フットサル日本代表86年生まれトリオ鼎談 FP滝田学×FP渡邉知晃×FP皆本晃 前編イタリア遠征総括

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 フットサル日本代表は9月30日から10月13日にかけて、イタリア遠征を行い、現地でセリエAの4クラブ、セリエA2(2部)の2クラブとトレーニングマッチを行った。第1戦、第2戦で勝利した日本代表だったが、残りの4試合では1分3敗と負け越して遠征を終了。ミゲル・ロドリゴ監督が就任した初年度からフットサル日本代表に選ばれているFP滝田学(町田)、FP渡邉知晃(名古屋)、FP皆本晃(府中)の3選手に、この遠征で見えた収穫と課題を聞いた。

 イタリア遠征、結果

10月4日 vsアクア&サポーネ・エメグロッソ(セリエA) ○3-2

10月6日 vsモンテシルバーノ(セリエA2) ○2-1

10月7日 vsレアル・リエッティ(セリエA) ×3-4

10月8日 vsラツィオ(セリエA) ×3-6

10月9日 vsカーリスポルト・コヒアンコ(セリエA2) ×1-3

10月11日 vsペスカーラ(セリエA) △3-3

以下、鼎談

――3人は1986年生まれという共通点がありますが、3人でよく話しをするんですか?

滝田「結構、話すよね?」

皆本「そうですね。別に仲が悪いわけではない」

滝田「仲はメッチャ悪いです」

渡邉「うん。晃はちょっと…」

皆本「おい! オレだけなんかハブられているイメージ持たれるだろ!」

渡邉「(笑)。最近は代表で年齢を感じますよ。代表に入ったころは、一番下くらいで、上に付いていこうという感じだったのに、今はもう上の方ですからね」

滝田「でも、『若いときは、こうやって見られていたのかな』っていうのは思いますね」

――今回のイタリア遠征は、短期間で6試合を行うという、かなりハードな日程でした。この遠征は、どのような意義があったでしょうか。

滝田「渡邉キャプテン、お願いします」

渡邉「いや、おまえもキャプテンでしょ。今回の遠征では、試合毎に渡邉、滝田、渡邉、滝田、渡邉、最後に吉川(智貴)とキャプテンが変わったんです」

皆本「オレは、なんで? なんで(キャプテンマークを)巻けなかったんだろう」

渡邉「やりたかったの?」

皆本「渡邉、滝田と来たからら、オレもくるのかなって思っていた。だから、そういう扱いなんだって」

――結構、凹んでいますね。

皆本「凹んでないですよ。でも、滝田だけなら分かるんだけど…」

渡邉「オレも、ずっと滝田、滝田、滝田、滝田…でいくと思っていたんですよ。そうしたら、初日の試合前に滝田が軽く体調を崩して、ホテル待機になった。それで試合前、みんなでウォーミングアップして、ユニフォームに着替えて、ミゲルが最後の指示を出して『さぁ、円陣だ!』となった瞬間に、みんな『ん? 誰が掛け声かけるんだ』って。それで、ミゲルも気が付いて『ワタ!』って」

――渡邉選手は、そういう流れでキャプテンになったんですね。では、キャプテン遠征の総括を。

渡邉「最初の2試合であまりにも上手くいき過ぎて、しかも初戦がカップ戦王者だったんですよね。練習期間もイタリアに着いてから、試合まで4回しかなくて、新しいメンバーも加わっていたので『どうなんだ?』という感じでした。それが、最初の試合は内容も良くて、ディフェンスも、攻撃も良くできて、スムーズに勝ったんです。その勢いで2試合目も勝ったのですが、3試合目で負けてしまった」

滝田「最初の試合はオレと(森岡)薫くんが出ていなかったので、薫くんと2試合目の前に『これで負けたら、オレたちはクビだ』って危機感を高めて入りましたね。」

皆本「でも、2試合目の相手はそんなに強くなかったよね」

滝田「うん。めっちゃ弱かった。といっても、そこで日本の成長を感じたんですよね。めっちゃ弱いといっても、なかなか欧州の2部リーグのクラブに勝つことなんてできなかった。1部の下位にも勝てなかった。普段はスペインで、今回はイタリアという違いはありますが、そういう2部のチームには普通に勝てるようになったんだなって。しかも、完全に新しいグループというわけではないですが、新しいメンバーもいる、新しい風が入った中で勝ち切れたことは、総合力が付いてきているんだなと」

