カナダ遠征第2戦は、第1戦とはまた違った見どころが満載のゲームとなった。第1戦から中2日を空けて、バンクーバーで迎えた第2戦は若手にチャンスが与えられた。初戦のメンバーからこの試合で起用されたのはボランチ阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)とCB熊谷紗希(リヨン/フランス)の2名のみ。

 注目の立ち上がり5分、右サイドハーフに入っていた岩渕真奈(ミュンヘン/ドイツ)が中央へ切り込み、永里亜紗乃(ポツダム/ドイツ)につなぎ、最後は菅澤優衣香(ジェフ市原)がゴールネットを揺らすがこれは惜しくもオフサイド。しかし、開始早々若手の強い意志を感じるプレイが飛び出した。

 来年のワールドカップ自国開催を控えるカナダも負けてはいない。16分には、エース・シンクレアが岩清水梓(日テレ・ベレーザ)と熊谷の間から絶妙に抜け出す。ここは岩清水が体を張ってコーナーキックに逃れるが、やはり一瞬たりとも隙は見せられない相手だ。ここから、カナダに流れが傾きかけるが日本も踏ん張る。

 そんな中、右サイドでなんとか流れを作ろうとしていたのが岩渕だ。ドイツへ渡ってもうすぐ2年。「今が一番充実している」と自身の成長を感じていた岩渕。立ち上がりからその変化が見て取れた。持ち前のドリブルで突破を図るのは以前と変わらないが、相手との間合いを見極め、ボールを持ちすぎることなく的確に前線へ送る。スピードを保ちつつ、キープ力が確実に上がったことを示してみせた。前半途中からはトップへ。膝の状況が万全でないため、45分の出場に留まったが、魅力あるアクセントを披露したと言っていいだろう。

 そして、指揮官に「アピールはナンバーワン」と言わしめたのが、33分に先制点を挙げた永里だ。コーナーキックのこぼれ球を落ち着いてダイレクトボレーで決めた。

「海外でやってて、周りでああいうプレイが多いからイメージはあった。打った瞬間は願いましたけど、『入れ〜!』って(笑)」(永里)

 ボールはバーを叩きながらもゴールネットを揺らした。もともと技術は高く、ターンから反転してのシュートは永里独特のリズムがあり、いつ開花してもおかしくない逸材だった。さらなる成長を求めて姉・大儀見優季が当時所属していたドイツのポツダムに移籍したのが2013年1月。最初のシーズンは思うようなプレイができなかったが、大儀見がチェルシーに移籍後は、自身を見つめ直しながら奮闘。ひとつひとつ経験を積み重ねてきた結果、今シーズンは3トップの一角を担っている。そしてなでしこジャパンで出場の機会を得た。

「このチャンスはつかまないといけないと思っていた」と自分にプレッシャーをかけながら臨んだ試合で代表初ゴール。永里はベンチ前で待つ姉のもとへ全力で走った。「彼女のこの試合にかける想いも知っていたし、うれしかった」とは妹をしっかりと抱きとめた大儀見。それを見守るチームメイトたちも笑顔。みんなが待ち望んでいたゴールだった。

 後半に入ると、終了間際に右足を痛めた菅澤優衣香(ジェフ市原)と岩渕に代わって、大儀見、大野忍(アーセナル/イングランド)が投入された。追加点が欲しい日本だったが、12分、ゴール前の猛攻にたまらずオウンゴールを許し、カナダに同点にされる。ここから一進一退の展開となる。

 残り20分となったところで高瀬愛実(INAC)に代えて宮間あや(湯郷ベル)を入れた佐々木監督。アジアカップで見せた4−2−3−1の攻撃的布陣で勝負に出た。

 そして、後半32分には大儀見が相手のクリアミスをさらい、GKの頭上を抜くダイレクトシュートを放って日本が勝ち越し。38分には鮫島彩(仙台)を入れ、さらなるゴールを狙う。しかしロスタイムに、シュミットにゴールを奪われ、再び同点に。残り時間はわずか。ここからなでしこの十八番である粘りが発揮された。

「最後に(チャンスが)一本あると思ったので、逆サイドは捨てて、自分よりも足の速い鮫島選手を前に残した」という宮間の機転に、鮫島が応えた。DFへのボールに寄せた鮫島がボールカット。そのままゴールまで一直線に走り抜けると、最後はGKとの1対1を制して決勝ゴール。最後の一瞬まで勝利を追い求めるなでしこらしい粘り勝ちとなった。

 今年3月のアルガルベカップでも主力級が揃ったが、今回異なるのはカナダに集結した段階ですでに全員に危機感があったこと。今一度、基本に立ち帰ろうと、決まり事など練習前後に話し合い、そこから何をプラスできるかを思案した。とにかく練習で実践し、修正を加える。それを密に繰り返した。

 熊谷は言う。「日本の良さは修正できる力があること」。だからこそ、この10日足らずの時間を大切にしたいと積極的にコミュニケーションを取っていた。試合でも、あえてリスクをおかして、そのチャレンジを実践する余裕もあった。

 ようやく、ワールドカップへ向けて"チーム"としてのスタートを切った。充実感あふれる選手たちの表情に、2連勝という結果だけでなく、その内容に手応えを感じていることがわかる。

 なでしこチャレンジ合宿からスタートし、アルガルベカップ、アジアカップ、アジア大会と目まぐるしい2014年もこのカナダ遠征で代表活動は終了。新戦力発掘のため我慢の日々も続いたが、底上げの時期は終わった。国内組、海外組の精鋭を集った今回のカナダ遠征は、再び世界を獲るための布石となったに違いない。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko