現在ともに22歳。4年後は25、26歳になる。宇佐美貴史と武藤嘉紀。彼らは外野から見れば、ライバル関係にある間柄だ。
 
 武藤はアギーレ就任とともに代表デビュー。これまで4度行った親善試合すべてに出場し、少なくともこれからしばらくの間、代表に選ばれ続けても不思議はない、可能性を感じさせるプレイを見せた。

 一方の宇佐美は、J1でガンバ大阪の快進撃を支えるひとりとして活躍中だが、アギーレからまだ声は掛かっていない。11月に行われる2試合ではどうなのか。注目を集めている。

 ザックジャパンに招集されるのではないかと囁かれた選手でもある。だが、今年2月に骨折。ブラジルW杯出場は叶わなかった。そしてその惜しい感じは、いまなお続いている。

 FC東京のトップチームに上がれず、慶応義塾大学の体育会でプレイすることになった武藤。バイエルンミュンヘンの一員として、11〜12シーズンのチャンピオンズリーグ決勝で、ベンチ入りを果たした経験まで持つ宇佐美。早くから期待されていた宇佐美と、今季FC東京入りして、注目され始めた武藤。
 
 この何ヶ月かの間に2人の立場は、逆転してしまった。2人のポジションは似通っている。宇佐美が武藤のことをどう思っているか知らないが、普通の感覚の持ち主なら、面白く見えないはずだ。
 
 Jリーグにおける活躍を同程度とするなら、現在の立場を分けている理由が、アギーレの好みであることは言うまでもない。
 
 相手ボール時の対応。アギーレは、両者のこの差を見ているのだと思う。アギーレは就任記者会見で「まず守備を」と語った。その話を聞いた受け手の中には、この言葉を「守備的サッカーだ」とはき違える人がいたが、それが、守りを固めるという意味ではなく、攻撃はボールを奪わなければ始まらないという意味であることは、アギーレの過去を知っていれば容易に分かる話だ。
 
 宇佐美にはその点で疑問符が付く。武藤は自然に反応する。ボールが相手側に移れば、追いかけようとする。マイボール時でも、相手ボール時でも、ボールに対して変わらぬ反応を見せるが、宇佐美はそうではない。相手ボール時になると、その精神的なノリは、マイボール時に比べ大幅に低下する。それは見ていてよく分かる。
 
 それが許されるのは、1トップ型のセンターフォワードのみ。1.5列的な選手で、それが許された時代はとうに終わりを告げている。闘争心が低いという言い方をする人がいるが、これはサッカーというスポーツの捉え方、イメージの問題だと思う。それが変われば、タフな選手に見えてくるはずだ。
 
 ともに得意なのはドリブルだが、武藤がどちらかといえば、空いているスペースにボールを運んで行こうとするのに対し、宇佐美は人に突っかかろうとする。相手ディフェンダーに睨みを利かせながら、ボールを押し出す姿は絵として申し分ない。睨みを利かせているように見えるのは、相手の足の動きを観察し、その逆を突こうとしているからだが、その姿で連想するのは本田圭佑だ。

 彼もまた、相手ディフェンダーを睨めつけるようなフォームで、突っかかっていくようなドリブルをする。なにを隠そう、僕には、彼が星陵高校だった時、そのフォームを一目見て、虜になった思い出がある。

 ボールさばきの巧い選手は、当時も多くいた。巧い選手の特徴と言えば、ボールさばきだった。見せるドリブル、相手に突っかかっていくドリブルをする選手は、日本サッカー界において、枯渇した状態にあった。そうした中に本田は登場した。ドリブルで仕掛ける時の面構えを見て「この選手はいけるゾ!」と思ったものだった。

 本田を彷彿とさせるものが、宇佐美にはある。しかし、本田は相手ボールに対しても、積極的に反応した。接触プレイを挑んでいった。頑丈さという点において、宇佐美と本田は大きな違いがある。