渡邉「昔だったら、絶対に負けていたからね」

皆本「それはあるね」

渡邉「どう考えても、完成度は毎日一緒に練習しているクラブチームの方が高い。でも、そういう相手にも勝てるようになったことは、この6年間で変わったところだと思う。誰が代表に入っても、欧州の2部クラブにはもう負けない」

滝田「Fリーグができて発展した部分もあると思います。フィジカルは絶対に上がったし、遠征の経験も積むことができた」

渡邉「3試合目に負けたのは、相手がイタリアっぽくなかったこともあると思うんです。最初の2試合は、フィジカル、フィジカルという相手で、引いて守ってパワーを生かして攻めて来た。でも、3試合目のリエッティは、ピッチが狭くて、さらにフットサルみたいなパス回しだった」

滝田「ブラジル人が7人くらいいてね。だけど、ブラジル人らしからぬチームでしたね」

皆本「スペイン人助っ人もいて、ほとんどのチームがそうだったと思いますが、イタリア人はいなかったですね。やり方が全然違っていたので、戸惑いました」

滝田「3戦目は、ちょうど日本代表は遠征の疲れがピークで、体も動きませんでした。長距離移動して、試合会場にもギリギリで着いた感じでしたね」

渡邉「そこからの3試合は、あまり良くなかった。負けたのは、相手が強かったこともありますが、自分たちもミスがあって、失点も自滅した形が多かった」

滝田「ミゲルは『防げる失点』と言っていましたね」

渡邉「自分たちから苦しめて、先に失点してしまった」

――それだけ自分たちのパフォーマンスが変わったのは、最初の2試合に勝利して、慢心が出たから?

皆本「ないとは、言いきれませんね」

渡邉「うん。あっさり2連勝したから、『これ、いける』『全部、勝って帰ろう!』っていう空気はあった」

皆本「もちろん相手も強かったですけどね。ラツィオは強かった。個も一番あった。ピヴォはなかったけど、アラにドリブルができる選手が結構いて、戦術的にはリエッティの方が高かったけど、結構みんな抜かれていた。5試合目は、2部のクラブで2試合目と同じくらいの相手だった」

渡邉「そう。1-0で勝っていて、残り1分半くらいからパワープレーで2点をひっくり返された。39分までは完全に日本のペースで、試合も支配していたけど、決定機を全然生かしきれずに1-0で試合を進めてしまって、勝ち切ろうとしたときにパワープレーから失点した。ああいう外国のチームは、1分のパワープレーで流れを変える力をあるって見せつけられました」

皆本「海外に行くと、毎度おなじみの展開っていう感じだよね。パワープレーの質が本当に高い」

渡邉「うん。高いよね。逆に日本のパワープレーも脅威になるっていうのは示せた。2戦目のリエッティ戦も0-4で負けていて、全然、流れの中から点を決められなかった。最後にパワープレーで1点差まで追いついた。ラツィオ戦も2点くらいパワープレーから取った」

皆本「あれをいきなりやられると、相当手こずると思いますよ。W杯とかで相手がスカウティングをし始めたら、また状況は変わってくるとは思いますが、こういう遠征で情報をお互いに知らないなかでやったら、精度が上がっていることもありますけど、いきなりあれは対応できないと思います。でも、最後にパワープレーで点が入るかもしれないと思えると、いろいろなところの展開で、精神的にも上に立てる。負けていても『1点差ならパワープレーがあるし』と思えるし、精神的にゆとりを持って戦えると思う」

――あらためて日本の武器を確認できたのですね。

皆本「しかもメンバーも、オレとか、(吉川)智貴とかも出ていた。普段はノブさん(小曽戸允哉)が入っていたり、知晃のところも(星)翔太くんが入ったりする。そういうパワープレーができる人数も少しずつ増えて来た」

――W杯のときも日本のパワープレーは大きな武器でした。やり方の根本は変わらない?

渡邉「基本的には変わりません。その精度を上げている感じですね」

皆本「バリエーションは増えているの?」

渡邉「パターンは、あれくらいだと思う。でも、一つの中でバリエーションがたくさんあって、そこからどれを選ぶか。これがダメなら、これ。これがダメなら、これってパターンがあるから、そこからいろいろと繰り出している」

――アジア選手権以来の試合もありましたが、皆本選手は個人的にはどんなテーマを持っていたのですか?

