先進国の住民は「座る人」である。仕事は座職、車で移動、家でも外でも座りっぱなし。近年は「too much sitting:座り過ぎ」がもたらす健康リスクに関する議論が増えている。

 米国の先行研究では、余暇のテレビ視聴による「座位時間」が1日2時間未満の成人を基準にした場合、2〜4時間未満、4時間以上と座位時間が増えるにつれて総死亡リスクが11%ずつ上昇。また、冠動脈疾患死亡リスクが18%上昇することが示唆された。このほか、1時間座位を続けるごとに平均余命が22分ずつ短くなる、という空恐ろしい指摘もある。実際、座り過ぎの生活は、細胞の寿命や老化に関連する「テロメア」の劣化を招くとされ、「座位による健康被害は、喫煙に匹敵する」と主張する研究者も少なくない。

 しかも、座位時間リスクの影響は、過食など他のリスク因子のように余暇に行う中〜強めの運動でも軽減できないという指摘もある。座位時間リスクを回避するには、座りっぱなしの時間そのものを減らすしかないらしい。しかし、座職は現代サラリーマンの宿命でもある。どうやってリスクを回避したらいいのだろう。

 嬉しいことに先月、米インディアナ大学の研究チームから解決のヒントが報告された。研究では標準体格(平均BMI24.2)の20〜35歳の男性に、3時間座ってもらい、1時間ごとに大腿動脈の機能を測定した。その結果、わずか1時間の座位で血液を循環させるのに必要な血管の機能が50%も低下することがわかった。

 一方、被験者に30分、1.5時間、2.5時間ごとに時速3キロメートルの速さで5分間歩いてもらったところ、1時間に5分の散歩の効果で、大腿動脈の機能が正常に保たれることが示されたのだ。研究者は「長時間の座位が動脈の機能障害を誘発する一方で、座位時間を“休憩”することで機能低下を防ぐことができる」としている。

 小学生のように45分机に向かい10分休憩、というわけにはいかないが、社内の用事は内線ではなく自らの足で赴くなどの努力はしたい。ついでに、長々続く無駄な会議も追放しませんか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)