2014年10月23日(木)から10月26日(日)まで東京・日本科学未来館で開催される「デジタルコンテンツEXPO」の会場では、超音波の力を利用した不思議な体験や光景に触れることができます。普段の生活ではなかなか体験できない超音波による珍しい光景の数々を体験してみるのも面白いかもしれません。

◆東京大学大学院 篠田・牧野研究室ブース

空中触覚タッチパネル | DIGITAL CONTENT EXPO

http://www.dcexpo.jp/5518

この机の上に置かれた装置が、何もない空間上に仮想のタッチパネルのようなものを作り出す「空中触覚タッチパネル」です。



本体正面の斜めの面には、3D映像によるテンキーが表示されていました。写真では伝わりにくいですが、ちょうど斜めの面と同じ高さに配置されているように見えています。



「ではキーを触ってみてください」と促され、指をそーっと近づけると「ビッ」という音とともに指に振動が伝わりました。透明なガラスパネルすらない空間にもかかわらず指先に感触が伝わるので、思わず「わっ!」と声が出てしまうほど。注意深く触って(?)みると、スマートフォンのバイブレーターのような軽い振動が指に伝わってきます。



実際に体験してみた時のムービーはこんな感じ。ムービーの前半は感触がオフにされていますが、オンにすると「ビッ」という音が聞こえ、指に何かを感じている様子を感じ取ってもらえるはず。

「空中触覚タッチパネル」に指を触れてみた

指の代わりに、付せん紙をかざしてみた様子がこちら。これを見ると「風の力じゃないの?」と思ってしまうのも無理はありませんが、実際に触れてみると風が流れていないことは明らかにわかります。

何もない空間なのに「空中触覚タッチパネル」に触れると押し返される紙片の様子

この不思議なエネルギーの原理は、人の耳には聞こえない超音波の力を利用するというものです。装置を下から見上げると、天板の裏側におよそ900個の小さな円筒状の部品が並べられている様子がわかります。この円筒パーツは全て特殊なスピーカーになっており、人間には音が高すぎて聞こえない40kHzという超音波を発生させています。



ただし、単なる超音波では人の指に感じるほどのエネルギーにはならないはず。そこでこの装置は900個のスピーカーの発音タイミングなどを精密に制御することで超音波に指向性を持たせ、まるでレンズを使ったように狙った場所に向けてエネルギーを一点に集中させることで、指で感じるほどのエネルギーを作りだし、しかも必要な場所に自由に向けることが可能になっているというものです。

その制御能力が発揮されているのが以下のムービー。指でドラッグしたアイコンを画面のあちこちに移動させるのですが、指先にはずっと「ブブブ」という低い振動が伝わります。これはもちろん超音波の指向性を指の位置に合わせてリアルタイムに制御しているからこそ。また、感触があることで実際に操作している感覚が強く感じられ、従来の3D表示装置にありがちだった「空振り感」とは対極ともいえる「実在感」を強く感じます。それぞれ単体では決定打にかけたともいえる「超音波技術」と「3Dディスプレイ技術」が一つになったことで、実用化に向けて一気に飛躍が起こったと言っても過言ではないかもしれません。

「空中触覚タッチパネル」はアイコンをドラッグ&ドロップしても感触はそのまま

空中触覚タッチパネルの横には、なにやら物々しい装置が置かれています。



こちらの内部には超音波発生装置がさらに多く、円筒状に配置されています。そしてその向こうには、こちらも3D立体ディスプレイが配置されており、丸い地球の映像が映し出されています。



このように、円筒部分の真ん中に手を入れると……



手の動きに合わせて地球がぶよんぶよんと動き、同時に手のひらには丸いものが触れている感触が伝わってきます。タッチパネル同様、こちらも何もない空間に突如感触が存在している感じ。その感じは実際に手を入れてもらうのが一番よくわかりますが、言うなれば、何もない空間の中に暖かい空気の固まりのようなものがぽっかりと浮かび、触れると柔らかい弾力感が伝わってくるような感覚と思ってもらえればかなり近いはず。そんな動きの様子は以下のムービーから。

円筒型の「空中触覚タッチパネル」で地球をいじってみた

超音波の働きを一目瞭然にしてくれるムービーがこちら。お皿の中には液体が注がれており、その上をプロジェクターで投影されたトカゲが走ります。トカゲは映像なので水の上を歩いても何も起こらないはずですが、なぜか水しぶきが上がります。大方の想像どおり、これも超音波の働きによるものとなっています。

超音波のエネルギーがトカゲに変わって水面をパシャパシャと揺らす様子

超音波発生装置は、水面からおよそ20cmの高さにセットされていました。このパネルから発せられた超音波が一点に集まり、水面に並を立てるという目には見えない仕組みになっています。



◆東京大学 暦本研究室・落合陽一/名古屋工業大学 星研究室ブース

ピクシーダスト | DIGITAL CONTENT EXPO

http://www.dcexpo.jp/5526

こちらのブースでも超音波を使った新しいコンテンツ表示の技術を展示。「ピクシーダスト」と呼ばれる技術では、四方をパネルで囲まれた空間の面に、小さな白い粒がフワフワと浮かぶ驚きの光景を目にすることができます。このように、上から細かい粒をぱらぱらと落とすと、そのうちの一部が空間にキャッチされてしまいます。



やはりこの様子もムービーで確認するのが一番わかりやすいハズ。透明のパネルも何もない空間なのに、まるで目には見えない網が張られてでもいるように白い粒が空中に捉えられて浮かぶ様子を見てとることができます

超音波を使った「ピクシーダスト」で白い粒が空間にキャッチされてフワフワ浮かぶ様子

これが装置の全貌。「先述の超音波装置とよく似たパネルが使われているな」と思って話を聞くと、デモを行っていた星氏はもとは上記の篠田・牧野研究室に所属しており、新たに独立して自身で研究を続けているとのこと。



白い粒が浮かぶ仕組みは、超音波による振動の波の組み合わせで生じる特定のポイントに粒が入り込むことによるもの。粒の重さは1つ1グラム程度と非常に軽いため、超音波の力でも閉じ込められることが可能になっているそうです。



この技術を応用することで、空中にフワフワと浮かぶ不思議な表示や広告などの分野、またはエンターテインメントの分野で活用が期待されそう。普段は身近に見ることも少ないこれら最新の技術から、日々の生活に溶けこむような製品が登場するのか、思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。