメンに並ぶ姿は想像できない。4−3−3あるいは4-2-3-1の中に落とし込みにくいのだ。アタッカーとして外せない選手はこの他に岡崎慎司がいる。香川真司もいる。

 キャラが被るのは香川だ。そしてこの選手の武器もドリブルになる。特徴は俊敏さを活かしたステップになるが、宇佐美的ではない。どちらかと言えば、スペースに走り込む武藤に似ている。だが、彼にはサイドは務まらない。プレイエリアは他の3人と違い、真ん中に限られている。監督泣かせの選手。「ユーティリティな選手を好む」と言うアギーレには、とりわけ扱いが難しい選手だと言える。

 問題の宇佐美には、少なくともユーティリティ性はある。相手ボール時の対応に難があるデメリットと、それは相殺できるものなのか。アギーレの胸の内は追々、分かってくるだろう。

 アタッカーの定員は決まっている。誰かが入れば、誰かが外れる。宇佐美が入った時、外れるのは誰になるか。ジャマイカ戦で初代表を飾った小林悠より、ポジションを確立していない柿谷曜一郎の方が危なそうだ。

 もちろん香川だって、うかうかしていられない。日本代表のアタッカー陣は、ここに来て競争が激化している。

 それだけに僕は、いまアギーレを批判する材料として用いられている「ベストメンバー論」が、よりナンセンスなものに見える。ベストがどの組み合わせにあるか分からない、混沌とした現状こそが面白い。その熾烈な競争は2018年まで続いた方が代表は強くなる。そうであるに決まっていると僕は思う。