皆本「個人的には、攻撃の部分をテーマにして今回の遠征は臨んでいたのですが、思いのほか守備の時間が長かった。ミゲル監督からも『仕掛けろ』と最近よく言われるし、後ろの選手もそろっていたこともあったので、今回は1対1をテーマにして、もう少し前でと思っていたのですが、守備の時間が長かったから、正直、そこはあまりトライできなかったなと思いますね。逆に守備の部分では、手応えというか、体が超大きい自分より二回りくらい大きい選手たちを相手に対しても、どうやって守るかというのを個人的にはつかめました。守備の面ではすごく収穫が個人的にはあった遠征なので、それは良かったと思いますね」

――小柄な選手が、大きな選手をマークするときは、何を心掛けるんですか?

皆本「やっぱり前に入ることですね。いつ入るか。背負われてボールを持たれたときは、とにかく前を向かせないこと。そこは取りに行かない。取りに行っても絶対に取れないし、反転されるだけなので。(パスが)入っちゃったら、もう取りに行かない。これは体格を問わず、基本なのですが、僕らは小さい分、前に早く入れる。そこのタイミングであったり、周りを動かすこと。押し込まれると前に入るタイミングがなかなかないのですが『こっち切れ』『こっち切れ』と指示を出し、しっかりプレスをかけてもらって、前の選手にパスコースを限定してもらえていれば、パスコースは限定できる。そこで前に入る。それをどういう相手にも、割とできるようになってきたという感触はあります。『限定してもらう』のではなく、『限定させる』。自分が味方を動かして。相手にとっては、そこにパスを出す以外の選択肢がないという状況に、仲間を使って何回持ち込めるか」

――味方に出す指示が非常に重要になるわけですね。

皆本「うん。だから、多分、試合中は一番僕がピーチクパーチク言っていると思います」

滝田「ただね、晃の指示は誰にも伝わっていない。今回の遠征でもちょっとチーム内で話題になったのですが、ものすごい勢いで喋っているから、誰も聞き取れていないんですよ」

皆本「伝わっているでしょ? 伝わっていないの? じゃあ、みんな俺の言葉じゃなくて感覚で動いていたの?」

滝田「多分、そうですね」

皆本「じゃあ、みんなのディフェンス能力が上がっているだけかもしれない。自分の中では『縦』とか『中』とか言ったら、その通りにみんなが動いてくれているイメージがあったんだけどな」

――今回、代表に初招集された荒牧太郎選手が、そのあたりを指摘したと聞いたのですが、今まではあまり話題にならなかったんですか?

滝田「いや、結構、言っていましたよ。『ネコ語』って呼んでました」

皆本「うん。スペイン遠征のときから指摘されたけど、ある程度はみんな分かってくれていると思います。僕とかは海外の相手と対戦すると、どうしても小さいし、みんなを動かして勝負しないといけない。『いちいちウルセー』って、みんなにも言われるくらいですけど、それくらいやらないといけない」

滝田「でも、勘違いですね。自分が動かしているっていうのは(笑)。この遠征で僕が感じたのは、試合の途中で悪い状況が続いて、真ん中を簡単に使われて、ピヴォに当てられて、守備の狙いが定まらないことがあった。結構ピヴォにスコンスコンと入れられた。でも、良い状況のときは、どこを切ればいいか。相手の利き足はどっちを切ればいいかとか、すごく整理できていた。前からのプレスも行きやすそうだったし、フィクソも前を取ることができた。不利な状況になりにくいというか、最後の試合は前からのプレスもはまっていた。リエッティはプレス回避もうまかったけれど、もうちょっとフィクソ主導で悪い流れのときに、修正できればよかったなと思います」

皆本「リエッティは、3-1の布陣(後ろに3人、前に1人)じゃなくて、4枚(4人が一列に並ぶ形)で回してくる。3-1だったら、僕とか滝田が後ろにいるから、『どっち切れ』『どっち切れ』って指示を出せるのですが、リエッティ戦のように4枚でグルッと回られると、そういう形でできない。結局、先制点を取られたときも、僕らが後ろじゃないときに、ローテーションで走られたて、パスを出されてシュートを打たれた」

滝田「イタリアのクラブは、大体タイプは似ていましたが、いろいろな完成度の高いチームと戦えたことは良かったですね」

――渡邉選手は、どんなテーマを掲げていたのですか?

