ナオト・インティライミ、謎の繁殖力。そしてなぜかカタコトの日本語
 テレビを観ていると、一体この人はどこからやってきたのだろう。ちょくちょく見かけるけれども、どんな人たちに人気があるのかさっぱり分からない。そもそもこの人は、何なのか。そう悩んでしまうタレントに出くわすことがあります。

 それがナオト・インティライミ。肩書はシンガーソングライター、ミュージシャンということなのですが、どうにも腑に落ちません。先日“2014年、結婚式で人気の曲”アワードを受賞したインティライミですが、受賞曲「ありったけのLove Song」(2010年リリース)の存在は、このニュースが報じられるまで、よく知られていませんでした。ありったけなのに単数形だったからでしょうか。

◆気がつけばインティライミでいっぱい

 それでもこのようにして、日常のどこかで目にするインティライミの文字。

 ミスチルに気に入られて、いつの間にか安定的なポジションを確保し、各種フェスや歌番組の特番に食い込んでいる。なぜかサッカー番組にも顔を出す。10月31日の大阪城ホールを皮切りに、全国8ケ所13公演のアリーナツアーも始まります。

 そうこうしているうちに、曲は印象に残らなくてもインティライミだけはすりこまれていく。

 広く薄くではありますが、こうして私たちの生活は知らぬ間にありったけのインティライミで満たされつつあるのです。しかしその実体はいまもって謎。「文は人なり」。ブログや歌詞から、少しでもヒントは見つかるでしょうか。

 10月1日にニューアルバム『Viva The World!』をリリースしたインティライミ。その興奮ぶりが10月6日付のブログから伝わってきます。

「一音一音、こだわり抜いた音たちであります。
できればCDで、、いい音質で聴いてほしいではあります。」

「ほしいではあります」で、ヒザカックンをやられたような脱力感をおぼえるかもしれません。なぜにカタコトなのかと。世界一周の後遺症でしょうか。しかしこのネイティブになりきれない日本語が、インティライミのブログを大変に味わい深いものにしています。たとえば……

・さんきゅうね、たんくす、よろしくちゃん、オマットゥリ騒ぎ、など

・「っからの〜」という謎の言葉から始まる文章

・ファンインティライミさん、お初インティライミ、関西ンティライミなど (どれもファンのこと)

 それでも受け身や可能を示す活用のときにはちゃんと「ら」を入れるあたりは正常。カタコトとのチャンポンによる酩酊感はくせになりそうです。

 そして何はともあれ「ありったけのLove Song」。

「気がつけば暗くなるのが早くなったし もうキンモクセイの匂いがするなぁ
もうすぐ冬がやってくるその前に もう一回言うから聞いてくれ」

 キンモクセイのくだりから「もう、もう、もう」と三連発。図らずも横山弁護士へのオマージュになっているのです。これは「音楽人ナオト・インティライミを、存分に感じていただける音楽的なアルバム」「踊れるEDM的ダンスチューン」(いずれも10月6日付ブログ)というように、同じ意味の単語を至近距離で乱発する傾向なくしては起り得なかった奇跡です。

 しかしいくら細かな分析をしてみたところで、インティライミの強い繁殖力を解く鍵にはなりそうにありません。

「ここまでの人生いろんなことあったけど、
一度きりの人生だもの、
『光』を目指して進んでいきたいっていう、
そんな人生劇場を歌った曲よ。
よろしくちゃんです。」

 9月30日付のブログ記事で、アルバムからの先行シングル「LIFE」についてこう語ったインティライミ。相田みつをから重力を完全に抜き取ったようなその文体に、もしかしたらそのヒントがあるのかもしれません。

⇒【YouTube】ナオト・インティライミ‐LIFE(フル歌詞付) http://youtu.be/93mRKV-b0_k?list=PL12A294C7CD82C4AD

<TEXT/沢渡風太>