4〜6月の実質GDP成長率が年率6・8%減と大きく落ち込んだ。2度目の消費税率引き上げのための前提である年率4%の成長率達成の好材料は出そろうのかが問題だ。

2度目の増税への年末までのシナリオ

2度目の消費税率引き上げの試金石となる7〜9月期のGDP(国内総生産)成長率。現段階では実質GDPが年率で4%を超えるとの見方が大勢を占めており、予定通りの増税するとみられている。速報値の発表は11月17日。そのポイントを整理しておこう。

●懸念強まる個人消費回復

4〜6月期の実質GDP成長率は年率で前期比6・8%減となり、消費税増税後の景気減速が予想の範囲を超えたことが浮き彫りとなった。

問題は7〜9月期にどこまで回復するかだ。カギとなる指標は、個人消費、公共事業、設備投資、輸出の4つ。

民間エコノミストのGDP成長率の予測値で4%以上という楽観的なシナリオには、個人消費が増勢に転じ、公共事業が着工し、設備投資は拡大基調を継続、外需も米国主導で回復基調に向かう、という前提が必要。

これに対して慎重シナリオでは、GDPの6割近くを占める個人消費に対する懸念が強い。増税に加えて、円安により輸入物価が値上がりする一方で、賃金が十分に増えていないためだ。増税直後の大手小売業からは「落ち込み幅は予想の範囲内」と強気の声が聞かれたが、4〜6月期の個人消費は前期比5・0%減と、前回増税時の1997年4〜6月期の3・5%減を上回った。

原因は実質賃金の落ち込みだ。一部企業を除いて物価の上昇をカバーできるほどの賃金や賞与の増加が得られなかった。7〜9月期にこの状態が改善される可能性はなく、個人消費が回復に向かうとしても緩慢なものになるだろう。

設備投資の拡大も限定的との指摘が強い。国内市場の高齢化が進むことから、古い設備の更新や労働力不足を補う省力化投資が中心になるとの予測が理由だ。また、4〜6月期のGDPで在庫が急速に積み上がっていることもマイナス材料になる。

海外経済の回復とともに増えるといわれる輸出だが、これも構造的問題から簡単には増えない。自動車を中心に海外現地生産が広がっているためで、海外経済の回復は輸出量に直結しない。また、日本国内企業の供給力低下もある。円安と海外経済の回復で輸出は増えてきたが、今の局面では円安は購買力を下げる負の側面が大きい。

●避けたい増税後の泥沼

ひとつ、期待できるのは公共投資だ。増税対策として2月に5・5兆円規模の補正予算を組んだが、人手不足や資材高などから着工に至らないケースが多く、GDPにカウントされずにいる。7〜9月に犖絅坤〞の案件が着工すれば、GDPを押し上げる。

景気回復が緩やかなものにとどまりそうなため、政府は来年度予算編成で地方再生や住宅投資のテコ入れを図る構えだが、踊り場にある日本経済が7〜9月期に力強い回復に向かうとは思えない。避けたいのは人為的努力によって4%程度の成長を達成して消費税増税に踏み切り、泥沼にはまるパターンだ。

最後にポイントとなる政治・経済日程について。9月の日銀短観の発表は10月1日、7〜9月期のGDP速報値は11月17日、7〜9月期の法人企業統計は12月1日、消費税率引き上げの首相決断は12月初旬の発表の予定だ。

谷口正晃さん
Masaaki Taniguchi
産経新聞社経営企画室長。
経済部記者として流通、IT、総務省、日銀、財務省などを担当。シリコンバレー特派員、経済本部長などを経て現職。

この記事は「ネットマネー2014年11月号」に掲載されたものです。