渡邉「ゴールにはこだわっていましたよ。最初の2試合で取って、途中で取れなくなった。相手が本当に大きかった。一回、ビックリしたのが集合写真を撮ったとき。試合前、両チームの選手がミックスした状態で撮るんですが、両サイドに来た選手が両方ともオレより背も高くて、10キロは重いんじゃないかっていう選手が両サイドにいて。だって、日本代表では一番背が高いんですけど、そういう選手が何人もいた。そういう選手を相手にも、ボールをキープしないといけないのは、勉強になりました。意外とキープできたから、勉強になりましたね」

――さっきとは逆ですね。大きい選手を相手にボールをキープするコツは?

渡邉「やっぱりタイミングですね。相手がデカくても、タイミング良く入ってしまえば、後ろから押されたらファウルになるし、簡単に負けるわけではない。そこは収穫でしたし、自信にもなりました。スペインはそんなにガタイがデカいやつもいないし、同じくらいならキープして当たり前になる。今回は明らかにフィクソとピヴォは185センチ、90キロくらい、日本では見たことがないような選手だらけだったので。」

皆本「うん。Fリーグにはああいう選手が全くいない」

滝田「しかも、それで結構、走れるんですよ。そういう選手たちが、CKのときとかは、えぐいくらいに掴んでくるから、動けない。キッカーとしては、『どこに蹴ればいいんだろう?』ってなりますよね」

皆本「子供が押さえつけられているような感じだよね(笑)。しかも、それでファウルを取られないから」

渡邉「ちょこまかと動かれたくないっていうのがあったんでしょうね。ピヴォの位置で、逆の方向に走ろうとしたときも、めっちゃ体を当ててきたり、つかんできたりして、そっちにまず走らせないようにやって来たので。今まで、いろいろな国に行って、いろいろな相手と戦ってきましたけど、あれだけ体が大きい選手たちがそろっているチームとの試合は経験がありませんでしたね。しかも、全員ですからね。一人くらい細くて速いやつがいてもいいのに、ゼロでしたからね」

皆本「上にも、横にもデカくて、ラグビーかっていう感じでしたね」

滝田「本当に。今までになかった体験でした」

――課題でいうと、何か見つかりましたか?

皆本「攻撃面ですね。なかなか崩すっていうところができませんでした。攻撃の形に乏しかったですね。特にハーフに押し込んでから。ポゼッションはわりとできていたよな?」

滝田「うん。もう少しできないかなと思っていたけど、ある程度は」

皆本「特に4-0(の布陣)でやったときは、僕らが抜けて行ったとき、動きに付いてこれなかった。相手が崩れたときに、ピヴォを使うっていうコンセプトがあるけど、そのピヴォを使ってどうするか。その先のイメージが足りていないと感じました。今までは、サイドの選手に依存している攻撃が多かった。それか、ショートカウンター。DFからの攻撃、セットプレーやパワープレー。それ以外は、ハーフを押し込んでからピヴォと1対1で仕掛けられる選手にお願いという感じだったので。そこから先に行くには、それ以外のバリエーションが必要だな、と。他の選手がどう動いて、どうパスを出すか。そういうところを遠征中も話しましたが、2人の関係でそういうのを増やしていくのか、チームとして深い所まで共有するのか。それをやらないと、本当の意味でのトップレベルの相手に勝てないかなと感じました」

滝田「多分、厚みがないんだと思うんですよね、攻撃に。ただ、アラが仕掛けているときに、ちょっと形をつくって終わっている。その先がない。それで打開ができている相手にはできている」

皆本「それで勝てる相手との試合なら、それがノーリスクで何も問題はないのですが、代表がどこを目指していくか。オレ達はトップに勝つことを目指しているから、しっかり突きつめていきたいと思います」

渡邉「うん。アラの選手が仕掛けている時に、1人はファーポストで待つ、ピヴォ当てしたときに1人2人と絡むっていう単純なことも必要だと思う。2人、3人の関係でも、もう少しアイディアが必要かな。意思疎通というか、この選手なら今こうするだろうなとか選手の特長を理解して動き出すとか。なかなか一緒にやる時間が多くはないから難しい部分もあるけど、練習や試合で突き詰めていく必要はあると思うね」

(取材・文 河合拓)